牢屋
僕は気づけば牢屋の中にいた。
おかしい。ここ数年の記憶を思い返しても牢屋に入れられるような犯罪なんか犯していない。それどころか人の悪口さえも言ったことがない。どうして僕が?その思いでいっぱいだった。
僕は硬い木の椅子に座っていた。目の前にはやたら背の高い木のテーブルが置かれて、何やら文字の書かれたシールが貼ってあるようだった。
混乱しながら周りを見ると、同い年くらいの男女らが同じような服を着て同じように椅子に座っていた。結構多いぞ。3,40人はいる。周囲と雑談をしてる奴もいたが、強張った顔つきの奴も多かった。僕も誰かに話しかけようかと思ったとき、コツコツという鋭い響きと共に看守らしき女性が牢屋に入ってきた。牢獄は静まり返り妙な緊張感が立ちこめた。看守は話を始めた。しかし状況の飲み込めない僕には耳を傾ける余裕はなかった。なんてこった。ここは本当に牢屋だぞ。こんなとこに何年もいるのはごめんだ。一刻も早くここを出ないと....
看守が話終える頃には僕の決意は固まっていた。模範囚となり仮釈放を勝ち取る。やってやる。僕ならできる。
以後、僕は模範囚としての生活を送っていった。すれ違う看守には挨拶を欠かさず、言いつけを守り、率先して行動すした。囚人同士のコミュニケーションも大事だ。定期的に入れ替わる囚人たちと交友関係を保ち、時には喧嘩の仲裁をすることもあった。朝は早く来て、トイレの掃除をした。
思えば全く牢屋らしくない牢屋だった。薄暗くてカビ臭い殺伐とした牢屋のステレオタイプとは真反対。左の壁は大きな窓が連なっていてとても明るいし、ご飯は美味しいし、体罰なんかもない。牢屋にしては当たりかも?
しかし、あれから6年。ついに僕は日頃の行いが認められ、ここを出れるらしい。やっとだ。やっとこの悪夢が終わるんだと思うと不思議と感傷的な気分だ。
会うことが最後になる看守も妙な顔して僕のことを見ていた。看守は長々と何かを話したあと最後にこう言った。
「卒業おめでとう」




