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ティエスちゃんは中隊長  作者: 永多 真澄
ドキドキ! 決斗編

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4-37 ティエスちゃんはエルフの長老とお茶会?②

「ところでライカ君よ。お前運転手とかやってていいのか? 賢狼王統軍の旗印だろ。代わってやろうか?」


「必要ない。要らん気を回すな」


 にべもなく言われて白けるティエスちゃんだ。現在ライカ君の運転する車でエルフの居城に向けて移動中。ライカ君が運転席で、俺は助手席だ。運転室とキャビンは仕切りで区切られているので、今はライカ君と二人っきりだね……♡。キャビンで高貴なおねーさんたちに囲まれているエルヴィン少年の姿を鑑賞できないのは残念だが、まあ仕方ない。キョドキョドになってるエルヴィン少年とか絶対面白いだろそんなの……見たかったぜ。でも今は仕事が優先だからな。仕方ない。

 ライカ君は相変わらず俺に対してはつっけんどんな態度をとっている。まぁ好きな子に素直になれない思春期の中学生みたいなもんだろう。照れちゃってぇ。なんか実年齢も15そこららしいしな。そんなことを考えながらライカ君を眺めていると、すっげぇ白い目で見られた。なんだよぅ。


「……また余計なことを考えているんだろう。もう少し職務に対して誠実にはなれないのか」


 おっと、予想外。今までで一番長い会話じゃなかろうか。俺はちょっとうれしくなった。確かに俺は余計なことばかり考えているが、ライカ君がそれを察せるほどには仲良くなったと考えてもいいんじゃなかろうか。


「俺ほど仕事に対して誠実なやつは、王国中を探し回ったって他に5人といねーよ」


「ふん。それが本当だと仮定したところで、どうして王国が国体を保てているのか、はなはだ疑問だ」


「ま、それだけ王国人は優秀ってことさ」


 俺がけらけらと笑うと、ライカ君は本当に小さくため息をついた。アホらし、ってなもんだ。それでも冗談のラリーが一回は続くようになったわけだから、これは態度が軟化してるといってもいいんじゃないかな。

 しかし会話はそこで終わってしまった。俺の打つ球は全部スマッシュ級だからな……ライカ君も受けそびれることもあるだろう。俺は気にしないことにして、車窓を流れる森域統合府の風景を眺める。深緑の森に溶け込むように乱立する木造高層建築物の群れは、前世(むかし)の知識があるだけに異世界を強く感じさせる。建築基準法とかどうなってんだろ。

 ともあれ、新興都市ならではの雑多さは、それはそれで一種の調和というか、風情のようなものを生む。そこには確かに数多の生命が息づき、発展を続けてきた繁栄の象徴だ。そんな風景もしばらくののちには見納めになると思えば、少しばかり残念にも思う。ここ統合府は、間違いなく激戦地になるだろうからな。

 そんなふうにしてちょっとおセンチな気分になっていると、沈黙を破ってライカ君が口を開いた。


「……あんたの人格についてはさっぱり信頼できないが、その能力の優秀さについては、信頼している」


「おっどうした急に。愛の告白か?」


「そういう酷薄なところが信頼できないんだ」


 失礼な、俺ほど情に篤い女はいねーぞ。見下げ果てた軽蔑の視線を一瞥くれたライカ君はまた市も小さくため息をついた後、言葉を続けた。


「にしてもどうしたよ急に。今まで碌におしゃべりしてくれなかったってのによ」


「あの時の礼、言わないままでいるのは座りが悪かっただけだ」


「あの時って―と、市場の襲撃ン時のことか?」


「……ああ」


 ライカ君がそこはかと苦虫を噛む。まぁ確かにあの時は俺とオティカだけで自立強化鎧骨格兵をせん滅しちまったからな。姫の第一の騎士として護衛の任についてるライカ君にとっては、ただ何もできず守られているだけという状況には忸怩とした思いもあるだろう。5体ほど残しといてやればよかったかもな。まぁ勝てたかはわからんが。


「あの時、俺は何もできなかった。よしんば何かできていたとして、あの連中に勝てたかといえば、おそらくそれも無理だっただろう。俺は、あんたやあいつほど、強くない」


「そう悲観的になるなよ。彼我の戦力差を見極められるってのは、才能だぜ?」


「気休めはよせ」


「気休めなもんか。あそこで下手にライカ君が動いて、下手に怪我でもしてみろ。危うく今日の運転手がいなくなるところだった。ライカ君は最善の行動をしたんだよ」


 ライカ君は押し黙った。自分の強さを客観視できるやつ、マジで有能だからな。俺だってたまに目算を誤ってひどい目にあうほどだ。それに。


「それに、もし姫とライカ君しかいない状況だったら、無理を承知で剣を抜くんだろう?」


「もちろんだ」


 即答である。なら結構じゃねーか。


「その意気があるんなら気にするこっちゃねーよ。それでも強くなりたいんだったら、俺かオティカで稽古をつけてやってもいいぜ。なあ、オティカ」


「……呼んだか」


 助手席の窓の上から、ぬっと機械的な頭が現れた。オティカである。なし崩しに協力関係となったこいつには、現在車の屋根の上で警戒に当たってもらっていた。もちろん姿は俺が光学迷彩で隠してるぞ。強化鎧骨格ってのを抜きにしても車の屋根に人が乗ってたら怪しすぎるからな。その辺は抜かりない。ライカ君がちょっとびっくりして少しだけ車が左右に振れた。安全運転! ちなみにオティカは振り落とされることもなくしれっとしている。


「遠慮しておくっ!」


 ライカは気恥ずかしさを隠すように少しだけ語気を荒げると、それいこうはむっすりと黙り込んでしまった。ざんねん。

 そうこうしているうちに、車はエルフの居城に到着した。さあて、これからが大変だぞ~~。

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