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9 エスコート相手

 入学をして早くも二週間が経過していた。


 授業は順調にこなしている。


 カインツの件以来、平和な学校生活は続いているものの、遠巻きにはされ続けていた。


 友だちが一人もできなくても、これまでだって親しい人は誰もいなかったのだからめげるようなことでもない。


 ただやっぱり義兄たちの反応に、ロザミアは戸惑う日々を送っていた。


 義兄たちはことあるごとに話しかけようとしてくる。


 ようとしてくる、というのは、話かけられる前にロザミアが逃げ出しているからだ。


 この一方的に距離を詰められることに、小動物並みに怖れを抱かずにはいられない。


 それでもやっぱりまだドキッとする。無論、悪い意味で。


 休み時間はクリストフ、ネヴィルどちらか一人と必ず遭遇し、授業の時にはロザミアになぞの微笑みをそれとなく投げかけてくる。


 もちろん授業で優遇されたりはしないが、誰も答えられない質問や、難易度の高い実技に関してはロザミアを必ずと言っていいほど指名し、成功すれば褒めてくる。


 もうすっかり、ロザミアの存在は悪目立ちしすぎてしまっている。


 王国で指折の将軍と使役者を兄に持つ、公爵家の末っ子。


 孤児だったり、狂犬と呼ばれなくなったが、それでもロザミアを見かけた生徒たちがコソコソと何やら囁きあっている光景は最早、日常である。


 ――お義兄様たちが何を考えてるのか全く分からない……。


 少なくとも悪意をもっていないのは分かる。


 というか、以前からだって悪意をもたれていじめられていたわけではない。


 稽古や勉学の時以外は無視、これが基本。


 今さらその罪悪感に駆られたとは考えにくい。何のきっかけもないからだ。


 ――……もしかして私が過剰に反応しすぎ? 素直にお兄様たちの好意を受け入れるべき?


 でも十年だ。十年という長い時間をなかったことにはできない。


 ――どうしたらいいのよぉぉぉぉぉ!


「――ロザミア」


 はっとして顔をあげると、担任と眼が合った。


「頭を抱えているところ申し訳ないが、連絡事項を説明してもいいかね?」

「……は、はい」


 ロザミアはうなだれながら頷く。


「今週末、新入生歓迎を兼ねたダンスパーティーが舞踏会場で行われるが、全校生徒が集まるから、お前たちは上級生の方々に迷惑をかけぬよう節度ある対応を望む」


 ――歓迎でわざわざ舞踏会を開くなんて……って、舞踏会!?


「エスコート相手が外部の者の場合には事前に申請を出しておくように」


 血の気が引くというのはこういうことか。


 舞踏会においてエスコート相手は必須。


 未婚で、婚約もいない貴族の場合、エスコート役は父親、もしくは兄弟。


 どれだけ急いでも、ぼっちであるロザミアが婚約者を見つけられるはずもない。


 ――お義父様にお願いを……?


 いや、イスケスも兄たちと同じく、ロザミアからしたらお近づきになりたくない人である。


 ――そうだ。舞踏会を休んだら? そうよ。歓迎の舞踏会と言ったって、必ず参加しなければいけないものじゃないはず!


「舞踏会には全員参加必須だ。なにせ、今回の舞踏会には皇太子殿下が特別にいらしてくださるからな!」


 ――……終わったわ……。


 もう一度頭を抱えた。

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