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FPSゲーム『Vertex』

作者: 結城 刹那


 1


 会場に集まる大勢の観客が歓声をあげる。

 ヘッドホンを外した二人は互いに顔を見合わせ笑顔を作る。

 長い道のりを歩んだ彼と彼女はついに高みへと上り詰めた。


「優勝はチーム『Asterios』!」


 2


「店長、品出し終わりました」


 バックヤードに入ると、恭弥はすぐさまエプロンをとった。


「ありがとう。悪いね。残業で品出しなんかお願いして」


 店長である大熊は顔だけこちらへ向けて感謝する。粗末な返事だが、腰痛持ちの彼には精一杯の対応だった。


「鏡くんは流石だね。誰よりも品出しが早いよ。ほんと要領がいい」

「店長の品出しを見てコツをつかんだんで、店長の腕が良いんですよ」

「褒め上手だね。そういえば、今日実家から米が届くんだ。次来た時にお裾分けしてあげるね」

「助かります。母さんも喜ぶと思います。じゃあ、お疲れ様でした」

「お疲れ」


 会話しながらも流れるように着替えと片付けを済ませる。バッグを背負って裏口から出ると駐輪場に停めた廃れた自転車に乗った。小学校から使っているためサドルを一番高くしても踵が地面につく。不格好だが仕方ない。自転車を買う余裕は鏡家にはないのだ。


 ペダルを踏み込み、コンビニを後にする。錆び付いた鉄の摩擦音を聞きながら走ること十分ほどで自宅のアパートに辿り着いた。指定の場所に自転車を停め、一階の隅にある自室のドアを開ける。


「おい、ちょっと将也は!? ちっ、切りやがった」


 中に入ると母である響華の怒号が耳に響く。彼女は換気扇の下で喫煙しながら電話をしていた。将也と言ったことから彼女の弟関係の電話だろうと恭弥は思う。


「なんだって?」


 沈黙する響華に喋りかけると、彼女は強面な形相で恭弥を見る。何度も見てきた顔のため驚くことはなかったが、この顔は悪いことが起こった時にするため不安を抱いた。


「あの野郎、借金を払えず逃亡したらしい」

「へー、いくらなの?」


 靴を脱ぎ、部屋に入るために響華の後ろを通る。


「一千万だとよ」


 だが、響華が口にした金額に思わず足を止めた。

 互いに顔を合わせず、無言の沈黙が室内に漂う。


「マジ?」

「マジだ。あいつが逃亡したから私のところに来やがった」


 帰って早々に聞かされた悪い知らせに、頭にあった米の件は吹き飛んでいた。


 3


「大変なことになったね」


 翌日、恭弥は親友の綾人とゲームセンターに行った。二人はここのシューティングゲームでよく遊んでいる。ステージをクリアすれば無償で次のステージをプレイできるためコスパが良いのだ。難易度はかなり高いが、コツさえ掴めば簡単だ。要領のいい恭弥には相性がいい。


「まったくだ。どうしたものか」


 全ステージをクリアし、銃を元あった場所にしまう。バイトで稼いだ金のほとんどが家計に消えていくため一回プレイで終了だ。綾人が別のゲームを始めるのを恭弥はソファーから眺める。


 ふと奥にあったスクリーンへと目がいった。

 そこには『eスポーツ全国大会開催』という文字が記載されていた。何気なく見ていた画面だが、次に浮かぶ文字に恭弥は目を剥いた。

 

「優勝賞金一千万」

「何見てるの?」


 無我夢中でどこかを見ている恭弥が気になったのか綾人が彼の元へと駆け寄る。


「俺、eスポーツの大会に出ようと思う」

「どうしたの急に?」

「優勝賞金一千万だぜ」

「でも、相手はプロだよ。未経験の恭弥が勝てる相手じゃないよ」

「宝くじでの運任せよりはマシさ。ゲームでの実力の方が俺としては勝てる可能性が高い」


 中学時代、学校で一番強いと謳われていた男子をたった二日でボコボコにした恭弥には未経験という言葉は無意味に等しかった。


「eスポーツの練習できる場所ってなかったか?」

「駅前にeスポーツカフェがあったと思うけど」

「よし、そこに行こうぜ」


 4


 平日夕方のeスポーツカフェは程々に混んでいた。

 空きがないわけではなかったので二人は受付表に名前を記入して入場を済ませる。


「絶対に元を取り返す」


 PC前に座ると恭弥は活気に満ち溢れた様子でマウスを持つ。利用料で取られた二千円を無駄にするわけにはいかなかった。


「恭弥はまずアカウント作成しないと」

「アカウント?」

「知らないの……よくそれで全国大会優勝とか言ったね。ちょっと貸して」


 早々マウスを綾人に奪われる。彼は慣れた手つきで画面を操作し、ゲーム画面を起動する。普通のスポーツと同じくeスポーツにも種目が存在する。二人はFPSゲーム『Vertex』をプレイすることにした。FPSであれば、普段からゲームセンターでやっているため慣れが早いと思ったのだ。


 アカウント作成を終え、ゲームをプレイ。最初は個人戦で基本的な操作を覚える。

 Vertexの特徴はNPCが複数体いることだ。彼らの攻撃を掻い潜りつつ、敵を殲滅しなければならない。オンライン対戦のため恭弥や綾人以外にもプレイヤーがいた。


 始まりの合図があってすぐ恭弥は最初の位置で基本操作を試みる。

 移動方法、装填の仕方、ピントの合わせ方など一通りの操作を行った後に移動し始める。


「あっ……」


 しかし、移動してすぐ射たれて死んでしまった。死角から現れる一人のプレイヤー。それはNPC。恭弥はゲームの作り物に殺されたことにムッとしながらヘッドホンを外した。横では綾人が華麗な手捌きを見せる。彼はVertexを何度かプレイしたことがあるようだ。


 恭弥は綾人の操作と画面を交互に見る。どのようにして彼がうまく相手を否しているのかを確認する。無意識に口笛を吹いてしまっていた。

 一ラウンド目が終了。綾人の一人勝ちとなった。恭弥はヘッドホンを付け直し、次のラウンドに臨む。


 綾人のやり方を真似て敵を倒していく。先ほどの貧弱なプレイが嘘のように上手くこなしていった。二ラウンド目が終了。綾人と恭弥を含めた三人が残った状態で時間切れとなった。


 最終ラウンド。恭弥は先ほどと同じようにプレイしていく。動く途中で綾人と対峙。互いに一歩も譲らない攻防。勝負を制したのは恭弥だった。綾人のプレイを見ながら彼以上の実力を短時間でつけたのだ。そのまま恭弥の一人勝ちとなる。


 最終ラウンドを終えて、恭弥と綾人が同率一位となった。


「流石だね。三戦で抜かれるなんて恭弥相手だとやってられないよ」

「こっちは借金返済のために命かけてるからな」

「ねえ、君」


 二人で話していると後ろから声がかけられる。見ると同年代と思える可愛らしい女性がこちらを見ていた。


「あんた誰だ?」


 そう問いかける恭弥に対して、答えは横にいる綾人から返ってきた。


「ゲキツヨ三銃士のクロウだ」


 5


 ゲキツヨ三銃士。プロゲーマーでありながらゲーム実況をしているインフルエンサー三人組。二人の前にいるクロウはメンバーの一人だ。


「それじゃあ、始めるよ」


 クロウがひとりでに呟く。その横で恭弥と綾人は画面を注視する。

 彼女の提案で一緒にプレイすることとなった。なぜ彼女が自分たちを誘ったのかは分からないが、プロが相手になってくれると言うのなら乗らない手はない。


 いずれ戦う相手の手の内を今から知ることができるのだ。こんなチャンスを見逃せないと恭弥は考えた。だが、彼の想像以上にクロウの実力は半端じゃなかった。

 全てのラウンドでクロウの一人勝ち。誰も彼女を止めることができなかった。


「もう一回!」


 悔しさが込み上げた恭弥は再プレイを提案する。クロウは悩むことなく「良いよ」と承った。しかし、何度プレイしてもクロウには勝てない。現実世界における熊のように遭遇したら確実にやられる。


「クソッ!」


 十回ほどのプレイを終え、完膚なきまでに叩きのめされた恭弥は思わず机を叩く。席を立ち上がり、受付の方へと歩いていった。


「帰っちゃうの?」

「ちげーよ。ドリンクを注いでくるだけだ」


 クロウに一言置いて受付横にあるドリンクコーナーで炭酸を注ぐ。

 綾人は門限のため一足先に帰ってしまった。恭弥は母親に連絡し、夜遅くなることを告げてカフェに残る。このまま負けて終われるわけがなかった。


 ドリンクを飲み終えると自分の席へと戻っていった。クロウは恭弥が休んでいる間もゲームに没頭する。チャットで繋がって猛者たちの集まる専用の部屋でプレイしていた。

 恭弥は椅子に腰掛けながらクロウのプレイする様子を覗く。全てのラウンドでクロウに負けたとは言え、恭弥も残り二、三人になるまでは戦うことができていた。


 だから一度冷静になって遠くからクロウのプレイ姿を見ることはなかった。

 状況ごとにおけるマウスやキーボードの操作方法。彼女がどこを見てプレイしているのかを恭弥は見学する。


 全てのラウンドを終え、クロウはヘッドホンを置いた。


「どうする? やる?」

「ああ。このままじゃ終われない」


 恭弥は改めてヘッドホンをつける。クロウは恭弥の様子を見て、笑みを浮かべるとヘッドホンを付け直す。休憩を終えた最初のラウンド。恭弥は先ほどのクロウの手捌きを脳裏に浮かべながら操作する。


「こういう感じか」


 誰にも聞こえない声でボソッと呟く。程なくしてクロウのキャラと対峙した。

 今までは対峙してから数秒ほどで撃沈された。だが、今回は互いに引けを取らず、撃ち合いになる。最終的には他のプレイヤーがやってきたためクロウが撤退した。


 結果、クロウと恭弥の二人が残る形で時間切れとなった。

 続く第二ラウンドはクロウのひとり勝ち。最終ラウンドは再びクロウと恭弥が生き残って終わった。


「畜生っ! 勝てねー!」


 第一ラウンドで調子に乗ったのが仇となった。もっと慎重に行けば良かったと恭弥は後悔する。


「君、面白いね」


 対してクロウは彼を二度も倒せなかったことに悔いる様子はなく微笑んでいた。その余裕さが恭弥の気に障った。だが、次の言葉に彼は驚愕する。


「ねえねえ、私と一緒にチーム組まない?」


 6


「よっす」


 翌日。恭弥は昨日と同じようにeスポーツカフェへとやってきていた。二日連続で二千円を使うことに罪悪感を覚えるが、一千万円を獲得すれば問題ない。


「昨日ぶり。早速始めようか」


 今日も恭弥はクロウと二人でVertexをやることになった。

 昨日受けたクロウからの誘いを恭弥は秒で承諾した。プロとチームになれるのだ。賞金を目的としている恭弥にとってはこの上なく有益な提案だった。


 しかし、期待はずれだったことがあった。

 ゲキツヨ三銃士は現在解散をしており、クロウは単独とのこと。チームはあくまで恭弥とクロウのタッグ。それでも断らなかったのはVertexにおける大会のルールが二人チームだったからだ。


「それにしてもなんで解散したんだ?」

「喧嘩しないため。二人チームは今回からの仕様なんだ。三人から二人選ぶのは酷だから解散になった」

「だからペアを探してたのか」

「そっ。でも、あれは解散なんかじゃなかった。他二人は解散してからまたチームを組んだのよ」


 クロウの怒りを沸かすような物言いに恭弥はヘッドホンを耳につける動作を止めた。


「解散は一人がハブられないようにするためじゃなかったのか?」

「私もそうだと思ったわ。でも、彼女たちの目的は穏便に私をハブることだったのよ」

「ひどいな」

「だから私は大会で彼女たちに勝って報復してやるの。さっ、始めるよ」

「了解」


 二人揃ってヘッドホンをつけ、Vertexをプレイする。最初はチーム戦ではなく、個人戦で戦うことにした。恭弥の適応スキルの高さを生かしてクロウの持つ全ての技を恭弥に食らわせる目論見だ。


 恭弥はクロウの動作を盗み取り、プレイスキルを上げる。彼の技能がある程度向上してからチームとしての連携を作り上げていく形で練習することとなった。


 県予選開催の1ヶ月間、恭弥はクロウの指導の元、必死にプレイし続けた。


 7

 

「おい……マジかよ……」


 県予選当日。現地集合でクロウを出迎えた恭弥は絶句した。

 急遽電話で遅れると連絡があったものだから何事かと思ったが、想像以上に大惨事だった。恭弥はクロウの左手に巻かれた包帯を凝視する。


「ホント困ったよ。いきなりおばあさんがバランスを崩して倒れるもんだから」


 どうやら、駅の階段で転がってきたおばあさんを受け止めようとして手を痛めたらしい。動かせるが、痛みで動作が遅れるだろうとのことだった。


「でも今回で良かったな」

「どうして?」

「これが本選だったら、あいつらに報復できないだろ?」

「……私がこの状況でも、予選は通過できると?」

「当たり前だ。ここで躓いてたら、優勝はほど遠い」

「頼もしいね」


 だが、恭弥の言うとおりだ。この県は前回の大会で一回戦負けを果たしている。しかも対戦相手は二回戦負け。つまり、県の中では下から数えた方が早い順位であるのだ。予選で手こずっているようではとてもじゃないが本選で敵うはずもない。


「でも、ルール変更でチームの実力は変わっている。気は緩められないよ」


 受付へ行くとクロウが登録を済ませる。

 恭弥はガラケーしか持っておらず、カフェ以外ではネットに繋がれないため大会の手続きは全て彼女が行っていた。


「チーム『CoW』ってどういう意味だ?」

「通称『Cry of Weaker』。弱者達の叫び。格好良くない?」

「そういうことか。てっきり牛かと思った」

「牛? 何が?」

「CoWだよ。日本語で牛って意味」

「あー。そうとも言うねー」

「知らないのか? 中学一年で習うぞ?」

「うるさいな。常用語以外は忘れた。まあ、闘牛ってことで」

「適当だな」


 受付を終え、二人はそのまま会場へと足を運ぶ。大会が始まるまでは会場にいるプレイヤーの様子を伺うことにした。


 8


 大会が開かれ、二人は着々と勝ち進んでいった。

 手を怪我したとはいえ、元々の実力が高いクロウには関係がなかった。


「多分彼らが今大会の優勝候補だね」


 二人で観覧モニターを眺めながらクロウが感想を漏らす。

 チーム『Wither』。彼らの実力は申し分なかった。個々の技術はもちろんのこと二人で協力する際にもきちんと連携が取れている。


 ワニのように付き纏い、逃げようとしても離さない。戦う場所をうまく誘導し、一人を撃沈したらすぐ残りの一人を挟み撃ちにするというのが必勝パターンのようだ。分かっていても止められないのはマップに敵の位置が反映されないため。片方、または両方、耳の効くプレイヤーがいるのだろう。


「おそらく決勝で当たるのは彼らかな。心してかかった方がいいかもね」


 クロウの言葉に恭弥は耳を傾けなかった。さっきからずっと画面を見続けている。クロウは無視されたことを気にすることなく、ただただ笑みを浮かべて画面に集中した。


 そして、クロウの予想通り、決勝は『CoW』VS『Wither』となった。


 9


 決勝戦は波乱の幕開けとなった。


「恭弥、すまない」


 隣にいたクロウが苦渋の叫びを上げる。

 今まで一対一の攻防を仕掛けてきたWitherはここに来て戦略を変えた。最初に降り立った離れた位置から互いに合流し、クロウに攻撃を仕掛けてきたのだ。


 クロウは二人に対して持ち前のスキルで善戦したが、手の痛みによる操作遅延と決勝相手二人の連携によりあえなく敗北した。


 画面を見ながら彼女は反省する。

 よく考えれば、プロ級の腕を持つクロウに対して一対一を仕掛けるはずはなかった。自分の手が痛んでいたことによる戦闘力減少がそうなることを錯覚させてしまっていた。


 後悔しても意味がない。今はもう恭弥に任せるしかないのだ。

 クロウはふと横目に彼を見る。恭弥は画面を見ながらマイクで「あとは任せろ」と小さく呟いた。


「クロウを倒せばこっちのもんだ」

「この勝負もらったな。優勝は俺たちで決まりだ」


 Witherの二人は余裕の笑みを浮かべた。クロウが敗れた今、残っているのは名の知れないプレイヤー。技術力はあるが、連携すれば倒せない相手ではない。二人は離れることなく縦列でステージを走っていく。


 恭弥もまたステージを駆けていく。

 画面左上に写っていたクロウの画面を映すモニターを指標に彼らの行動域を探る。

 状況を自分にとって有利にするためには先手必勝が必要になる。だが、一つだけ問題点がある。


 それは片方にプレイヤーの足音を探ることができる耳の持ち主がいること。

 現在、恭弥も彼の模倣をするために足音を確認していたが、クロウの言うとおりNPCとプレイヤーで足音が微妙に違う。いや、キャラごとに違うと言うのが的確だ。


「さて、どうするかな」


 ステージを慎重に動きながら足音を確認する。

 クロウが敗れたのだ。下手に離れて一人がやられて一騎討ちになるなんて馬鹿な真似はしない。二人一緒に行動し、遭遇した段階で挟み撃ちにしてくるはずだ。


 そうであれば重なった足音を重点に耳を傾ければいい。

 こちらはゆっくり歩いてできる限り足音を消す。大会の仕様上、タイム制限はないため思う存分戦える。


 慎重に歩く最中、目の前から大きな足音が聞こえる。敵が来た合図だ。


「GO」


 恭弥は躊躇なく壁から出て行き、銃を向ける。

 ふと目の前に映る二人組。彼らに銃を乱射しながら壁に隠れていく。しかし、攻撃はうまく当たらなかった。


「しめた!」


 相手の一人が横へと逸れると一気に駆けていく。挟み撃ちにする作戦だ。恭弥は目の前にいる敵に向かって突進する。


「血迷ったか」


 すごい勢いで迫りくる恭弥に止まった相手が銃を乱射。恭弥はすれすれで銃を交わしながら走っていく。ここで勢いを止めれば迫りくる弾にやられる。

 相手は乱射しながらも疑問を浮かべた。近くに来て撃つとしても今の状況では彼の弾が先にあたる。逃げる選択か。ただ、そんなことをしてもどうにもならない。


 迫る恭弥に男は乱射を続ける。続けることが最適解だと踏んだのだ。


「恭弥、マジか。この1ヶ月でプロ顔負けなほどに化けたね」


 クロウは恭弥の画面を食い入るように覗いた。

 恭弥の画面にはしっかりと写っていた。敵プレイヤーの背後にいるNPCの姿を。

 NPCが敵を背後から着弾。その瞬間に素早く方向を切り替える。自身の背後から現れるもう一人のプレイヤーに向けて銃を撃った。


 終了を告げるアラームが鳴る。

 画面には勝利チームの名前が表示され、アナウンスがチームの名前を上げる。


「優勝はチーム『CoW』」


 恭弥は一息ついた。彼は足音でキャラクターを識別し、敵の位置を探るだけではなく、NPCを含めた全員の位置を探っていた。この1ヶ月で手にしたのはスキルの向上だけではない。NPCの動き、ステージの構築。あらゆるものを詰め込んだのだ。


 NPCすら味方につける。まさに化け物じみた技を彼は見せたのだ。


「「マジかよ……」」


 勝利を確信していたWitherはヘッドホンを外すことすらできないくらい放心していた。

 彼らのことなど気にせず、恭弥とクロウは互いにハイタッチして見せた。

 

 10


「流石だね。私の目に狂いはなかった」


 帰り道。クロウは恭弥を称賛した。


「言ったろ。予選で躓くわけにはいかないって」

「そうだったね。ねえ、恭弥。本選が終わってもこのままチームを組まない? 君とならどこまでも行けそうな気がする。世界すらもね」

「ん……まあ、金が手に入るなら家計にも助かるからな。いいぜ。でも、それなら名前は変えようぜ」

「何に?」

「チーム『Asterios』。俺たちは弱くなんかない。誰の手にも負えない凶暴な牛。それが俺たちだ」

「はははっ。牛要素は残すのか。でも、悪くはないね」

「決まりだな」


 恭弥とクロウは歩きながら互いに拳を突きつけ合った。

 二人の優勝を祝福するように、夜空には綺麗な星(Asterios)が輝いていた。

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