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プロローグ

 ある一国で蒸気機関が発展したことにより機械化工業が始まった。機械加工業は人件費を大幅に軽減した大量生産を可能としたため、諸外国も同様に機械化工業を開始し、これが産業革命として開花した。そしてそんな黒煙を吹かした工場が並立した国であるソンツァ帝国に私、アーロンは生まれた。私の両親は農村出身のであった。父は農地を借りており、母は村の貴族の家庭教師をしていた。幼い私は、父の仕事を手伝い母からは読み書きの教育を受けることが出来たのである。今思い返すと、母が家庭教師をしていたことが幸いして、今の私を形作ったと言っても過言ではない。しかし、幼い私はこの母からの財産を今ほど重んじてはいず、たまに母が持ち帰る物語などの書物を読む程度に留まっていた。もし、個々で私が他の書物に手を出していたならば、後々の私の決断は違ったものになっていたのかもしれない。しかし、そんな生活をしていた私であったが、生活がガラリと変わる災害に巻き込まれることとなった。それはなんの前触れもなく訪れた。

 雨が降ったのである。農家は暇を貰った。その季節は雨が少ない季節であったため、植える作物もあまり水を必要としないものであった。だが、一日が過ぎ、また一日が過ぎても雨は止まなかった。屋根に雨粒が降り注ぐ音は鳴り止まず、あたりは白っぽくすすぐ楽なるほどに激しかった。数日が立つと、農家たちは重い腰をお越し、畑作業に出た。私も例外ではなかった。雨に打たれてずぶ濡れになりながらも父を手伝った。毎日ずぶ濡れになって家に帰る生活を二週間続けてやっと晴れがやってきたのである。だがその頃には畑の作物は腐ってしまっていた。そしてその不作が私達の村にとって壊滅的な打撃を与えてしまった。というのも、わたしたちの村は基本農耕で生計を立てていた。そこに未憎悪の水害による不作となり、村から徐々に人が離れてしまった。そして私の両親も例を漏れず村を離れた。そんな両親がたどり着いたのが工場都市のゼムリャ・チューダであった。

 私達はこの都市の西通りに住むことになったのだが、私はこの通りが嫌いであった。この通りは今のソンツァ帝国を象徴する工場が並立する景観をしていた。決まった時間に起こし人が家や寮の窓を叩き、工場は決まった黒煙を吹かす。あたりは騒音と煤と馬糞で塗れた汚い通りだった。そしてそんな機械のような都市に移住して半年、私がその偉大な機械の一部になる日がとうとうやって来た。その日母が倒れた。

 母は製糸工場で働いていたのだが、突然倒れてしまったのだ。寮に連れ帰られた母を私は看病し続けた。しかし、二分の一になった家計はどんどん苦しくなった。そんな経緯で私は働きに出る事になった。子供の私でも出来た仕事といえば、新聞配達、そして煙突掻きだった。朝に新聞配達をして、母の看病を昼間に。頃合いになると煙突掻きとして働きに出、夜に家に帰り母の看病をした。当時の私は、母が慣れない労働で体を酷使しすぎたのだと思い、できるだけ母の代わりにと働いた。それはそれはがむしゃらに。だが、今思い返すと母が倒れた理由は疲労ではなかったのであろう。母は晩年にはよく咳ごむようになったことから、おそらく肺をなにかに侵されてしまったのだろう。そして母は死んだ。

 母が後の父は、今までの父からは想像もできないくらいに憔悴してしまった。仕事から夜遅くに帰ってきたかと思うと酒臭くなって酔っ払っていることが多くなった。気性も激しくなり、そんな父を遠ざけるように私は仕事を増やし、父との共同時間を少なくしていった。だがある日を境に、父はとうとう帰ってこなくなってしまった。後々わかったことなのだが、父は橋の下で野垂れ死んでいたらしい。そして家計が私だけとなってしまった家は、とても、とても静かに、寂しく薄暗くなってしまったのである。私の人生の暗黒時代である。しかし現実は悲しみに暮れる暇を私に譲ってはくれなかった。私は父の働いていた工場に働くことになったのである。


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