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ティエスちゃんは中隊長  作者: 永多 真澄
るんるん♪ 行軍編

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3-10 ティエスちゃんは身を清める①

「いやー、出禁にされちまったなぁ。ハハハ」


「いやハハハじゃないわよ。何やってんのよあんたら」


「俺じゃねーやい。やったのはエルヴィン君ですので」


「ひどい!?」


 星空の下を歩くティエスちゃんとそのご一行だ。エルヴィン少年の一撃で全員ハコになってゲームは終わり、茫然自失って感じのアサイエルにかわってボッシュが粛々と支払いの手続きなんかをしてくれた。一応カジノの職員でもあるんだな。いいもんが見れたと実に上機嫌だった。

 ちなみに俺の負け分はエルヴィンの勝ち分から支払われた。まぁ元手は俺の金なのでね。もちろん残った勝ち分はエルヴィン少年の口座に貯金してある。将来のための貯えやね。お貴族様ってのはカネがかかるし、まぁ少しは足しになるだろう。

 俺の取り分? いいよそんなの。俺はそんなに金に困ってないしな。中隊長はそれなりのお賃金がもらえるし、大学の頃に取った特許の収入もそれなりにあるので。

 なお、これくらいの規模のカジノになると銀行を兼業してることも多く、多少の手数料を払えばカネの出し入れに苦労しない。ATMがない代わりにこういうところが24時間対応してるんだよな。きわめて便利だ。

 まぁ俺はこの町のカジノのブラックリストに載っちまっただろうから、その恩恵は受けられなくなっちまったわけだが。こういう業界は横のつながりも強いからな。トホホ。

 俺はやり場のない苛立ちを、ひとまずニアで発散することにした。


「そもそもなぁ、今回の騒ぎの発端はお前が俺たちをカジノに引っ張り込んだからだからな? 自覚しろ?」


「ムムッ……!」


 ニアは何も言えなくなってひどく悔しそうな顔をした。ケケケ、ざまみろ。


「そんで、これからどうすんのさ。俺、もう嫌だぜ麻雀。あんなの心臓に悪いよ」


「なに言ってんだ大勝ちしといて。それにな、それがだんだん癖になっていくもんだぜ?」


「そうそう。エルヴィン君は将来貴族社会でやっていくんでしょ? なら麻雀はなれておいて絶対に損はないわ。特にエルヴィン君は天運ヒキがすごいから、手加減することも覚えないと。こんど私が教えてあげるわ」


「ここまで下心が見えてるやつもなかなかいねーな」


「なによー!」


 ニアはふんがーと憤慨した。

 ニアの言には一理こそあれ、目ん玉をゼニの形にしてたやつには何も言う資格はねぇな。俺たちがVIPルームで死合ってる間にどうもひどく負けたらしく、それを格下(麻雀の実力でいえば完全に格上だが)から毟って補填しようっていうのはちょっとね。みっともないゾ。

 ちなみにエルヴィン少年の身の上はその多くを隠されたうえでウチの中隊の小隊長どもまでには周知してある。そのほうが色々融通も利くからな。


「で、次にどこ行くかって話だったな」


「どうすんの? 飲みにでも行く?」


 ニアが口の前で猪口を傾けるジェスチャー。酒飲みの所作である。まあ休みの日なんかは一緒に飲みに行ってホテルでしっぽりやって朝帰りなんてのはざらだが、今日はそうもいかねーしな。

 それにわりかし喫緊の用もある。俺は首を横に振ってニアに答えてから、エルヴィン少年の肩にガッと手を回した。


「うっし、お祓い行くぞ」


「なんで!?」


「なんでってお前、大三元&四暗刻を天和するとかマジで一生分の運使い切ったようなもんだぞ。この先何が起こるかわかったもんじゃねぇ。いいか? この界隈じゃ、九蓮宝燈アガったら死ぬみたいな話もるんだ。今回はその比じゃねぇの」


 たしかただ天和するだけでも30万分の一くらいの確立だったはずだ。麻雀打ちがその競技人生の中で一回あるかないかくらいの確率で、それに役満が二つセットともなると、考えるのもばからしいくらい天文学的な数字だろう。こわいね。お祓いくらいしといて損はないだろう。


「やっぱ俺、麻雀嫌いだ……」


 エルヴィン少年は俺の解説を聞いて、顔を青くしてうなだれていた。

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