閑話 メアリーのお靴の行方なの~~
「トーマスです。今日は、メアリー様に、お靴を献上に参りました。こちらが、お靴の作成者、ダイゼン・ヤマナカ、隣が趣味友のマークです」
あれ、何で、私は、この場にいるんだろう。第2王子なのに、今、メアリー商会の応接室にいる。
リトルアキバで、ばったり、トーマス氏にあったら、ここに連れて来られた。
「ウホーーーー、萌えーーーー、フィギア作るなりーーーー」
と叫んでいるのが、ダイゼン氏だ。
「マーク氏!はあ、はあ、可愛いでござる」
「ああ、そうだな」
・・・話しかけるな。同類と思われる!
応接室の中は、大勢いる。
冒険者が4人壁際に立っている。狼族がいるな。
ドワーフもいるじゃないか。
そして、
メアリー嬢の後ろに、強面が二人立っている。
その後ろに、メアリー商会の幹部か。
・・・これは、もしかしなくても警戒されているのではないか?
「メアリー様、後ろに控えているお二人は、新顔ですな」
「新しく雇った護衛なの~~、ボムとギミーなの~~」
「「ヘイ、旦那、お見知りおきを」」
「トーマスだ。よろしく」
「お靴を進呈します」
「有難うなの~~~履いてみるの~~」
「ウホウホ、メアリー様は、羽の生えていない天使でござる。だから、クックに羽を生やしてみたでござる」
・・・うわ~
「ありがとうなの~~」
「今まで、履いていたお靴はいらないですな。ワシがこのガラスの箱に入れて、責任を持って、飾らせてもらいます」
・・・えっ、そのガラスの箱は、その為か?意味が分からない。
女の幹部、ケリーと言う者が、手を合わせて、早口で、こう言ったのだ。
「まあ、メアリー様、翼が引っかかって、歩きにくくはないですか?これは、飾る用の靴ですね。今までのお靴はそのまま履いて、新しいお靴は、このガラスの箱に入れて、飾るってことですね!!」
そしたら、皆が、
「「「さすが、トーマスさん!」」」
「「旦那、粋だぜ」」
「それがいいけ!」
と合唱する。
その後、帰るとき。
お見送りの事務員の声が、ボソと聞こえた。
(・・・若いのに)
メモっている。私も要警戒に入ったのか?!
☆☆☆リトルアキバ「メイド猫喫茶」
「猫猫ニャンニャン♩ご主人様、元気に、元気にな~~~れ!・・・」
「有難う。大銅貨一枚だ・・クスン」
「トーマスさん。ドンマイだニャン!」
「メアリー様のクック、手に入れ損ねたのだ」
「すまないでござる」
「いいや、発想と品は良かったぞ」
心底どうでもいい・・・
「あのお靴で、優しくプニュと踏んで欲しかった。ワシが土下座して、後頭部を優しく、クマのヌイグルミを抱きながら、少し困った顔でな」
「いいでござる。ナイスアイデアでござる!しかし、顔は見られないでござる」
「心で見るのだ」
・・・よくねえよ。話題をそらすぞ!
「ところで、ここは変わった喫茶だな。簡単なダンスをして、チップをもらうシステムか?」
「ああそうだ。異世界では当たり前のようだぞ」
「拙者、転移前は、週7で通ったなり」
・・・毎日じゃねえかよ!
「しかし、彼女たちは、普通の家にメイドとして入れないのか?王国の法では、差別を禁じている。ここにいてもスキルは身につかない。ダンスも、ここでしか通用しないのではないか?」
「ほお、そう思うか?なら、あんたは、相当ないい坊ちゃんだな。そーだな。もしかして、高位貴族か。王家か?」
・・・急に、目つきがするどくなった。
「法で決まっているから、差別はない。ではなく、あるから法律があるのだ。実際、猫獣人族を雇う家は少ない。あっても、ヒドイ折檻を受けることがある」
「なら、折檻を受けたら、すぐに辞めて、善き家庭を探せば・・・」
「どうやって、辞めるときに、紹介状がないと、次にはいけないぞ。この世界は、優しくない。だから、優しい世界を作らなくてはいけない。その為に、異世界人の力が必要だ」
「優しい社会を作る。どうやって・・・」
「これから、人と物、金が、メアリー様に集まるのだ。試練だが、彼女なら、自己を見失わないだろう。その時が、本当の『株式投資』の始まりだ」
「そうなり、我が世界の株式は、略奪から始まったと言ってもいいなり、海賊、植民地経営、弱い者から、奪うのが基本なり。それを軟着陸させるなり」
「正しく欲望し、儲け。成功する。失敗もあるだろうさ」
「意味が分からない・・」
「メアリー様の伴侶には、心の大きさと、地位の高さが求められるな」
「「「キャーーーーーー」」」
何だ。悲鳴だ。猫族の男の席だ。上半身は猫、薄いオレンジ、山猫族か?
「グシシシシ、触らせろよ。猫ちゃん!」
「連れ込み宿にいこうか?ここはそういう店だろう?」
店の奥から、異世界人が出てきた。店主か?
「お客様、女の子をお離し下さい!」
「ああ、異世界人か?・・・・グハ、グハ」
プシュ~~~~~~~、
「メイドは避難を、お客様、協力をお願いします。マタタビスプレーを散布しました!」
「「「協力するぜ」」」
「おら、うら」
「首根っこを掴め!」
「聡殿、拙者も協力するなり!」
「有難う。大全さん」
三人の山猫族は、フラフラで、足下がおぼつかない。
タイゼンたちは抱えて、外に放り出した。力あるな。
「お客様、お騒がせしました!」
「「「「大丈夫だぜ」」」
「さあ、君たちも、マタタビを吸ったよね。少し、店の奥で休んできなさい」
「「「は・・い」」」
「全く、実のところ、人族ではなく、近種の山猫族とかが、このパラダイスを妨害に来る。女は虐めるものではなく、虐めてもらうものなのにな」
「全くでござる」
・・・会話が急におかしくなった。目つきも戻ったぞ。
「聡殿、山猫族は、出禁にしたら」
「そうだね。礼儀正しい山猫族も来ることは来るのだけどね。毛並みが同じ猫族のお客さんも来るから、正直なところ見分けが付かない。冒険者雇おうと思っている。では、ご新規様も楽しんで下さい」
「紅茶、お持ちしましたニャン!」
「私のだ」
「マーク殿、ダメなり。お礼を言うなり」
「ああ、そういう風習か?ありがとう」
ペコ
「それと、何かを頼むなり。喫茶は儲からないなり。彼女らの給与は低いなり。だから、最低一回は、彼女らの芸を見るなり。気に入ったら、通うなり」
「分かった」
ペラ、
何々、メニューは、
美味しくな~れ
元気にな~れ
お母さんヨシヨシ
お姉さんヨシヨシ
幼なじみのフィナーレ
ツンデレフルコース
・・・・・
「幼なじみのフィナーレを頼む」
「「「「!!!!」」」」
「・・・上級者なり」
「ミミーは、入ったばかりなのに、それを頼むのね。いいわ、ご主人様からの挑戦!受けて立つ・・ニャン!」
はあ?
「ご主人様のお名前は?」
「マークだが」
ジー
「マー君、先輩と歩いているのを見たニャン!私は単なる幼なじみ?グスン」
バッ!タタタタッ
小走りしたぞ。
ピタ
止った。
クル、チラ、
振り向いて、こっちを見た!
「・・・追いかけないのね」
タタタタタ~~~
また、小走りだ。
パチパチパチ!
「「「ブラボー」」」
はあっ、わからん。戻って来た。
「代金、大銅貨2枚になります。有難うニャン♩」
「さすがなり。可愛い子を崖に落とす。我は学んだなり」
「兄さん。最高だ!」
「「「ブラボー!」」
☆☆☆王宮
「全く、異世界人の文化は訳分からん。お茶を入れてくれ」
「はい、ただいま」
「ありがとう」
「!!え、どういたしまして・・・」
何か。お礼を言うのもいいかも。
ヒソヒソ
「第2王子殿下、もしかして、ナンシーに気がある?」
「どうしましょう。でも、愛妾でも・・・」
「馬鹿ね。遊ばれておしまいよ」
あ、ここでは早いか。
数日後
☆☆☆リトルアキバ、メイド猫喫茶
全く、けしからん。尚武の国に、こんな軟弱な文化は似合わないのだ。
しかし、使用人にお礼を言うのはいいな。私はそれだけのために来ている。
王宮のメイドに言うと、気があると思われるかもしれないから注意だ。
「今日は、ツンデレフルコース、頼むよ」
「はい!」
ドン!
あれ、紅茶とケーキを乱暴に置いたぞ。
「あ、ありがとう」
「あんたのためにやったんじゃないんだからねっ!お礼なんて、言わなくていいんだからねっ!」
・・・おい、どっちだよ!
☆☆☆そう遠くない未来
☆メアリー財閥、会長室
「我が娘達よ。これを見たまえ。これが、メアリー財閥総帥、継承者だけが持つことが許される。羽のシューズだ」
「「「まあ」」」
「これが、伝説の」
「ほしがり論著者、投資家で思想家のトーマスが作成を依頼し。異世界人が作った『クック』だ。クックとは異世界では靴と言う。
まるで、大メアリー様が躍進するのを予知していたようだ。この靴を贈られた始祖大メアリー様は、過酷な試練に立ち向かわれたのだ。わずか10歳の時に」
・・・なんやかんやで、大全の作った靴は、伝承されていた。
実際、この靴を贈られた日から、王国史に残る旅客・貨物戦争が激化をたどることになる。
最後までお読み頂き有難うございました。




