ネット上での戦闘
途中で出てくるコマンドは実機では絶対使わないでくださいね!!
動かないとは思いますが!!
がばっとヘッドコンソールを外し、
「大分分かった。もう少し経験積まないとだけども、あともう少し聞きたいことも増えた。いいかな」
全員が言葉を失っていた。
戦闘開始時に遡ろう。
索敵用のプログラムを持ってきていなかったのは失敗した。コマンドを今から組みなおしてスクリプトにしてしまえばいいのだが、ユウキの不意打ちが怖い。せめて八分木検索プログラムぐらいは入れるべきだったか。ないものねだりしても仕方ない、自分が移動要塞でどの距離で索敵、もしくは視認できるかを確認すればいいだろう。全体マップを見ると端は反対側からと繋がっているようで左端は右端と同じ座標のようだ。とりあえず天王山(将棋の中心座標)に向かってみるか。と、サーチサークル(丸いレーダー)に反応有り。少し下がって様子を見る。動かない。いや、動いてるのか?まっすぐ近づいてきているようには見えない。ゆっくりとジグザグに動いている。警戒だろうか、捕捉はされていない?では、ゆっくりと側面に周るように弧を描いてみる。
そういえば、相手同士がバイオゾイドとして認識しているという設定だったか。と、言うことは攻撃はコンピュータウィルス注入となるのだが、どうやって相手のネットワークに侵入するんだ?あー、プロキシ(中継サーバ)か。とプロキシを取り出すと流石ネット上だ。絵に描いたような地雷が出てきたぞ(笑)砂の上に埋め込んで、側面へ移動すると、進行方向自体は変わっていない。そのまま背後まで距離を取って周り込み、どうしたもんかと残り時刻は1:00を切ったところ。
ようやく中央まで来たようで迷っているのか、プロキシを埋め込んでいつでも侵入プログラムとコンピュータウィルスを起動できるように準備して距離を取って背後から追跡しながら、今後の戦術を考える。
まず、今は索敵しているので遅い速度だが、本気のユウキの突進速度は分からない。
次に、現状では索敵範囲は俺の方が上で、近寄らなければ気付かれない(たぶん、なのはまだ気付かれた雰囲気がないと想像でしかないから)。
その次は、相手の攻撃手段(あくまでネット上)が近接なのか遠距離なのかさっぱり解析できていない。
よーし、いったん視認距離まで突っ込むか。
プロキシとユウキを挟んだ間位でようやく視認確認が取れた。近接か。詠唱しながら剣振りかざすって、すげえカッコいいな。プロキシに入ってきたときに侵入プログラムの直後にコンピュータウィルスを注入。麻痺レベルだが動けないし話せない。
「魔法剣士って一度はあこがれるよね」
というとどうやら、プルプルしながら顔を真っ赤にしているので怒髪天を突いてしまったようだ。
第2ラウンドは直ぐに始まった。ステージは都市部。見た目が魔術師だもんだからただの変質者だな、と独り言ちて。現在位置は地図上のスラム街。NPCは居ないが、3Dだと索敵が厄介だなと思ったらサーチサークルに赤い点。すぐ近く?!やべえ、とりあえず防御プログラムを起動しながら離れるように移動するが、プロキシを設定している暇はない。
「みぃつけたー」
女子がその声を後ろから出したら、ほぼ確実に男子は夏だとトラウマになるぞという声で声をかけられて、いったん杖で振り下ろされる剣を防御、侵入プログラムを試してみる、が、そのポートは塞がれているので再度実行している間に殴り飛ばされて。あった!侵入プログラムを通してコンピュータウィルスを注入させる。
「まけな。。い!」
え?もう抗体作ったの?いや、違う、簡易すぎるウィルスだから自身でパターンを読み切ったのか、流石だ。じゃあ、暗号化基礎パターンを変えてやる。これでどうだ?
「ま、け、な、い」
蹴り飛ばされたのは俺だった。何かを仕込まれた。プログラム選択用のウィンドウだけが映像が不鮮明すぎる。
「分かった。俺が分かるのは全てじゃないが、このコマンドで終わらせてやる」
なおもギリギリ動く身体を絞り、振り下そうとするユウキの目の前で。
「ps h | grep yuuki | kill $1 -HUP now」
と宣言する。
一番最初に正気を取り戻したのはウィルだった。後の順番は分からないが。何が起こったのか分からないといった感じだったのは確かだ。特にユウキは勝ちを信じていた分意味が分からないと思う。ユウキがようやく言葉と周りの認識を理解できるのを待って、何があったのか、俺が何をしたのかを説明した。
「まず、俺が確認したかったのはヘッドコンソールの反応速度とインストール済みプログラムの対応速度」
一堂に頷く。
「ほかにも確認の優先順位が高いものはあるんだけれど、ここじゃ確認できないので、次はネット上で百戦錬磨のバウンティのユウキと渡り合えるか」
「ああ、だから本気で来い、と言ったのね」
「煽るようなことをして悪かった。」
「ごめんなさい。」
「悪いのは俺だ。ユウキが謝ることじゃない。ただ、確認できたのはここまでなんだよな」
「と言いますと?」
ウィルが代表するかのように合いの手を入れてくれる。
「今は有線電源だからいいが、バッテリーだった場合、何分動けるんだ?後、まだ俺が知らないことがあるだろ。リアル世界とネット世界で時間差あるでしょ」
全員が、え?という顔をして。
「知らなかったの?タカシ」
「知るわけないだろ。さっき、俺とユウキ以外がリプレイ見ているのが何故かがようやく分かったよ。で、その差は?」
「msecからnsecの間」
これは俺の方が口を開けて呆けてしまった。1秒の1,000倍から1,000,000倍?
「だからこぞって最新チップをみんな求めるのよ」
「(こめかみに手を押さえながら)ちなみにユウキさんは?」
「nsecよ」
「俺が今回使ったのは?」
「msecです」
ヘッドコンソール技術者が答えてくれた。おでこに手を押さえて正に頭を抱えて。そりゃ、怒るよな。
要するに俺のいた時代であれば「最高スペックのCPUとグラボと光通信」の状態で「3-5世代前のへぼへぼPC」にFPSの撃ち合いでガチンコで負けたと相手に挑発にされているのと同じだ。ネットマナー的にも人間的にもやっちゃダメだ。でも、これ以上謝っても意味がないというか傷口拡げるだけなんだよ。
「リアル世界だと俺は無防備だからな。ユウキはリアルは敵なしなんだろ?」
と言ってみるのだが返事はなく目を逸らされてしまった。まだ怒ってるか。
「ユウキ、流石に今日は色々ありすぎて疲れたよ。まぁこのままあのカプセルホテルみたいな寝床に行ってもいいんだが、一杯付き合わないか?」
ホテルに反応してるのが俺からも分かるからやめなさいって。俺から見たら娘みたいな年齢差だと説明したんだがな。
「パブ、居酒屋、スナック、バーなんでもいいが、今の時代の人の生の声を聞いてみたいんだ。後は今の流行りの音楽とか。Hiphopとかってもうないだろ?ラッパーとかさ」
「この駐屯地にはくっそ不味いバーボンくらいしかないよ。ラッパーはいるよ。ここにミュージシャンは居ないけど。タカシはニホンシュって好き?ネオトキオにはニホンシュバーあるよ」
とか何とか言いながら駐屯地のバーに連れ込むな。ニホンシュって、日本酒、だよな。でも、今のレーションみたいなくそ不味い人工食を植物性プランクトンから自動生成している時代に?悪いってわけじゃないし、食料問題はほぼ皆無になったのはいいんだけど、過去の飯を不味いものは不味いと正直に思っていた人間に無味乾燥と思わせる位だからな。。。日本酒ってかなりの高難易度だと思うんだが?足突っ込んじゃまずい気もするが、せめて米の味くらいは思い出したい。食パンですら恋しいよ。小麦粉も見かけないから粉ものすら見かけず。某栄養食を思いっきり薄味にして栄養価だけ高くしたようなおせんべいともぬれ煎餅とも言えない微妙なレーションっぽい何かを頬張り、安いバーボンという名の工業用アルコール臭い飲み物で数口で酔ってしまい。
「そういうのは金持ちかトップクラスのバウンティの贅沢ですよ」
「ええ、役仕えには到底ですね」
いつの間にウィルとケイン、横に座ってんだ。役仕えって。。。それ宮仕えの間違いじゃないのか。まだ意識のあるうちにと俺は二人にギムリィにバッテリーの依頼をしたことと、データのコピーを俺のIDに移してもらえないかと頼んでみる。ひとしきりギムリィと交流があるというだけで驚かれ。
「コピーって何バイトですか(震えた声)」
「512(ごーいちに)」
ひえぇ!と聞こえたのでGBだよ?無理?と言うとホッとしたように二つ返事でOKをもらった。まだバイト単位で計算してる方が俺には疑問だよ。差分大きすぎるだろ。ほかの単位考えないとダメだよ?と問いかけると。
「それができるエンジニアが居ません」
と途端に下を向いてしまった。あー、そか。そうだった。変換プログラム必要だもんね。今のKMGTで言えば何バイト?
「「クエッタです」」
既に限界突破してんじゃねーか。。。それ、俺がいた時代に新しく設定された基準。。512QBって、どっかの猫っぽい宇宙人出てきそうだから止めてくれ。
「のめー!」
まて、待ってくれ、今結構大事な話を。
俺は酒は強いほうじゃないんだがあまり二日酔いには最近なったことはない。悪酔いとか酔って悪ふざけをしないわけじゃないが、気心を許した人としかしない。激痛だ。せめて水を飲んでひと心地。
「行くぞ」
「どこへだ」
「ニホンシュ飲みたいんだろ?」
「とりあえずモーニングにしないか?」
「今からハイウェイ飛ばしてもポータルにギリギリ間に合うかどうかだぞ?」
「じゃあ、明日でもいいんじゃないのか?」
「タカシ、お前は今日出来ることを明日に延ばすのか?」
う、ぐ。。。言い返せない。。。
「分かった。レモンなどの自然フルーツか、コーヒーか紅茶、せめてアルコール除去装置を使わせてくれ。あと、ウィルやケインとはチャットできるな?音声だけや文字だけでもいい」
「アルコール除去なら、出てすぐ右に曲がればカプセルがある。使い方は傍にいるアンドロイドがサポートしてくれる。チャットに関しては私のチップ経由ならタカシが登録しているIDは私許可でパススルー認証してやる」
うん、ありがとう。それって、全会話監視しますって同義なんだけどなー(乾笑)まぁ、やましいことするわけでもないしできるならいいか。そそくさとアルコール除去に(ちなみにそそくさと言っているがユウキから見たら千鳥足だったそうで)向かい、さっぱりしたところで。
「一番早いので行くぞ」
どう見てもバイク。しかも浮いてます。二日酔いの後に乗るやつじゃねえよ。最高何キロ出るの?ってポータルの街まで30分で着くよ、との事。ウィルが来るのに片道2-3時間の距離を30分だとぅ!?4倍から6倍の速度じゃねえか。音速は軽く超えるよね?!空気抵抗とか生身に耐えられんのかよ!
「大丈夫。耐風耐塵耐熱耐寒防衛フィールド付きだから。偵察用最新機種だよ!」
あのさ、ユウキさん?俺生身、あなたサイボーグ。一緒にすな!とりあえず、アップロードを任せる機体をウィルとケインに預け、アクシデントやインシデントがあったらチャットで知らせて欲しいとの事と、こちらは「沈黙の海」の街に着いたら連絡すると伝え、これからもサポートをお願いしますというと。
「「あなたは敵にしたくないです」」
と言われてしまった。あれれ?なんでだろう。
多分時速2000kmは超えているはずなのだが、心地よいツーリングな感じだ。荒野で風景が変わらないのもそれに伴っているのかもしれない。
「今どの辺?そういえば、ヘッドコンソール俺持ってないんだけど、いいのか?」
「ああ、それなら、ケインから一台借りてきたよ」
「ユウキ、借りて返さないのは借りパクというれっきとした窃盗罪だからな?」
「何言ってんの。ちゃんと返すよ」
乗せてもらっている立場でなんとも言えないが今ケインにチャットするとユウキに筒抜けなんだよな。独自の通信手段や方法を探らないと踊らされるだけだな。今考えられるのは、資金調達しないとなんもできないな!ってことだ。沈黙の海の街も期待するが、ネオトキオってどんなところなんだろうか。この時代に東京?でも、どこまでを東京と認識しているのかも甚だ疑問だし、俺が生きていた時代と同じなの?とはまずありえない。それに、食欲は満たされるが味の問題はどうなのよって思うしな。
「ユウキ、今の食事に不満ない?」
「なんで?栄養価もあるし食料危機もないし、味わって嚙めば美味しいよ。タカシはそうじゃないの?」
「ユウキが知ってる範囲でいいんだけどいつからこうなったの?」
「月と火星で物資戦争があった時、だったかな」
「それってどのくらい前?」
「私は生まれてないけど、1000年ほど前。ギムリィ爺さんなら知ってるかもね」
「確認するけど、食料戦争じゃなく物資戦争って呼ばれているんだ?」
「私のログにはそう残ってるよ」
食料、だけでなく物資か。火星の外側には小惑星帯があるはず。となると鉱物もその争奪戦の対象となった気がしなくもない。あくまでも仮定だが。俺はケインにコールする。
「ケインだ。タカシ、もう着いたのか?早いな」
「違う。物資戦争についてかいつまんで教えてくれ、(ユウキに向かって)後何分で着く?」
「(チャットに入ってきて)10分かな。急ぐ?」
「いやいい。ケイン、10分程度でかいつまんで教えてくれないか。発端と概要、その結末程度でいい」
音声チャットの向こう側で大きなため息が聞こえたが、ここは聞いておかないと。文献を調べていたら錯乱しそうだ。
「発端は月側の鉱物資源略奪だ」
低く、それでいてはっきりと聞こえてくる。一瞬左右に揺れたのは気のせいだろうか。
「だろうな。続けてくれ。正邪を議論するつもりはない。今わかる知識が欲しいだけだ。それを聞いただけで俺はすぐさま敵には回らないよ」
自分で言っていて優柔不断な言葉だとは自覚しつつも。
見てくださってありがとうございます!
応援してくださると喜びます。主に著者が、ですが。
避難誹謗中傷構いません。
よろしくお願いします