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未来転移  作者: 梓悸
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作戦会議

叩き潰すだけだと簡単なんですが、後がめんどくさくなることって多いですよね。

ソフトランディングって意外とむずかしかったりします。

そんな作戦会議の模様です。



 相手の場所は契約書からはNEOSHIROKANETAKANOWA、白金高輪、または白金台だろう。ただ、これはフェイクの可能性が高い。どうデータを取っても人口密度が少なすぎるのと、マンション数の方が人口より多いってあり得ない。となると、NEOTOKIOに居ない可能性が高い。香ママとケイン、ウィル、ギムリィにそれぞれ別個に文字チャットを打ち込み、それぞれに質問してみる。要約すればこうだ。ユウキの中野坂上のアパートのオーナー、もしくはオーナー会社を知りたい。そのトップと背後関係を分かる限り教えて欲しい。即座に返事を返してくれるのがありがたい。

 「私は詳しくは分からないわ。契約書に書かれている親会社はユークラテス建設。ゼネコンよ」と香ママ。

 「ユークラテス建設の不動産管理部門が担当らしい。真っ当な記録しか表上残っていないな」とケイン。

 「エロいと言ったな?ならユークラテス建設のドラ息子のジャウス坊ちゃんが怪しいな。」

 ユークラテス建設?これまた壮大な名前付けたな。あった、中央の入り江に本社があるのか。なんとまあ、自己顕示欲が高いな。会長がシーザー・ユークラテス、社長がコウタロウ・ユークラテス、で副社長がジャウス・ユークラテス、か。3代目で20代前半か。個人的には叩きのめしてもいいんだが今後を考えるとやりすぎも良くないな。ユウキの意見も尊重したいし。それに、ツバキとイカロスは結局どうなったんだかハッキリしてないしな。。。

 「ツバキはね。私なんかよりずっと乙女で繊細で芯があってかっこいい女の子だったんだぁ」

 頷かない、というよりは、俺は微動だに出来なくてただ聞いていたに等しい。

 「イカロスは普段なよなよしてる癖に器用で色んなおもちゃ作って楽しませてくれた。手癖悪いからよくご厄介になってたけど、飯代浮いた!って笑って帰って来たときはボコボコに顔が腫れてて」

 楽しそうに話しているのにユウキは無表情だった。

 「この部屋も、ツバキが探してイカロスが契約してくれたんだ。私には未来があるからって」

 俺の歯並びの悪い奥歯がギリリと嫌な音を立てて、口の中に鉄の味が広がる。

 「ねえ、両性具有って分かる?こんなに馬鹿な私でも何されたって分かっちゃう位だったんだよ」

 「もういい、しゃべるな」

 ユウキは能面のような表情で見つめて来ていた。時代が過ぎても下種は居るという事か。それとも、それが当たり前になる社会があるということなのだろうか。

 「二人が残してくれたこの部屋だけど、私ここから出たい、出たいよ、タカシ」

 なるほど、だから香ママが「ようやく」と言ったのか。ユウキ自身に気付かせるために。ユウキは最初に西新宿に行ったのは4-5年前で、数回行ったと言っていた。その後駐屯地に居たとしても香ママの所には何度も行けるはずだ。ケインもウィルもツバキとイカロスの話はまったくしなかったし、ユウキからも香ママからも「駐屯地にツバキとイカロスと一緒に行った」という話は一つもない。さっきっから鉄の味が鬱陶しいと思っていたら、首まで血だらけになっていることにユウキに心配されて拭われるまで気が付かなかった。

 「大丈夫?変なこと言ってごめんなさい」

 「どうしたい?」

 「だって、しゃべるなって。。。」

 「あ、そうか。ごめん、言い過ぎた。ユウキはどうしたい?」

 「ここ抜け出したい。ここは、ツバキとイカロスと一緒だと思ってたから。でも、もう。。。」

 香ママに文字チャットで打診する。即座に返事が返ってくる。

 「ようやく片鱗が分かった。ただ、正面切ってケンカ売っても後の行動が取りにくいよな」

 「。。。そうね。どうするつもり?」

 「その知識が足りないから貸してほしい。沈黙の海の駐屯地のケインとその上司のウィルとでシークレットグループチャット開いていいか?相手がOKしてくれればだが」

 「え?ケイン司令官とウィリアム中将?そんな、来てくれるかしら。。。」

 ケインとウィルに文字チャットを打ってチャットの出欠とその動機を簡単に説明するとウィルから。

 「その場所はまずい。俺の部下に暗号化短波無線機を持たせるから淀橋下で待っててくれ。合言葉は2000年前から来たのならすぐに答えられるはずだ」

 全員に再度連絡する旨を伝え、ユウキに移動するぞと手を差し伸べる。

 「どこ行くの?」

 「ここは盗聴器や盗撮器があるかもしれないから移動する。忘れ物ないか、もう一度確認してくれ」

 「ない。ニン爺に挨拶だけしてもいい?」

 「もちろん」

 ユウキが栗井さんに挨拶し終わった後に。

 「くたばるなよ。俺のこのしわくちゃになったYシャツ預けるから、新品にしといてくれ」

 サムズアップして笑ってくる歯はボロボロで欠けていたが何故か誇らしげに見えてしまった。

 

 「どこに行くの?」

 「すぐそこだ」

 そういやここってプロレスの事務所あったっけ。変なところまで忠実再現だな。看板だけあっても仕方ないだろと、渡り切ってから河川敷へ。黒スーツにサングラスの男が近づいてくる。かなり怪しいな。

 「ヤマ」

 え?思わず「カワ」と答えてしまう。古典的過ぎる。。。

 「名前を」

 「桐生孝志」

 「これをウィリアム中将から預かっております」

 銀色のスーツケースを渡されると、開けようとするが4桁の番号が分からない。

 「ユウキ、誕生日は?」

 「地球日で11月21日」

 開いた。どう見ても短波送受信機だな。本来なら短波アンテナは相当大きくしないといけないはずだが、この出力(どう見ても1000W超えてる。俺の生きていた時代なら電波法違反どころかテロリスト扱い)なら届くか。周波数とスクランブルがかかっている事を確認したうえで、ユウキがこの送受信器をルータとして俺のPCとも繋がるかを確認。ヘッドコンソール使ってもいいんだが、俺が無防備になるんだがどうする?とユウキに相談すると。

 「任せろ」

 と男らしい返事が返ってきたので、香ママ、ケイン、ウィルに音声チャットで打診。ログインして話そうと持ちかける。二つ返事でOKをもらえたので、互いの秒を合わせたうえで3カウントでログイン。


 「まずは、忙しい中、招集に応じてくれてありがとう。ウィルには機材まで用意してくれて本当に感謝している」

 「水臭い。後で酒を奢れよ、で、こちらの美しいマドモアゼルは?」

 「カオリさん」

 「あら、私?西新宿で日本酒バーを細々とやらせていただいております、樋山香と申します。以後お見知りおきを。中将殿」

 「中将はよしてください。ウィリアム・タケバヤシです。ウィルで構いません」

 「自分は沈黙の海駐屯地のケインであります!」

 「今回は公の場じゃないし、ログは俺が責任もって削除する。異例だということもここに居るだけで軍法会議ものだということも知ったうえであえてお願いしてる」

 「分かってるわ」

 「当然だな」

 「あいつらにはいい加減頭来てたのは事実だしな」

 「。。。ごめん、なさい」

 「ユウキ、先に言っておくが、ユウキのためだけじゃない。俺が本気でムカついたんだ。ユウキが行かなくても俺は行くぞ。謝ってヒヨ(ビビ)るぐらいなら、置いていくぞ」

 「。。。ヤダ」

 「で、どうするんだ?議長」

 「今回の目的は二つ。まず、全員に被害が及ばないこと。最悪、俺一人まで、だな」

 「え?私は?私は対象でしょ?」

 「最も優先すべきはユウキ、あなただよ。これが第二の目的。できれば誓約書なりの証拠を取りたい」

 「私たちに望むものはなあに?」

 「情報。手段や手順は考えるが、違法かどうかの判断もして欲しい。俺が知っているのはユークラテス建設の公的な情報と、変態野郎は副社長のジャウスっていう三代目ってぐらいだな」

「僕が知っているのもその程度ですが、現会長のシーザーが一代で築き上げた月面随一の大成長企業ですね。蹴落とした企業も相当数いるそうで、叩いた分だけ埃が出ますが、その分金をばらまいて上からビニールシート被せていると言った所でしょうか」

 なぜかケインが敬語になってる。しかし、1990年代のゼネコンバブルじゃないんだから。。。ただ、ユークラテス建設のおかげで月自体の開発が進んだのも事実らしい。下請けの小さな社長とかは自殺とかしてねえだろな。。。

 「ワンマン会社ではあるがすべてが悪いわけじゃないってことか。ジャウスがド変態で家族経営と単に引き継ぐだけの危険性を理解してもらえるとありがたいんだがな。証拠っつってもな」

 「証拠なら、ある」

 「「「「え?」」」」

 「出したくない」

 「いい、出さなくていい」

 明らかに想像がつく。そんなものを証拠として出すくらいなら俺の方が下種だ。と、すれば。

 「自白か」

 「自供だな」

 「自ら権力を手放してもらうというのもありですね」

 「もしくは、自ら体験してもらうか、ね」

 香ママが一番怖えよ。

 「脅迫じゃ意味が無いんだよ」

 「どうしてなの?自白させてしまえばいいでしょう?」

 「この時代の法律は詳しくないんだが、俺の生きていた時代は脅迫された自白は証拠にならないんだ」

 「またそうやって時代が違うとか言うー。気にしなくていいじゃないの」

 「あれ?樋山さんは信じてらっしゃらないんですか?」

 「香でいいわ。今度飲みにいらしてね、ケインさん」

 「え、あ、はい。タカシは灼熱洞に入ってもいないのに、ユウキと一緒に出てきたんです」

 「灼熱洞って沈黙の海の駐屯地にある、まだ到達点が見えていない所?」

 「その話は後でゆっくりどうぞ。なので、脅迫しての自白は俺が嫌だ」

 「面倒くさいわねぇ」

 「そんな変態野郎なら、どこかに奴隷的に囲ってるんじゃねぇか?それこそ何人も」

 「一つはその方向だな。それだけじゃ甘いな。こういうのはどうだろう。。。」

 リアル時間5分、ネット時間実に3日と半日という貴重な時間をまるで強化合宿のように悪だくみを進める5人だった。

読んでくださってありがとうございます!

次回は作戦の実行編になりますが、うまくいくでしょうか。。。

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