NEOTOKIO
海外の人から見たらこんな感じだろうなーと想像しながら書いてます。ありえねーと笑ってください。
月で生まれ月で育ち、月で生計を立てている彼女にとって、その故郷が過去の戦争の引き金になり今もなおそれを引き摺っている、それは怒りでも屈辱でも侮蔑でもなく、どうしていいかという感情なのだろうと、100%ではないにしろ俺には分かるので。いつまで引き摺って過去の負の遺産を背負えばいいのか。1000年経ってなお、まだ言われなければいけないのか。ポンっとユウキの背中に手を置いて。
「俺が聞きたいのは事実と、事実として伝えられているそれぞれの真実だ。避難嘲笑をするためじゃない。何があったと伝えられている?言えないなら、言いたくないなら言わなくていい。自分で調べるだけだ」
沈黙の海に流れる静寂。今は空気があるため、バイクが吹き上げる粉塵の音は微かに聞こえてくる。もうすぐ着くだろうか、徐々に街の灯りが見えてきたぐらいの時だろう。ウィルとケインはほぼ同時にチャットで声を出した。
「火星は食糧危機だったそうだ」
「火星も月も惑星同盟なのは今も同じだ」
音声チャットで同時に話すな!言いたいことは文字チャットにも変換されているから読めばわかるが読む時間がもったいない。
「どっちから話すかだけ決めて、一人ずつ話してくれないか。音声が被ると余計分からない」
「すまない。ケインだ。火星は食糧危機だが鉱物資源は余っていた。このため経済活動で解決しようとしたんだ」
「ウィルだ。ケインの言うことは私の認識と同じです。敵同士ならばそのまま戦争で良いのですが、惑星同盟という同じグループであるため、蜂起した方が反乱を興したとなります」
「だが!それは奴らが仕向けた卑怯な方法で!だろうが!」
おーい、ユウキ?とりあえず君は前を向いて運転してくれ。マッハいくつで走ってると思ってんだよ。
「ケイン、ウィル、続けてくれ。発端はなんとなく分かった。検証は後でもできることだ。どういう経緯で、決着はどう着いた?」
「ウィルです。約2-300年紛争は続き、突如フォボス勢力が食糧事情を解消する今の食糧生産器を開発したと言ってきたため、月への攻撃は不要とのアナウンスが出されたようです」
今のレーションは火星側の開発で食糧に不自由しないが資源が欲しい月側には不利益な条約を結ばされたってところか。それは確かに酷だな。
「ウィル、ケイン、ありがとう。ほかに補足はある?後は自分で調べてみるよ」
「「ありません」」
「ユウキ、一旦止まろうか」
ヒュゥンっと機械的な音が鳴り、それでも停止するには数キロ走り抜けているだろう。それでも、俺を載せているせいか、AIが優秀なのか防護フィールドを保ったまま安全に停止、着陸した。ユウキの背中に手を置いて。
「敗戦ってそういうことなんだよ。でも、どの時代も、前を向いてあるくべきだろ?」
俺の生きていた時代には見ることさえできなかった月の裏側で響くはずのないたった一人の少女の泣き声が響いていたのにもかかわらず、うるさいと思わなかった。
「いい?ポータルまであと少しなんだから。多分2-30秒で着くわ。置き忘れてないよね?」
「俺は大丈夫。ユウキは?」
「あるわけないでしょ!」
「一応指差し確認くらいしとけよ」
「なによそれ!」
「あー。うん。旧時代の誇れる数限りない教訓のひとつ」
「一応聞くぞ、IDは?」
「チップにあるから気にしてない」
「通行許可証やパスポート、認証系はチップにあるでいいな?」
「そうよ。あなたと違ってね」
「食料は?」
「レーションが7日分x2人分。文句ある?」
「いちいち突っかからんでいい。水は?」
「同じく1日を2リットル換算で7日分x2人分」
「衣服や防具のほつれはないとして、マニュピレータや自動計上器、バッテリーの残り残りょ。。。」
突然バイクが加速して慌ててユウキの腰を掴んでしまい。
「うっさい!おっさんめ!」
「俺はおっさんだよ(ボソ)」
レンタルバイクを返し代金を払うと一度ケインとウィルに到着を報告する。その足でポータル受付へ。俺審査通るのかな、と思っていたら、ウィルからもらった認証コードがIDに入っていたらしくほぼ顔パス。セキュリティ的にいいのかとも思いながら。あ、セキュリティと言えばユウキのネットもパスワードなかったじゃねえか。でも今言うと拗らせるよね。。。どう言ったもんかな。とか何とか思っていたら、すぐそばがポータルだそうで。
「いったん、私が知ってるポータル全部回るよ。いっかい行けば自分でも行けるようになるから」
なんかMMORPGやってんのかよって勘違いしそうなくらい目まぐるしく景色が変わる中で、気になる場所が散見してしまったのだが早すぎて場所と景色が一致しない。頭痛(3D酔いに近い)の状態で「おーわり!」という声でぐったりしてしまった。
「今日はここで休まないか?」
「えー?NEOEDOの方がいいよ?花魁もいるし、華やかだし。吉原で泊まろうよ」
うん、とりあえずそこへなおれ。NEOTOKIOの中にNEOEDOっておかしいと、思わないか。この時代の人は知らんわな。。。
「分かった。NEOEDOまでは行くよ。案内してくれ。休みたい」
「ポータルの近くだよ。SHIMNBASHIってとこに出るんだ」
「うん。よく知ってる。いや、今は知らないけど、知ってる。SL広場な」
「よく知ってるじゃない」
「俺は酔っぱらったサラリーマンが女の子のキャッチに捕まったのかと勘違いしているところだよ」
「何言ってんの?」
「気にするな。とりあえず、紅茶のアールグレイが飲みたいよ」
「こっち」
言われるがままに付いていけば、確かに「新橋」だ。これを新橋と呼んでいいのなら、だが。一部分だけレトロな写真から複製したかと思えば、伝聞だけで復旧したかのようないかがわしい繁華街。かと思えばそれこそ今の時代の最先端を表すようなイルミネーション。
「ちなみに、日比谷とか東京駅とか銀座とかってあるの?」
「あるよ。行きたい?」
「今日は休みたい。泊まるところのカフェでコーヒーか紅茶くれないか。できれば、濃いめで。好みはアールグレイだ」
「寝れなくなるよ」
「もう寝れないよ、こんな新橋みたら」
「NEOSHIMNBASHIね」
「元が無いんだからNEO要らんだろ。観光案内とかのパンフ、どこでダウンロードできる?どうせ紙媒体ないでしょ?」
「カフェでヘッドコンソール付けると怪しまれるから、個室に行った後にネット経由で送るよ」
「おお、そっか。確かに」
「当ったり前。私を誰だと思ってるの」
「今はバイク運転できるJKにしか見えんよ」
「ジェーケーって何?」
「悪かった。カフェに行こう」
着いた先は今で言う烏森通りや赤レンガ通りになるのだが。これはどういうことだ?というぐらいのイルミネーションで光ってる。もう、めちゃくちゃだな、NEOTOKIO。
「で、日本酒バーってここから近いの?」
カフェでようやく自分にかかった混乱の魔法のレジストチェックに成功して紅茶を飲みながら聞いてみる。
「近いよ。NEONISHISHINJUKU」
え?西新宿って、真反対じゃねえか。いや、中央線でいくの?いやいやいや、そもそも電車で行くわけないよね。
「ショートポータルを使う」
話を聞けば、ポータルにも電力が必要なためショートレンジの場合はそれなりに効率良く構造を組み替えることができるとか。そりゃまそうだな。
「タカシ元気になったし、今から行く?」
「行かねぇよ」
ちらっと時計を見て、「今何時になるんだ?」
「四時刻のエルウィスの半分、かな」
いかん、時刻の数え方まだ覚えてないな。
「今日はここで泊まらせてほしい、NEOの付く新橋と西新宿の観光データと、時刻の基礎データのリンク教えて」
「わかった」
どういう意味があるのか不思議そうな表情を浮かべて。
ヘッドコンソールを公共ネットワークに繋いで、ダウンロードをしつつ。
「外に出るときにはユウキに言うし、ヘッドコンソールから切れたら心配して突っ込んでくるだろ」
「それはない」
「ふぅん?本当に?」
今俺は半身VR半身リアル状態だ。ユウナもそうだろう。相手同士見えているのはVRのアバター側なので、俺にはユウナのリアルの姿は見えないし、彼女も俺の姿は見えない。。。はず。半身で横になりながら紅茶をすすって様変わりしてしまった新橋、と言うかそもそもここは新橋じゃないのだが、をある程度見飽きて、明日行く西新宿の観光マップを見ていた。
「西新宿って、俺の感覚だとビジネス街なんだけど、違うの?」
「NEONISHISHINJUKUは繁華街だよ。ネットドラッグとかも扱ってるらしいし、知らない人がフラッとリアルで入るとかあり得ないよ」
「まじか。歌舞伎町とか二丁目とかは?東新宿の方」
「カブキチョウ?なにそれ。ニトウメ?」
「えーっと、赤いアーケードの入口みたいなてっぺんが交差したところが有名なはずなんだけど」
「あ、カブキッチョか。芸術や芸人さんの街でしょ。雅だよね」
「。。。まあいいや。残ってはいるのか、と言うか伝聞と文献で再構築したらそうなったのね。遺跡でも何でもないからな」
「そりゃそうだよ。月にそもそもTOKIOがあるわけないし」
「明日詳しく聞きたいんだけど、日本酒バーってどういう店だ?」
「結構いろんな人が来るみたいだね。白い人も黒い人も灰色の人も。バーのお姉さんはいい香りがするよ」
「色んなの詳細が聞きたかったんだがな。現状はそれでいいや。朝や昼からお邪魔していいのか?」
「邪魔はしちゃいけないけど、ランチもやってたと思うよ。私は大体夜に行ってたからな」
「そりゃ昼間っから日本酒かっくらうわけにもいかんし。俺は少し時刻の読み方勉強してから寝落ちするよ。繋ぎっぱでもいいけど、いびきかくなよ」
「かくか!」
強制切断は結構神経系に来るんだぞ。まぁ、今のは俺がデリカシー無いか。
読んでくださりありがとうございます!また読んでくださると嬉しいです!