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ティエスちゃんは中隊長  作者: 永多 真澄
ドキドキ! 決斗編

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109/220

4-40 ティエスちゃんはエルフの長老とお茶会?⑤

「やぁやぁ、よく来たね賢狼の。さあそちらに掛けたまえよ。今お茶を出すからねぇ」


 エレベーターを降りて複数のチェックゲートを抜けた末、ついにエルフの長老とご対面したティエスちゃんだ。長老とはいえその見目は若々しく、ヒトで言えば20代そこそこの娘に見える。これもエルフという氏族の特性で、死ぬほんの数年前までは若い姿を保つのだ。サイヤ人かてめーらは。

 であるので、見た目に騙されると痛い目に合う。この目の前の女も、長老の任についているからには齢300歳以上の古木であることは疑いようもない。しかし堅物と聞いてたわりには気安い雰囲気があるな。

 俺たちが促されるままに着席すると、それまで何も置いていなかったテーブルの上にポンとティーセットが出現する。エルフ流のアイスブレイクといったところか、なるほど魔法に秀でた氏族だけあって見事なものだ。まあ俺もできるがねこれくらいはね。


「小難しい話をする前に、まずは喉を湿らせておかないとね。わたしがエルフ長老のウィエル・スプリット三世(サード)だ。今日はわざわざご足労だったね」


 遠慮せずに飲みたまえ、と茶を勧められたので、遠慮なくいただく。まずは香り。森域特有の梅昆布茶ではなく、どうやらこれはハーブティーだな。ジャスミン的な香りが鼻腔を抜けるぜ。清涼感っていうの? せっかくだし味も見ておこう。うーんマンダム。結構なお手前で。俺が頷くのを待って、姫とミッティもカップを手にした。


「此度は急な会談の申し入れにも関わらずご快諾くださり、感謝しますウィエル様。あらためまして、リリィ・ル・リン・レイフィールです」


「そう畏まることもないさ、レイフィールの名を継ぐもの。我々は三神を祀る者同士、いわば兄弟のようなものだろ?」


「過分な、お言葉です」


 姫が深々と頭を下げる。ウィエルはそれを上げさせると、こちらのほうに思わせぶりな視線を投げる。なんだァガンつけてんじゃねェーぞ? 俺は威嚇した。


「そう怖い顔をするなよう。フェンヴェールの名を冠するからには、もう少し品ってものをわきまえてほしいね。簒奪者の末裔」


「それは公的な発言ととってよろしいので? ――フェンヴェール王国エライゾ領が領主スゴスギル・エライゾの名代、ミッティ・エライゾですわ。どうぞお見知りおきを」


 みしり、とミッティのこめかみに血管が浮かんだのを幻視する。ヒョエー急にヘイトスピーチ投げてくんじゃねーよ野蛮人(エルフッパリ)がよー!

 しかしいつもの間延びした感じはおくびにも出さず、凛としてエルフの長と相対する姿は迫力があるな。さすがは根っからの貴族、ブルーブラッドって奴か。俺みたいな成り上がりものには出せないオーラみたいのがあるよなぁ。

 ちなみに簒奪者云々というのは、「フェンヴェール王国の起源(ルーツ)はエルフにこそあり」という歴史観に基づいた発言である。舐めてんのかオイ。むろん王国にはそのような事実を示す歴史資料は何もないし、よしんばそれが真実だったとして、政争にも戦争にも負けて森に引っ込んだ連中が後からぐちゃぐちゃ言ってんじゃねーという話である。カーッ、女々しかばい! この世はしょせん弱肉強食、力こそがパワーなのだ。


「まさかまさか。ただの質の悪いジョークだよぉ。場を温めるには丁度いいかと思ってさ」


「温めるどころか沸騰してねーか?」


「オイ!」


 ぼそりと呟いた俺に、エルヴィン少年が律儀にも小声でツッコミを入れる。本当にツッコミ役が板についてきたな。ミッティはというとこちらの放言をとがめる様子はない。まぁ相手も冗談だって言ってるしね。多少はね。

 ちなみに姫は急にバチバチ始まった応酬に冷や汗をかいている。そういうところがまだ若いなって感じ。立派な為政者はこういう時こそしれっとしてねーとな。

 しかしエルフの長老、食えねー女だぜ。そんな女は次に何を思ったか、視線をエルヴィン少年にむける。しかし、なんだこの、なんだ? あの生温かい目は。エルヴィン少年もそれに気づいたのか、身を縮こまらせた。


「チッ気持ちわりー目をしやがる」


「アンタのたまにする目もあんな感じだよ」


 縮こまりながらもエルヴィン少年。うっそぉ~~。俺はちょっとショックを受けた。

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