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ティエスちゃんは中隊長  作者: 永多 真澄
ドキドキ! 決斗編

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4-9 ティエスちゃんは説明したがり③

「中隊長、そろそろ」


「ん、ああもうこんな時間か。エルフの話に時間使いすぎたな」


「いや、時間を食ってんのは合間合間にご飯取りに行ってるからでしょ」


 副官に声をかけられて時計を見ると、朝飯のために確保されている時間は10分を切っていたのでちょっと慌てるティエスちゃんだ。俺の山もりデザートを指さしてなんか言ってるニアは無視の方向で。しかし生意気にもこのホテルは飯がうめーんだ。妙に日本食テイストというかノスタルジーな感じ。デザートもヨーグルトとかゼリーとかケーキとかに加えて、牡丹餅やら団子みてーのもある。もちろん全種類とってきたぞ。俺は甘党だからな。さっきパンケーキ食ってたろって? あれは主食だ。


「少年、早足になるけど構わんか?」


「こっちこそごめん。時間ないときに変な質問しちまった」


「そういうな。おじさんってのは若い奴にいろいろ教えてやりたいもんだ」


「いやあんたおじさんではねーだろ」


 ま、外見上はな。中身はおじさんと乙女のハイブリットだ。まぁおじさんって一種乙女みたいなとこあるからな、そういう面では100%乙女と言えなくもないが。

 いやまあそんなくだらないことはいいんだ。俺はプチシューを口に放り込んでから続けた。


「ほかの四大氏族をさらっと説明するとだ。まずドワーフ。こいつらはまあ、人間を縦にギュッと圧縮したら横に膨れた、みたいな外見をしてるのが特徴だ」


「ひどくない?」


 だってそうとしか表現できねーもんよ。あとは人間として見りゃあ毛量が多いこと、総じて団子っ鼻なくらいかな。ある意味エルフより人間に近い姿かたちをしてるが、成人でも140センチにとっつかないくらいの低身長なので見間違えることはあんまりない。髪の色は茶系統だな。


「ドワーフは魔法が一切使えないが、精霊術には精通してる。とはいっても、火魔法限定だがな。ドワーフの森域での役割っていやあ、鍛冶だ。生産を取り仕切る氏族だな」


「鍛冶なら水魔法のほうが使い勝手いいんじゃないんスか? あとは土とか」


 横からハムサンドをくわえたハンスが参戦してくる。この選抜隊の中だと、意外にも俺に次いで魔法に詳しいのはハンスだ。認可ってそんな簡単な資格じゃねーからな。

 ハンスの言うように、ただ金属を加工するのなら、単なるエネルギー操作の火魔法よりも形状操作ができる水魔法のほうが圧倒的に重宝されるだろう。事実、王国の軍工廠や民生の製造業みたいに大量生産マスプロ品を作ってるところじゃ水魔法使いがいないと始まらないまである。


「そこはまあ、ここよ。やつらにも職人なりのプライドってのがあるんだろ」


 ここ、で俺は自らの二の腕をぱしぱし叩いた。精霊の力を借りるのは炉の温度調整までで、後の作業は自分たちのものだ、というのがドワーフの民族意識である。


「じっさい腕はいいな。帝国性の強化鎧骨格をリバースエンジニアリングして国産機の筐体をでっちあげられるくらいには知識もある。ちなみにエルフとは仲が悪い」


「最後ェ……」


 森域だぞ? 「一枚岩」って言葉から最も遠い国だ。その辺の本屋で辞書買ってくってみな。ぜってー載ってねーから。本屋があればの話だけど。


「時間もないし次だ。オークは豚鼻の筋肉ダルマだ。ガ……あー、下あごから突き出てる二本の牙も特徴的だな」


一瞬ガメラとか口走りかけたがこっちの世界じゃ100伝わらんからな。


「こいつらは森域の軍事を主に取り仕切ってる。見た目から猪突猛進な猪武者と侮ると痛い目見るぞ。あれでなかなか頭も切れる」


「なにせ森域の軍事活動の一切を管理していますからなぁ。ただのイノシシには務まりませんよ」


 副官が食後のコーシーをたしなみながら同意した。副官の古巣の王国海軍とオークはそれなりに因縁浅からぬ仲だからな。いろいろ実感もあるんだろう。


「あとは食に関してはやたらうるさい。おそらくこのホテルの料理長もオークだろうよ」


「たしかに美味いけど、その……めっちゃ豚肉料理出てるけどそれはいいの?」


 エルヴィン少年はブッフェの配膳台に並んだ料理とちらほら見かけるオークの姿を見比べながら小声で尋ねる。俺はあわててエルヴィン少年の口に牡丹餅をねじ込み黙らせた。


「おいお前それマジで他では言うなよ。あいつらイノシシに例えられることはそれなりに寛容だけど豚に例えられるのは本気でキレるからな。殺されても文句は言えねえ」


「ンガング……お、おっけ。肝に銘じる」


 こういうことがあるから異文化交流ってのは怖いんだ。俺みたいに強けりゃ、キレて襲い掛かってきたオークくらい如何様にも調理できるが、エルヴィン少年はまだひ弱な十歳児である。強くなれよ、少年。人を馬鹿にしていいのは馬鹿にしたやつを上回る暴力を有している場合だけだ。肝に命じとけ。


「ちなみにそのへん高慢なエルムの奴らと致命的に折り合いが悪くてバチクソ仲悪い」


「またかよ……」


 エルヴィン少年はいささかげんなりした風に水を飲んだ。

 いやあいつらマジで筋金入りだからな。オークのやってる定食屋でトンカツ定食頼んで、運んできた給仕に向かって「おい食材が逃げ出しているゾ」とか言っちゃうくらいに。あの時はマジで氏族間対立が激化して暴徒でもみくちゃになってたからな。俺たちが行って鎮圧したけど。


「で、最後のゴブリンだがな。こいつらは四大氏族の中で一番異形な感じだ。グリーンスキンだしな。寿命も最長で30年くらいしかない」


「でも四大氏族なんだろ? それくらい勢いがある」


「まあな。こいつらの種族的な特徴は、とにかく多産なことだ。繁殖力がすごいんだよ。知的生命にしちゃあ異常なくらいだ」


 ゴブリンは一度の妊娠で必ず五つ子以上になる。最大の記録は三十五つ子だったかな。どんな腹してんだと思わざるを得ない。またもう一つ特徴的なのは、ゴブリンと交配した相手の子は必ずゴブリンになるというものだ。ほかの氏族は他氏族同士で交配し続けると確実に氏族の総数が減少していくのが、ゴブリンだけはお構いなしに増える。もはや驚異通り越して脅威だ。


「一時期、これを危惧した三氏族が連合を組んでゴブリンをせん滅しようとしたことがあったんだがな。結局ゴブリン側のゾンビアタックに近い物量で抵抗されて講和で落ち着いたんだよ。そっからはゴブリンも森域の盟主氏族に名を連ねるようになって、統合府が樹立した後も中央に残った。取り仕切ってるのは経済と福祉だ」


 ちなみにこの戦争の中で生まれたスラングに、「ゴブリンは畑でとれる」というのがある。グリーンスキンとえげつない物量を揶揄したもんだな。

 まあ数だけで盟主氏族になれるほど甘くはない。経済を任せられてるだけあって、算数にかけては森域で一番だろう。あの小さい頭の中にどんだけの容量の脳みそが入ってんだか。

 この杏仁豆腐旨いな……。


「四大氏族、全部癖強いなぁ」


「ま、それくらいじゃねーと国は維持できねーよ。さて、時間だな。四大氏族以外なんも話せなかったが、聞いときたいことあるか? 簡単なことならすぐ答えるけど」


 時計の針はそろそろ楽しい時間のおしまいを告げようとしている。俺は熱いお茶で〆て、少しばかり申し訳なく思う。ちょっと口が回りしすぎたな。


「えーと、そんじゃあ……四大氏族以外で気を付けとく氏族っている?」


「んー、そうだな。蜥蜴人、魚人、犬人、小猫人と色々いるが、気を付けるといえば――」


 あごに手を添えて考える。四大氏族に次いで力があって、色々きな臭いといえば。


賢狼人(レイフィール)、だな」

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