第8話 開けるの~われ~~~なのーー
☆☆☆メアリー商会
「俺は、ザム親方だ!一国一城の主だったんだ。それを、こんな場所を間違える田舎っぺのトムから、マニュアルを学べだと?!」
「不採用なの~~~、トムを馬鹿にする人はいらないの~~今後のご健勝をお祈りするの~~~」
「どうかしているぜ!俺を幹部にしろ」
「帰るの~~でないと護衛に追い出してもらうの~」
ギロリ!
「さあ、お帰りはあちらです。元商会長殿」
「帰った。帰った。でないと、あたいの拳をお見舞いするよ」
「後悔するぞ!」
「ザムと面接したこと、後悔しているの~~~」
・・・御者を増員しているが、メアリー商会の安全マニュアルを受け入れない人は拒否をしている。
新卒を採用したがる理由が分かったぜ。経験豊富なおっさんは、時に、経験が足かせになる。
トムを先生として受け入れない人は、お断りだ。
「グスン、メアリー様」
「ヨシ、ヨシなの~~トムは悪くないの~~」
ナデナデ~~~
しかし、こいつ、よく泣くな。
・・・・・・
「次は、女の子なの~~~」
内勤と駅馬車ガールを採用する計画だ。
しかし、この世界は縁故社会、女の子は、幼い頃から、メイドや家業、お嫁さんになるなど決まっている。
商会員になれる身許がしっかりした女の子は、
いるじゃないか。
ピンクBBAだ。あそこにたんまりピチピチの女の子をため込んでいると噂で聞いた。
「グシシシシッ」
「メアリー様・・」
「お義姉様のところに行くの~~~ケリー、お支度の手伝い頼むの~」
「はい、メアリー様」
今日は、お茶会の日だ。
お義姉様から贈られたピンクのドレス、アクセサリーで、おめかしをして出かける。
ヒラヒラは控えめだが、可愛いドレスだ。意外と少女趣味だな。
☆☆☆ブラウン侯爵家
「ですから、お義姉様、メアリーは、あの年でヌイグルミを抱いています。考えが幼いのです。
深入りしては大損をしますよ。
それよりも、私に、出資して下さい」
「・・・・金貨一枚で、生涯ケーキセット無料のチケットを発行するカフェに?破綻するわよ。それに、まだ、お義姉様(仮)よ」
「大丈夫です。金貨一枚分を超えたら、回収する手はずですわ」
オリビアは、また、新たな事業を計画している。
異なる考えも認めなければいけない。しかし、この女の価値観は受け入れられない。
駅馬車でも無料チケットを配っておいて、乗せないようにしていたと聞いたわ。
この発想は、どこから?想像もしたくない。
ブラウン家の家訓に、人の悪口を吹き込む者は信用するなとある。
「もう、時間だわ。客人が来るの。お送りして」
「はい、お嬢様」
「では、考えて下さいね。今度は成功しますわ」
今度と言う化け物が出てきたわね。
さあ、メアリーとお茶会だわ。
私は、この子が信用に値するか。試すことにした。
オリビアのことを姉としてどう思うか。聞いてみる。
「お日柄も良くなの~~、メアリー、お願いがあるの~~~ごめんなさいなの~~」
「フフフ、欲しがり妹なのだから別にいいわ」
「グスン」
「ねえ。メアリーちゃん。お姉様が先ほどまで来ていたのよ。貴女、オリビア様の事をどう思う?教えてくれないかしら?」
放置されていたのだろう。悪口の一つや二つ言うのだろう。それか沈黙か?
いや、この年なら、悪口を言っても仕方ないだろう。傲慢だったと思い直す。
「オリビアお姉様は、すごいの~~、お姉様が採用した人、皆、優秀なの~~」
ガタ、カチャン!
思わずカップを落とした。
褒めるは予想外だ。
「お嬢様、お怪我は?!」
「大丈夫よ。あら、それは、後発だから、お給金を高めに設定したのよ。だからじゃない?」
「ビジネスは結果が全てなの~~、だから、すごいと評価するの~~」
「フフフフフ、オホホホホ、私が自由になるお金は金貨1000枚あるわ。持って行きなさい」
「重たいの~~物理的、心理的に重たいの~~~グスン」
「あら、ますます良いわね。でも、今日は、出資のお願いに来たのでしょう?」
「違うの~~、ピンク修道院を襲撃したいの~」
「フフフ、ますます良いわね」
メアリーから、面白いお願いをされた。
無頼を働いていた学生時代を思い出す。
「アン、聖女様とコンタクトを取るわ。それと、ブラウン女騎士団集合よ」
「御意、お嬢様、お暴れになるのですね」
「違うわ。人を助けに行くのよ」
お願いは、ピンク修道院を襲撃。正式名コンラート・ボー修道院。ピンクBBAこと、マーゴット2世の本拠地ね。
☆☆☆コンラート・ボー修道院
この修道院は、一種の駆け込み修道院として機能していた。
雇い先の家主に乱暴されたなど、不遇な女性達が、かくまわれていた。
しかし、この修道院長、マーゴット2世は、女神経典を自己の都合の良いように解釈し、絶対君主として君臨していた。
「女神カルタ!女神様の「め」、名誉殿方・・・・スージー!」
「はい、マーゴット2世様、ぬっ殺し。名誉殿方ぬっころしです」
「宜しい。貴女が、一位です。商品はーーーーーー、ジャンジャジャジャーン!タワシ!はい、拍手」
パチ・・・パチ・・・パチ
もう、いや。私、スージーは、雇い先の奥様に、お金を盗んだとして、追い出された。
本当は、自分で使い込んでいるくせに、
路頭に迷っていたら、マーゴット2世様に助けられたけど・・・
紹介状のないメイドは・・娼婦に落ちるしかない。実家には帰れないわ。
「・・5位は、賞金銀貨3枚!」
このカルタ大会は、賞品は、マーゴット2世が決める。一位が一番良いものとは限らない。
そうされると、マーゴット2世のご機嫌を伺いたくなる。
人を救うには、不安を与えればいい。
そして、希望を与える。
「いい?伝説のピンクをまといし乙女は私よ。女神教外典、ピンクの伝説を復唱しなさい」
「「「その者、ピンクの衣をまといし乙女。虐げられし婦女子の前に降り立つ。失われし殿方との絆を復活し、良き職場へ導く・・」」」
おとぎ話であるわ。また、メイドとして働きたい。温かい家庭で、折檻がなくて、そこで、心根の優しい殿方と出会いたい。もう、顔とか贅沢言わないから、
でも、本当に、この方はメシアなのかしら、内職ばかりで職業紹介がないわ。
「さあ、ピンク馬車は名誉殿方に壊されたから、屋上で、炊き出しをやるわよ」
「スージーは、受付。困った婦女子が来たら、案内するのよ」
「はい、マム」
こんなところに来るかしら。あら、女性の集団が来たわ。
こんなに大勢。
ドンドンドン!ドンドンドン!
【開んか。われーーーー】
「開けるの~われ~~~なのーー」
ドンドンドン!
門を乱暴に叩いている。とにかく、報告よ。あれは、女騎士団と、幼女とどこかのご令嬢と、聖女様までいるわ!
「マーゴット2世様!女騎士団の方々が来ました!聖女様もいらっしゃいます」
「ヒィ、名誉殿方?!ここは女神教の敷地よ。追い返しなさい!」
「聖女様が来られています。開けないわけにはいきません」
「ヒィ、じゃあ、不在よ。逃げるから、時間を稼ぎなさい!」
ドン!
【開けんかわれーーー】
「あけるの~~われーーなの~~」
・・・入って来ているのに、開けろと言っている。柄が悪い。女の声だわ。
ザザザザザザッ、ドン!
「グシシシシ、女の子、沢山いるの~~」
「「ヒィ」」
ピンクのドレスの幼女?と目つきのキツい令嬢が、女騎士の先頭に立っているわ。あの方は聖女様
マーゴット2世様は・・・
「ヒィ、ここは、女神教の建物です!不可侵です。出て行きなさい。・・出て行って」
怯えている。あの絶対君主だった。マーゴット2世が・・・
「マーゴット2世こと、アマンダ、朗報です。この子たちの就職先が決まりましたわ。さあ、メアリー様、後は任せます」
「ゴホン、メアリー商会のメアリーなの~~、欲し~~の。欲し~~の。お姉さんたちが欲し~~の。駅馬車ガールになって欲しいの~~~」
「ヒィ、いなくなったら、寄付金がもらえなくなる」
・・・え、マーゴット2、アマンダは、寄付金をもらっていたの。お金無いから、内職とかしていたけど、
「皆は、しくじり娘じゃないの~~、立ち上がる娘なの~~!メアリー商会の看板娘になるの~~」
「あの、駅馬車ガールとは、駅馬車の仕事は、やったことはないです」
「研修するから、大丈夫なの~~~」
「一日、10時間労働を目指しているの~~~週休完全一日なの~~」
「「「えっ」」」
「メイドだったら、休み時間、ほとんどないのに」
「この修道院でも、15時間、内職しています。机上の空論じゃ」
ドンドン!
地団駄を踏んだわ。
「計画は、全て、机上の空論なの~~、現実にするには、皆の協力が必要なの~~欲し~~の、皆の協力が欲し~~の!」
そうか、伝説にすがって、そこをアマンダに利用されたのね。
この子が、本物のピンクをまといし乙女。虐げられし婦女子の前に降り立ち・・・失われし殿方との絆を復活し、良き職場に導かん・・・
「グスン、私、やります!やらせて下さい」
「スージーが言うのなら、私も」
「「「私も」」」
「私は修道院長です。皆のリーダーになれと言うの?奉公人は無理」
「募集は、ガールなの~~」
「駅馬車ガールよ。ガール」
「じゃあ、私は・・・」
「アマンダ、マーゴット1世様は、ピンクの荷馬車を自ら引き。泣いている婦女子の前に現れ、お菓子を配ったと云います。
さあ、荷馬車を用意しました。困っている婦女子を励ます旅に出なさい」
「ヒィ、あれは、与太話では?この建物は、私の・・」
「外典も立派な経典です。女神教の名前でお金を集めましたね。貴女は、この建物の管理者に過ぎません。預金も既に抑えてあります。
そして、この建物は、引き続き駆け込み修道院として、正式なシスターを派遣します。
皆様には、この修道院にいた期間に合わせて、お金を返還します。生活の糧にしなさい」
「素晴らしいわ。アマンダ様、これからは、コジキ、いえ、街で寄付を集めるのよ」
パチパチパチ!
「おんどりゃー!さすが、清貧のアマンダ様だぜ」
「ブラウン女騎士団は、アマンダをたたえるぜ!」
「ヒィ!」
マーゴット2世こと、アマンダは、修道院を出て、今でも街で、ピンクの荷車を引いている。
そして、私達は、研修を受けている。
冒険者のお姉さんからは、
「包帯の巻き方やるよ。二人、一組!」
「「「はい!」」」
救急医療や簡単な護身術を学ぶ。
ケリーさんからは、九九や計算方法、私たちは車掌として、料金やお釣りの受け渡しをする。
安全マニュアルは、トムさん。
教師を招き。商業や一般常識も習う。
何故、こんなことを習うのか疑問に思っていたけど、後に分かったわ。
☆☆☆王都内路線営業所
「おい、忘れ物のカバンを取りに来たが、金貨300枚の額面の手形がないぞ!お前が盗んだな!」
・・・濡れ衣を着せられたトラウマが走馬灯にように走る。足が震える。
しかし、習ったわ。
「お客様、どこの商会が発行した手形でしょうか?」
「あん?お前に教えるわけにはいかねえ」
「いえ、すぐに、発行元の商会と、商業ギルドに連絡をしないと大変なことになります。換金されます。決済日は?手形の番号は?裏書人はおりますか?」
「だから、金貨300枚を弁償しろって」
「通常、手形を扱う者は、最低、決済日、発行元の商会と、裏書人ぐらいは、記憶にあるものですが、高額額面の手形なら、なおさらですわ」
「スージーさん。これ以上、話しても無駄だよ。おっさん。さあ、衛兵隊に行こうか?」
「ヒィ、こちらは客だぞ!この紳士服が見えないか?俺はお大尽だぞ」
「だから、丁寧に衛兵隊に連れて行くのさ」
ボゴッ!
護衛の冒険者の方が、助けに入ってくれた。
「お手柄だよ。スージー」
「良く対応出来たね」
「有難うございました。グスン」
ピンクをまといし乙女が導く職場、私はここでずっと働こう。
でも、ゴロツキが多いわね。
☆☆☆モーゼン商会
「この!クズクズクズクズ!間抜け!間抜け!間抜け!死ね死ね死ねーーー」
「ヒィ、モーゼン様、申し訳ございません。名のある寸借詐欺師に依頼したのですが、衛兵隊に連れて行かれました」
はあ、はあ、はあ、こちらが仕掛けた謀略がことごとく失敗している。
王都内で暴力沙汰は不味い。
だから、忘れ物に高額品が入っていたことにしたが・・・
次は、王都外で、決戦だ。
最後までお読み頂き有難うございました。
※作中にマーゴット1世と書いてあります。2世の間違いじゃないかと、誤字訂正が来ました。1世は、私の作品の中に存在します。
閑な方は、お読み下さい。本編とは全く関係ありません。
尚、実在の団体や個人とは全く関係ありません。完全にフィックションです。
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