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ティエスちゃんは中隊長  作者: 永多 真澄
るんるん♪ 行軍編

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3-13 ティエスちゃんは身を清める④

「露天風呂に意味があるように、実は内風呂にもそれぞれ意味があってな」


「へー!」


「そうなの?」


 洗い場で髪をわしゃわしゃ洗いながらうんちくを垂れるティエスちゃんだ。ちなみにこの世界にもちゃんとシャンプー&リンスは存在する。宗教施設がそのまま温浴施設だからな。人体用の洗剤もそれなりの発展度合だ。椿オイル配合。

 がきんちょはまだ未就学児な感じなのにちゃんと自分でシャンプーできててえらい。それに比べてニア! なんだそのちょっとおしゃれなシャンプーハットは!


「なによ。悪い?」


「いんや、髪のなげー奴は大変だなって」


 ニアは背中に届くくらいには髪を伸ばしてるからな。普段は結ってるが、こういう時に下ろしてるのを見ると結構毛量ある。王国陸軍は頭髪については結構ルーズだ。一説には、いつだかに王子だか王女だかが入隊したとき、髪を切るのを渋ったことから規則が緩和された、なんていう職権乱用甚だしい逸話があるが、真相のほどは知らん。

 ちなみに俺は襟に届かない程度で切り揃えてる。軍人やってると色々邪魔になるからな……。せっかく女に転生したってのにもったいないなとは思う。


「慣れれば大したことないわよ。それで、意味って?」


「ん? ああ。まず露天風呂は祈りを捧げるための拝殿なんだが」


 頭を流す。ふうスッキリ。麻雀対決でかいた嫌な汗ともおさらばだ。

 俺はまず白湯風呂を指して続ける。パイタンじゃないぞ。さゆだ。……いや温泉だから白湯ではないのか? まあいいや。とりあえず、特殊なオプションが付いてないオーソドックスな浴槽だと思ってくれ。


「まず白湯風呂だが、アレは天気がめちゃ悪い時でもお祈りできるように設けられてる。だからどこの神殿でも、内湯は必ず屋外が見えるようにデカいガラス窓に面してるわけだ」


 いわばサブ拝殿やね。極端な例えだが、立山の頂上の雄山神社と麓の雄山神社みたいなもんだ。ここは温泉だからまだいいけど、沸かし湯のところは冬場には露天を閉めちゃうこともあるからな。薪代って意外とバカにならんのですわ。

 俺は手拭いにボディソープをしみこませながらさらにうんちくを垂れた。


「で、打たせ湯。アレはブディズムの苦行・荒行の影響を受けてて、いわゆる簡易版の滝行だな」


 おそらく転生者が広めたのだろうが、この世界には仏教のパチモンが存在する。元からそうだったのか、長い時間の中でそうなったのかはわからないが、結構俺の知ってる仏教とは別物だがね。まぁ前世もとから宗派によっていろいろ違ったし、世界を隔てればそりゃそうもなるかって感じ。ちなみに俺の家は浄土真宗だったな。お西さん。

 規模としたら全然大したことないが、仏教思想の一端はひっそりとこの世界に根を下ろしている。輝星信仰でも思いっきりそれを習合してるしな。こんな具合に。

 ただ不思議なのは、神道・仏教の影響っぽいのはそこかしこに見受けられるのに、世界三大宗教の残りは見る影もないってところだ。変な作為を感じてティエスちゃんこわーい。


「同じように、サウナや電気風呂、水風呂も荒行の簡易版だな。サウナからあがって気持ちよくなること”ゲダツ”っていうだろ? ありゃあもともとブディズムの言葉だ」


 整った程度で解脱してんじゃねーよとは思うが、悟りをひらくプロセスからして案外的を射てそうなのがなんともな感じ。ブッダもさぞお嘆きだろうよ。


「ふーん。じゃあ、泡風呂は?」


 ニアがボディスポンジで体を洗いながら尋ねた。とってもノーブル。石鹸染みさせた手拭いで乾布摩擦スタイルな俺と比較すると女子力の差がえぐいな。見習っていこう。


「あれは気持ちいいだけ」


「気持ちいいだけ!? 謂れは!?」


「そんなもんはない」


 洗面器にためた湯でざばーっと一気に泡を流す。ふぅ。スッキリした!

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