5-0 ティエスちゃんは虜囚の身
「35番、面会だ。出ろ」
「……ふん、物好きな奴が居たもんだ。俺に会いに来るような奴が、まだいたとはな」
「浸ってねーでさっさと歩け」
看守にケツを蹴り上げられるティエスちゃんだ。こちとら女の子なんですけどォ!? いいじゃんせっかくのシチュエーションなんだからさあ! 牢名主ムーブとかやってみたいじゃん!
魔法封じの手枷をはめられているので身体強化もできない身からすると、只人の蹴りでも大いに痛い……あれ、痛くないな。手加減してくれたらしい。やさしいね。あっ、看守がつま先をおさえてうずくまってる! シンプルに肉体強度の差が出ただけみたいだ。かわいいね。
ちなみに手枷の封印効果なんて俺にかかれば寝ててもレジスト出来るが、さすがにそれをやると色々問題になりそうなのでやらないことにしている。こう見えて模範囚だからね俺は。
苦々しい顔をした看守に案内されて面会室に入ると、そこはなんというか、2時間ドラマの刑事モノとかでよく見た感じの内装をしていた。世界が変わってもこの辺そんなに変わらないもんなのね。
大きな部屋を二つの空間に仕切ったような作りで、空間はガラス板付きのカウンターテーブルで明確に区切られている。椅子に座るとちょうど顔が来る部分のガラスには同心円状に小さな穴があけられていて、二つの空間をつなぐ隙間はそれくらいのものだった。
意外と室内は自然光が取り入れられていて明るい。窓には頑丈そうな鉄格子が嵌っていて、威圧感はすごいけどね。
さて、面会者は誰かな~と穴あきガラスの向こうを見ると、そこにいたのはハラグロイゼ卿だった。思わず襟を正す。王国の現地責任者のお出ましだ。敵わんね。俺が小さく会釈すると、ハラグロイゼ卿はにこやかに笑む。こわぁ……
あと、おまけみたいにしてエルヴィン少年もハラグロイゼ卿の横にちょこんと座っている。
俺は看守に促されるまま指定された椅子に腰かけ、ガラス越しにハラグロイゼ卿と目線を合わせた。
俺は弁明した。
「いや、ちゃうんスよ」
「ふむ、何が違うのかは聞いておきたいところだね」
ハラグロイゼ卿は女が十人いれば八人はメロメロになるような魅惑の笑みをたたえたまま、穏やかに聞き返した。ヒェッ。え、残りの二人はどんな反応を示すかって? 俺を見ればわかるだろ逃げるんだよ怖すぎるんだもん。
しかし逃げられない。回り込まれてしまった。前門のハラグロイゼ、後門の看守だ。……後門は割と何とかできるんだけど何の解決にもならないんだよなあ。むしろ問題を複雑化させるだけである。
前門の虎もといハラグロイゼ卿は、笑みを崩さぬままに続けた。
「大まかな経緯はエルヴィン君からも聞いているが、イセカイジン卿の口からも直接聞いておきたい。話してくれるかな?」
側に控えるエルヴィン少年にちらりと目をやり、ハラグロイゼ卿が踏み込んできた。エルヴィン少年はバツの悪さ半分、呆れ半分といった表情をしている。別にエルヴィン君が気負うことじゃないからね。心配しないでね。どうしてもって言うなら代わってあげるけど。
まあ、エルヴィン君のことは今は良い。視線を目の前の美しき獣に戻す。
一見すると優し気なハラグロイゼ卿の「~してくれるかな?」は、「いいとも~!」以外の返答を許さない。しろ、と言っているのと同義である。ぶらハラグロイゼとかしててくんねーかな。
俺はハラグロイゼ卿を上目遣いで見上げながら、揉み手をしつつ話しはじめた。
「へへへ、モチのロンでやんす。というかこれは誤認逮捕でしてェ……」
ということで過去回想行ってみよう。ほわんほわんほわ~ん。




