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ティエスちゃんは中隊長  作者: 永多 真澄
るんるん♪ 行軍編

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3-4 ティエスちゃんは報告する

「……以上が、今回の顛末になります。詳しい話は魔研の連中の調査次第ではありますが」


「うむ、ご苦労だったねイセカイジン卿。それで旅程の方に影響はあるかな?」


「国境警備隊から人を出してくれるそうなので、それを待ってからになりますが……概ね、2時間ばかりの遅れになるかと」


「なるほど、余裕を見て旅程を組んだエライゾ卿の判断は正しかったな。結構。旅の再開までは茶でも飲んでのんびり過ごすとしよう。イセカイジン卿もいかがかな?」


「……では、一杯だけ」


 愛想笑いが上手になるのも宮仕えの悲しさ、ティエスちゃんだ。現在お偉方のご乗車になられているリムジン内で今回のインシデントレポートをご報告差し上げていたのだが、なんか流れで茶会に招かれてしまった。

 相対しているのは今回の外交使節の長、王都よりいらっしゃった特使のワリト―・ハラグロイゼ伯爵である。マジで事前に名前聞かされてなかったら吹き出してた自信あるわ。

 実際腹黒いのかは知らんが、しかしこういう役目を任せられててる割にはずいぶんお若く見える。30代前半から、下手すりゃ十代にも見えるほどだ。ハラグロイゼ伯爵家といえば代々宮廷貴族としてそれなりのポジションについている文官のお家だが、当主とみるには若いし現当主の嫡男とかかな? 爵位もきちんと伯爵だし、次男坊以降ってことはないと思われる。知らんけど。

 まぁ顔を繋いでおいて損なことはそんなにない。無碍に断って嫌われるよりはましだろう。こういうオツキアイを袖にできないのが中間管理職のつらいところだ。

 ひどく蒸し暑い外では選抜隊のメンバーが総出でハーヴェスターの死骸の運搬除去と周辺警戒に当たっている。そんな時に俺だけが空調完璧な豪奢な車内で美味しいお茶を戴くとか、まったく心苦しいったらないぜ。同席してるお偉方さえいなきゃ完ぺきだったんだけどなー!!


「さて、イセカイジン卿。此度の騒ぎ、卿はどう見る?」


 ほーらさっそく来た。せっかく伯爵手ずから淹れてくださったティーの味がしねーぜ。俺はひとくちだけ口をつけたティーカップを静かにテーブルにおいた。


「半々、とみています。街道の結界を突破して魔物が侵入することは、比較的日常茶飯事でありますから」


「なるほど。輸入品の値が張るのも頷けるな」


「とはいえあれ以上の強度の結界を四六時中、というのは現実的ではありませんし、定期的な山狩りなどはさらに望むべくもありません」


「御山を侵すと一部の民衆がうるさいからなぁ」


 ワリトー伯は半笑いになりながらお茶請けのビスケットをかじった。上等なやつだ。俺も一枚もらう。ちょうどいい塩気と甘さ、うーん上品だ。


「それでもう半分は、やはり森域かな?」


「でしょうな。帝国があのタイミングで手を出してくるのは考えにくいですし、時節を鑑みても7、いや8割は」


「困ったものだね」


 溜息を吐きながらふかふかの椅子に深々と身を沈めるワリトー伯に愛想笑い含みの苦笑をしつつ、茶をすする。

 本来ハーヴェスターのような砲撃型に分類される魔物は、随伴歩兵スカウトの魔物を引き連れたグループで行動する。今回現れたハーヴェスターは単独である。怪しいよね。


「痕跡については我々ではお手上げですので、やはり魔研の調査待ちですな」


 俺はカップに残っていた茶を干した。魔研っていうのは王国陸軍魔法研究所のことで、やってることはまぁ理研+科捜研みたいなもんだ。こういういかがわしい事態には実に頼りになる連中である。エライゾ本領の基地のチームが今向かっているらしいが、合流前にこっちは出発することになるな。引継ぎが今からめんどくさいぜ。

 俺は空のカップを静かにテーブルに置いた。


「結構な御点前で。小官はこれにて失礼します」


「うん。時間をとらせたね。……これからも忙しくなるだろうが、よろしく頼むよ」


「ハッ!」


 ワリトー伯はその整ったかんばせにほのかな微笑を浮かべた。敬礼してから退出する。外交官やってるだけあって、底の見えない恐ろしいお方だぜ。

 リムジンの外に出ると、蒸し暑い熱気がお出迎えしてくれた。それでもいくらか気分がいいのはなんでやろなぁ。やっぱ俺は政治向いてねーわやだやだ。手柄とか立てたくねー。

 俺は肩をグルグル回しながら、絶賛お仕事中の部下たちのもとへと歩を向けた。

 ――それにしてもミッティのやつ、しれっと茶会に交じってたけど特に絡んでこなかったな……。

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