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ティエスちゃんは中隊長  作者: 永多 真澄
るんるん♪ 行軍編

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3-2 ティエスちゃんは移動中②

「定時連絡。周囲に障害を認めず。キャリア、変わったことはないか?」


『ご苦労様です。こちらも異常らしい異常はありません。……ああ、ニア小隊長がエルヴィン従士に麻雀のルールをレクチャーしてましたよ。カモにするつもりだったようですが、現状エルヴィン従士のひとり勝ちです』


「なーにやってだアイツは」


 キャリアの通信士をやってる整備隊員からのタレコミに半目になるティエスちゃんだ。こちとら狭いコクピットん中で孤独に苛まされてるってのによー。いや、俺もロボ好きだしそれ自体は全然苦じゃないんだけど、だからって周りの奴がワイワイやってるのに自分だけってのはなんかハブにされたみたいで悲しいじゃねーか。前世むかしの苦い記憶がよみがえるっつーか……いや、よそう。過ぎた話だ。

 さて、そんなわけで昼休憩も終わり行軍再開だ。兵隊の昼飯はサービスエリアの食堂の皆さんのご厚意で用意していただいた特盛肉飯弁当だったんだが、俺は午後の当直があるのでくいっぱぐれである。ひとりむなしくカロリーバーを食うのはなかなか惨めだったね。

 強化外骨格にはトイレなんてもちろんついてないので、排泄物はおむつの中に垂れ流しだ。その容量だって無限じゃない以上、出るものは少ないほうがいいわけで。今回は俺が貧乏くじを引いた。まさか食堂の皆さんがこんなサプライズを用意してくださっていたとは。予定だとキャリアに積んである軍隊缶飯レーションだったので初日の当直を受け持ったのだが、さっそくはしごを外された気分だ。

 とはいえ仕事は仕事。気ィ抜いたら死ぬ可能性普通にあるからな。警戒は厳にっと。

 俺たちは今回の主賓だが、それはそれとして道中の安全確保とお偉方の護衛も兼ねている。行軍中の当直は何をやるかというと、まあいわゆる露払いだ。車列の前を歩いて、野良モンスターとか魔物とか不穏分子が出てきたら味方の部隊が展開するまでの時間を稼ぐ。

 もちろん別に倒してしまっても構わんわけで。

 ああ、不穏分子ってのはまあ、他国のスパイとか工作員とか盗賊とかだ。御山の大峡谷、天然の切り通しの中につくられた街道沿いは比較的治安がいいとはいえ、まあ出るときは出る。大体は出てきても盗賊崩れくらいなんだが、今回は普通に外交使節のお偉方もいるんで、まあよからぬことを企む輩はいつもよりも多いと想定される。出ないに越したことはないんだがな。

 それより怖いのは野良の怪獣だ。ここは峡谷の底とはいえ御山のテリトリーなので、平地とは比じゃないほどに出くわす可能性は高い。街道には怪獣除けの結界が一応張ってあるんだが、まあ破ってくる奴は普通に破ってくるからな。そういうのは一般的な個体より強いことが多いので、本当に出ないでほしい。いやフリとかフラグではなくてね。

 じゃあ一般人とかここ通るときどうしてんの? という疑問が浮かぶだろうが、そりゃもうお星さまに祈って一気に駆け抜けるのよ。一応陸軍や領軍も巡回してるんだが、それもオールタイムというわけにはいかんしね。だから巡回の時間帯はめちゃくちゃ渋滞するし、巡回してない時間帯は事故が多発するというなかなか厄介な道である。なんで事故が多発するかって、そりゃさっさとこの一帯を抜けたくてスピード出すからやね。

 今日は全線通行止めにしてるので渋滞や事故の心配はない。近隣住民の皆さん、ご迷惑おかけします。

 金のある個人や会社なんかは冒険者ギルド(PMC)から人を雇って護衛につけたりしてるけど、まぁ軍に比べりゃ装備も練度も劣るので気休めやね。当たり前の話なんだけど王国政府の制御下に置かなきゃいけない以上、国軍より強くなってもらっちゃ困るわけだ。がっちり制限掛けさせてもらってます。

 そんな地帯が100キロくらい続いて、御山を抜ければようやく森域との接続地域だ。今はその道半ば。夕暮れ前には国境の町につく予定である。


「しゃ、気ィ引き締めていこうか」


 誰も聞く者のいない意気込みを独り言ちて、両の頬を軽く張った。よし、気合再充填完了。


 ン……??


 視界の端に、何かがよぎる。次の瞬間、俺は通信機にがなり立てていた。


「全車停止! インシデント0100発生、機動部隊は出動しろッ!!」

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