3-1 ティエスちゃんは移動中①
「ツモ。リーチ一発タンヤオドラドラ。跳満やね。18000」
「げぇ、またっスかぁ!?」
「あんた、絶対イカサマしてるでしょ!」
「してませーん。してるってんなら証拠出してくださーい」
「ぐぬぬ」
まあイカサマはやってるティエスちゃんだ。土魔法のちょっとした応用やね。バレんうちにかき混ぜちゃお。じゃらじゃら。
朝方基地を出発した俺たちは、現在森域に向けて移動しているキャリアビークルのキャビンで暇つぶし中。メンツは俺、ハンス、ニアだ。副官、トーマス、ハナッパシラ君は別の車両に乗り合わせてるし、エルヴィン少年はルールを知らなかったしで、三人麻雀である。
麻雀は割と古い時代からこの世界にある遊戯で、またぞろ転生者の仕業なのだろうが、今では貴族の嗜みとして上流階級でやっていくには必ず覚えなきゃならんほどに定着している。ちなみに役は日本式だな。前世の脱衣麻雀で鳴らした腕前が光るぜ。
逆にカードゲームの地位は結構低いんだよな。トランプもあるんだけど、完全に庶民用の遊戯って感じ。
「てかよ、一応任務中だろ? 麻雀なんてしてていいのかよ」
エルヴィン少年がふてくされたように言う。まぁ横でじゃらじゃらやってたら気になるわな。イマキヨさんかってなもんで。俺は部下二人から巻き上げた紙の束を指ではじいて数えながら答えた。
「大きな目から見れば任務中だが、細かい区切りからすりゃ非番だ。キャリアの中でいつでも動けるようにしてりゃ、なにやってたっておとがめはねーよ」
「さすがに賭博はご法度じゃねーの??」
「バレればな」
俺がにやりと笑うと、ニアとハンスもにっこりした。エルヴィン少年はドン引きした。
「っと、そろそろ昼か。全車に通達、昼休憩だ。予定通り、御山登山口サービスエリアで休憩をとる」
「了解」
キャリアビークルを運転していた整備隊員が、無線機に向かって俺の命令を復唱していく。この世界には長距離通信技術こそないが、近距離であれば無線がある。いやどういうテックツリーだよというのも今更なので、あるものはあるのだ。電波ではなく魔法を利用したもので、近距離でもそこそこタイムラグが出るのが玉に瑕。
こないだの徒歩行軍訓練でも通った街道を進み、すでに前回野営したキャンプ場も過ぎてしばし。でかい車体ゆえにそんなに速度も出ないのだが、それでも歩くよりはずっと早い。御山の麓、大きな駐車場があるサービスエリアに車列を落ちつけ、小休止である。
普段の行軍であればこんな悠長なことはしないのだが、今回は国軍の代表という立場とともに外交使節のお偉方も同行しているので、タイムスケジュールにはかなりの余裕が設けられている。
もちろんサービスエリア側にも連絡は行っていて、施設自体を一時的に貸し切り状態にしている。一般人の侵入は制限されてるわけやね。お偉いさんが貸し切りレストランでお食事としゃれこんでる中、俺たちは一般車が入ってこないか監視しつつ交代で昼食と便所休憩だ。
一応キャリアビークルには簡易キッチンが付いていて食事だって作れるのだが、どうせならレストランで上等なものを食いたいのが人情である。
ちなみに今更だが、キャリアビークルってのは強化外骨格を輸送するための運搬車両だ。扁平なトレーラーのような形状をしていて、トレーラーヘッドとコンテナ部は一応分割されているが、電車のように内部で一体となっている。コンテナ内に3機の強化外骨格を駐機することができ、ほかにも簡易的な整備ドックやキャビン、先ほども言った簡易キッチンがある。超巨大なキャンピングカーというべきか、超小規模な移動基地というべきか、そんな感じだ。全幅4メートル・全長30メートルを超す超大型車両なので、運転はクソほど難しい。
「第2班は先に食事をとれ。30分交代だ。ゆっくり噛んで食えよ」
『はーい』
のんきに返事をしているのは整備班の連中である。お前らは警戒任務ないだろ運転の疲れを癒せ。キャリアビークルは整備隊の持ち物なので、運用はもちろん整備班の仕事だ。ウチの中隊の整備隊員は全員キャリアの運転免許を持っているので、今回の行軍ではローテを組んで運転にあたってもらっている。事故ったらマジでシャレにならんからな。
ちなみに行軍中の役割分担にあたり、俺・ニア・ハンスを第1班、副官・トーマス・ハナッパシラ君を第2班としている。
「了解です。それではお先に頂きます」
「ああ。ごくろーさん」
副官の略式の敬礼にこちらも略式で返す。出発からこの昼休憩まで、有事に備えた警戒当直ってことで副官はずっと強化外骨格のコクピットの中だったから、ずいぶん肩もこったろう。目的地に着くまでに倒れられちゃいかんからな。休めるときは十分休め。
今回の行軍、キャリア2台とお偉方の車が5台という編成で、キャリアでお偉方をサンドイッチするようなフォーメーションで運行している。警戒は戦闘キャリアの班の仕事であり、午後の当直は俺だ。今からげんなりするぜ。
「なぁハンス、昼のおかず分けてやるからさァ、午後の当直交代しない?」
「いやー勘弁っス!」
監視任務で駐車場の入り口に一緒に突っ立ってるハンスに交渉を持ち掛けてみたが、その返答はにべもないものだった。ちぇー。




