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ティエスちゃんは中隊長  作者: 永多 真澄
わくわく! 入院編

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1-18 ティエスちゃんは喫煙中

「うーん今日も元気だタバコがうまい」スパスパ


「あっコラ駄目ですよ!」


「あ"あ"あ"ーーーっ!」


 病院の屋上で気持ちよくタバコを吸っていたらダッシュで駆けつけてきたなじみの看護士に没収されてしまったティエスちゃんだ。返せっ返せよぉー!!


「駄目ですー。全館禁煙ですー」


「屋上じゃん!」


「全館=敷地内ですー」


「横暴だ!」


 俺がわめくのをしり目に、火をつけたばかりの煙草が看護士の手の中でさらりと塵になった。風魔法のちょっとした応用だ。タバコだった残滓は吹き抜けた風にさらわれて、青く澄む空に溶けてゆく。


「横暴じゃありませんー。そもそもここは病院なんですから、我慢してくださいよー」


 看護士はいつも通りどこか間延びした口調で、かつ容赦なく俺の言葉を切り捨てる。こんにゃろ……!


「俺ぁよくないと思うね。昨今の嫌煙運動ってやつは! なんできっちり分煙できてた喫煙所つぶしてまでタバコ吸いをいじめるかね!」


「そりゃ体に悪いですからねー。火事のリスクもあるし……しかもティエスさんの吸ってるの、エルフたばこじゃないですか。ダブルでアウトですよー」


「ッカー!! わからんかね、あの徹夜明けに吸うと意識がぶっ飛ぶような酩酊感と鼻を突き抜ける爽やかな森の香りが! これから毎日森を焼こうぜってなるあの高揚感が!」


「それが駄目なんですってば。獣人用の煙草なんですからー。だいたい、当のエルフたちからもかなり忌み嫌われてますからね。作ってるのはオークですし、じきに社会問題になるんじゃないかなー」


「あいつらマジで仲わりーからな……たばこが原因で戦争、ってのも一概にないといえねーのがマジで最悪なんだよな」


 御多聞に漏れすこの世界のエルフとオークも仲が悪い。こないだもオークのとんかつ屋がエルフお断りの張り紙をしたとかで喧々諤々やっていたほどだ。いや口論で済めばいいんだけど、あいつらマジで血の気が多いからたやすく武力衝突に発展するんだよな。俺の部隊も何度か調停のために出かけたことがある。え、調停って何するのかって? そんなもん両方ボコボコにして無理やり頭を冷やさせる以外にないだろ。やはり暴力。暴力はすべてを解決する。


「また物騒なこと考えてますねー」


「おいやめろばか勝手に人の頭の中を覗くな」


「いやあ、魔法使わなくてもわかりますってー。職務外の思考盗聴は犯罪ですしー」


「わぁ。順法意識たかーい」


「たかいですよー。じゃなかったら今頃ティエスさんなんて簀巻きにしてさるぐつわかませてベッドに縛り付けてるとこですもん」


「ヒェッ」


 こいつマジでたまにしれっと怖いこと言うんだよな。それでいて顔は笑ったまんまなんだ。こういうのにありがちな「しかし目は笑っていなかった」みたいな注釈が付かないほど自然な笑顔でさぁ。余計怖いわ。


「お、おこった?」


「おこってないよ」


 おこってなかった。よかった……。


「そういえば、そろそろ退院でしたよねー。寂しくなるなー」


 看護士は屋上のフェンスにもたれて、そんなことを言った。なんだよ、しおらしいところもあるんじゃん。たとえ世辞でもサ。


「そだなー。正直病院はもうこりごりだが、看護士さんに会えなくなるのは、ちょっとだけ寂しいかもな」


「あー、口説いたって駄目ですよティエスさん。私フィアンセいますしー」


「そんなんじゃねーやい。てか彼氏いるんだ。どんなやつ?」


「ふふ、内緒でーす。ティエスさんに教えたら、つまみ食いされちゃいそうだしー」


「バレたか。ははは」


「ふふふ」


 白いシーツの群れをもてあそんだ風が、さやさやと吹き抜ける。そんなうららかな昼下がりの屋上で、俺たちはしばし談笑に興じていた。



 なお、看護士が仕事に戻ったのを見計らってこれ幸いと煙草に火をつけたところ、今度は女医に見つかって煙草を箱ごと没収された挙句に小一時間説教を食らったのはまた別の話である。トホホ、もう病院内で喫煙なんてしないよぉ~~!

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