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勝率は5割

ここからが物語のちゃんとした最初ですʔ•̫͡•ʔ

説明が多めですが、どうぞ

「まさか、親友が4人いたとは誰も思わないだろうね。」


 アスライト王国、その王が住まう王城の中。王族の私室のひとつで、2人の少年がチェスをしていた。

 ふわふわとした金髪に、暖かな橙色をした瞳を持つ少年が白いポーンをひとつ前に動かす。


「あぁ、建国物語の。普通に考えて親友が4人って多いよな。でも、正確な人数を明言はしてないから嘘でもないだろ。」


 さらさらとした黒髪に、冬の空のような水色の瞳をしたもう一人の少年が、すぐさま黒のナイトを動かす。


「きっと、当時はだいぶ揉めたんだろうね。親友として功績を讃えたい国王と、」

「存在を知られたくない親友の一人。」


 話をしつつも、駒を動かす手は止まらない。部屋の中には、二人の声だけが響いている。


「その妥協案が、親友の数をあえてぼかして広めること。これなら、一部の人間には真実を伝えられるからね。」

「そして、その他大勢にはいないものとできる、と。実際、1番広まってる絵本には親友は3人しか出てこない。」

「そういうこと。流石キル、よくわかってるね。」


 キルと呼ばれた少年が、呆れたようにため息をつき相手の方を見遣った。


「褒めても、変える気はないぞ、カイ。チェックメイトだ。」


 見れば、白のキングの進む場所はもうない。黒い駒に囲まれていた。


「うーん、残念。これで君が一勝多くなったね。」


 そう言い、微笑みながらカップを持ち上げたのは、クロムカイト・アスライト。この国、アスライト王国の第二王子である。


「思ってもないくせに。で?突然建国物語なんて話しはじめて、何が言いたいんだ?」


 その王子に遠慮もせずお菓子をつまみ、訝しげに眉を上げるのは、キルクライン・ドクルハイト。ドクルハイト侯爵家の五男、末っ子だ。


「いや、やっぱり血って繋がってるんだな〜って。」

「まぁな、確かに家族全員目立つの苦手だし。」

「そうじゃなくて。君のこと。だって、隠密術も組織のことも誰にも教わってないでしょ?なのに、こうして誰にもバレずに王城に忍びこんでる。才能がないとは言わせない。」

「……陛下と父上、ハクノとかにはバレてる。」

「それはわざとでしょ。あの時まで、ここに来てたのもバレてなかったと思うよ。それに、バレたと言ってもきっと実力があることだけだ。」

「……。」


 キルの生まれであるドクルハイト家は、国の闇、仄暗い部分を担う『組織』をまとめる役割を代々受け継いでいる。

 建国物語で語られることのないもう一人の親友とは、キルの先祖にして、初代国王を裏から支えた人物なのだ。


 ドクルハイト家では普通、ある一定の年になると『組織』について教えられる。そして、隠密として必要になる技術を幼い頃から習得していくのだ。

 その為、あまり知られていないが、家系全体がとてつもない戦力となっている。


 しかし、キルはそういったことを1つも()()()習っていない。末っ子が可愛くてしょうがない両親や兄弟が、それらの一切を明かさなかったのだ。

 そして、国の闇とはかけ離れた、第二王子の側近候補という表の世界での立場を与えた。


 にも関わらず、キルは自力で家の秘密を暴き、その技術を書物を頼りに身につけてしまった。最初に発見したのには、運が良かったのもあるし、技術の習得に関しても家の教育が特殊なのもあるが、それでも才能があったと言わざるを得ない。

 ちなみに、ハクノとはドクルハイト家の執事で『組織』の幹部である。


「ふふっ。照れてるの?」

「うるさい。チッ、今日はもう帰る。」

「あぁ、じゃあまた明日、学園で。」


 椅子から立ち上がると、カップのお茶を飲み干す。ふと目をつむると一瞬でその場から姿を消した。


「魔法陣すら見せない静かで速い転移魔術。才能がない人ができるわけないだろうに」


 王子の呟きは誰にも聞かれることなく部屋へ消えいった。



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