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ティエスちゃんは中隊長  作者: 永多 真澄
ドキドキ! 決斗編

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4-7 ティエスちゃんは説明したがり①

「ん? 森域の主要氏族について知りたい? なんでまた」


「いや、午後から式典だろ? 思ったよりも人間と違う連中ばっかでその、なんも知らないままってのもすわりが悪いっていうか……」


 エルヴィン少年のそんな殊勝な申し出を受けたのは、ホテルのモーニングビュッフェで優雅に朝食を摂ってたティエスちゃんだ。しかし一応は来賓扱いなのにセルフサービスってのはどうよ。新手の嫌がらせか? いや気楽でいいんだけどさ。

 そんな俺の朝食はサラダにスクランブルエッグにベーコンにゆで卵にソーセージに卵焼きに丼飯に目玉焼きにハンバーグにパンケーキに味噌汁にポタージュスープだ。コレステロール? いいんだよ日ごろから運動してんだから。軍人は体が資本、しっかり食べねーと力も出ない。だからエルヴィン少年ももっと食え。なにスカしてパンとコーヒーだけで済まそうとしてやがるんだ。俺はそっと山盛りのスクランブルエッグの皿をエルヴィン少年に差し出した。決して調子に乗って取ってきすぎたことを後悔してるわけではないぞ。おいそんな目で見るんじゃない。


「はー、エルヴィン君は真面目ねぇ」


「お前ももう少し真面目にやってくれていいんだがな」


 同卓でスプーンをくわえたニアがふがふがと言った。やめなさいよみっともない、他国よその人も見てるんだからね。心の中のオカンな俺がぷりぷりと怒った。俺はスプーンを取り上げて、代わりにお小言を一つお返しする。

 ニアは少しムッとなって、それからひどく嘲った調子で言葉を返した。


「ハン、そっくりそのままお返しするわ」


 こ、こいつ~~~~~~。華美な装飾の銀のスプーンが、俺の手の中でめしゃりとインゴットに還った。おっといけね、証拠隠滅うっかり証拠隠滅うっかり


「はぁ、もういいや。そんでなんだっけ、森域の氏族だっけ」


「お、おう。教えてくれんのはありがたいんだけど、それ、いいのか? なんか前衛芸術になってんだけど」


「……きにするな」


 俺が修復を施したスプーンでエルヴィン少年を指すと、そのスプーンを見た少年は少しばかり引き気味に言った。ま、まぁ確かに若干俺のアレンジは入っちまったが、付加価値だよ付加価値。請求は国にツケといてくれ。

 ニアはここぞとばかしにけらけらと笑っていたので、スプーンにはタバスコぬって奴の口にリリースしてやった。


「ま、時間もあるしな。いいだろう。簡単にだが――説明しましょう」


「どっからだしたその眼鏡」


 悶絶しているニアをよそに、俺はスチャッと眼鏡を装着し説明おばさんフォームに変身した。エルヴィン少年の無粋なツッコミはスルーして、さっそく本題に移る。


「まずそうだな、森域の四大氏族はわかるか? 支配氏族ともいわれたりするが」


「ええと、ドワーフと、ゴブリンと、オークと……あと、エルフだろ?」


「ざっつらい」


 エルヴィン少年は指折り数える。正解である。まあ国の名前にもなってるからな、そりゃ知ってるだろう。サービス問題もいいとこだ。


「一応、この四氏族の森域での立場はフラット、ということになってる。実態はどうあれ、建前上はな」


「じゃあ実態は?」


「エルフ>>オーク=ドワーフ>ゴブリンってトコだな。実際この国を回してるのは、エルフだ」


 エルヴィン少年は神妙に頷く。自分のルーツにも関係ある話だしな、思うところもあるんだろう。質問もないようなので、俺は丼飯をかっ込みながら続けた。


「エルフは、ハフッ、外見的にはハムッ、緑色の髪に長い耳が特徴だムシャア」


「飯食うか話すかどっちかにしろよ! みっともねぇ!」


「それもそうだな」


 反省である。俺は一通り丼を空にしてから続けた。


「それと、あれだな。大体エルフってのはひょろ長くてガリだ。贅肉が付きにくい体質なんだろうな。世の女どもならうらやましがるところだろうが、軍人としては不利だな。その代わりと言っちゃなんだが、人種的に魔法に対して適性が高い。フィジカルで不足する武力を魔法で補ってる感じだな。ちなみに精霊術にはマジで適性がない。エルフの血が一滴でも混じってたら、精霊術は絶対に使えない。少なくともここ数百年で一人の前例もない」


「精霊術って?」


「あー、まあその辺は今度辞書でもくって調べろ。とりあえず今はそういうもんだと思っとけ」


 精霊術っていうのは魔法の一種なんだが、ちょっと発動までのプロセスが異なる。その名の通り、精霊の力を借りるわけだな。精霊ってのはそのへんの魔力の中に偏在してる概念的な生命体なんだが、こいつに話を通せるとバカみたいな出力の魔法を使ってもらうことができる。魔法行使代行って言えばいいのかな。逆に繊細な制御には全く向かない。身内だとヒョーイがこれを大得意にしてる感じ。代わりに魔法の才能はからっきしだけどな。トレードオフみたいなもんなんだろう。俺も全く精霊術使えんし。


「そんで性格だが、これは年齢で大きく分かれるな。ガキの頃は人間と大して変わんねーが、エルムはマジで高慢ちきで鼻持ちならん」


「エルム? エルフじゃなくて?」


「エルフだよ。大体そうだな、成人してから100歳にとっつくくらいの若いエルフを指す言葉だ」


「100歳で若手ェ!? 土建屋や政治家じゃねーんだぞ!」


 あー、あるよな。ああいう特定業種だと四十~六十は若手、みたいな。さすが花街出身だけあってそっち方面の知識もバッチリってか。ほんとに十歳か? お前。

 ちなみにエルフの平均寿命は300歳くらいなので、若手というには少し年が行ってる気もするな。エルムを越えてエルダーになりゃあちょっとは落ち着くんだが。


「んで、150歳以上のエルダー連中は落ち着いてるぶん狡猾だ。今の森域を回してんのは、大体このエルダー連中だな」


「それ、ほかの三氏族は面白くないんじゃないか?」


「まあな。その辺をそこはかとなくうまくやってるからこその狡猾、ってトコだろ。知らんけど」


「知らねーのかよ」


 うるせー、俺だって聞きかじりじゃい。ったく、次行くぞ次!

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