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捏造の王国

捏造の王国 その51 またもパンデミックの春、ワクチン打ってすべて解決ってわけでもないんですよお

作者: 天城冴

ウイルスの猛威にいまだ振り回されるニホン国。支持率爆下げに悩むガース総理にトラベルキャンペーン再開をとのサンカイ幹事長の発言が耳に入る。地獄の書記官によれば、サンカイ幹事長らはワクチン打てばすべて解決との大誤解を…

四季を強調することによりアイデンティティを保っているニホン国に、待望の花咲く季節がやってきた。例年なら新入生、新社員で列島中がウキウキになるはずであったが、長引く新型肺炎ウイルスの流行のおかげで飲食店をはじめ各事業は息も絶え絶え。隠れ失業者の増大に、自粛自粛で花見も満足に楽しめないニホン国民。その不平不満の矛先は当然、昨年からの無策っぷりを爆走中のジコウ党政権、そして時のトップ、ガース総理へと向かっていた。

「なにージコウ党世論調査で支持率10%切った!ほ、本当なのかシモシモダ総理補佐官!」と、電話口でどなっているのはガース総理。会食も止められ、ゆっくりと茶をたしなむ時間もないせいか、ピリピリとしている。ストレスは身体、むろん頭皮にも悪いのだが、今は頭髪の心配をしている場合ではなかった。

「はい、残念ながら。ジコウ党が独自に実施する統計調査では、そうなっております。その、籍だけおいたことにして、実際は他の党員が党費を払い込んで水増ししている党員も多数存在するので、一概にはいえませんが。捏造当たり前のフジサンサンケイ新聞はもとより、まあまあ信用性のあると言われるニチニチ新聞などよりもはるかに正確です。レッドフラッグになんとか近づくほどの信頼性は確保できます」

「くうう、恫喝し、忖度させてるマスコミの世論調査でさえ、30%切るかもというのに、このままではやはり解散か!」

「アメリカ訪問や国際大運動大会の開催を控え、あまり現実的ではありませんが」

「くう、いったいどうすれば支持率がー」

“決まってるじゃないですかー。国際大運動大会中止してえ、無理矢理に強行しようとしてる委員会から全額返金させてえ、そのお金を検査とワクチンと給付金に回せばあ、支持率は爆上げですよおお”

と、おちゃらけてはいるが、まごうことなき正論をぶちまけるのは毎度おなじみとなった地獄の書記官。

(ぎゃー、まだでた!こ、こんどは書架のガラス戸かああ!)

“いやあ、これホントお飾りなんですねえ。いい本がいっぱいあるっていうのに、だいぶあけられてないみたいですねえ。どうもモンリさんとか、オオイズミさんの頃からですかねえ。いや温故知新とかあ、先人の知恵は大事ですよお。まあ、磨いてはくれてるんで出やすくて助かりますけどおお”

(磨かんでいい!どうせ古臭いご高説なんて、今の電子化された現代にはいらんのだ!)

“あ、電子庁だかデジタル庁のことですかあ。いまだ検査結果はファックス集計とかあ、ズーム会議もロクに出来ない方々がトップで運用できるんですかねえ。あ、ラインだか何だかで機密情報垂れ流しで隣国やらが見放題状態放置ってすごいですねえ”

(わああ、それを言うなあ)

「そ、総理?あの、大丈夫ですか」

言葉にならずともパニックをおこしかけているガース総理の様子を不審に思ったシモシモダ総理補佐官が受話器の向こうから尋ねた。

「あ、いや。なんでもない」

「そ、その支持率がお気になるようでしたら、この報告はあとに…」

「あとにしたところで、支持率が回復するわけではないし、報告は早い方がいい、で、なんだね」

「その、サンカイ幹事長がトラベルキャンペーン再開を、と。新型肺炎ウイルスを恐れていては何もできん!とか」

「ひいいいいい!」

思わずよろめいて書棚にぶつかるガース総理。

“あ、痛い、大丈夫ですかあ、ガースさん。壊さないで下さいよ、このガラス高いそうなんで”

(ガラスがなんだー!と、トラベルキャンペーン再開だとおお、な、なにを考えてるんだー!)

「あの、総理」

「シ、シモシモダ君か、いや、なんでもない。だい、大丈夫だ、たぶん。し、しかしサンカイ幹事長はなぜそんなことを!やったら、感染がさらに拡大し、ウイルスの変異株が蔓延し収拾がつかなくなる恐れが」

「一応、そういった懸念も周囲が幹事長にお伝えしているはず、なんですが。何分旅行業界の落ち込みぶりは激しく、何とかしろとの突き上げが。サンカイ幹事長は旅行業協会の名誉会長もやっていらっしゃいますし」

「つまりは利権がらみか、まあ、わからんでもないが、しかし」

「その、再開すれば、ウイルスが蔓延。さらに変異株が各地で確認され、どうもニホン独自のニホン型もでたらしいと」

「と、トーキョーではやってるあれか!感染力は弱いと言われているらしいが、ワクチンは効かないとかいう」

「そうです。それが他の変異ウイルスに感染した患者にさらに感染して、さらに変異したりしたら」

「もう、わけわからんな」

“そうですねえ、もう新型肺炎ウイルスっていうよりい、ニホン肺炎ウイルスになっちゃいますねえ、変異しすぎてえ”

(わー余計な口をはさむな!な、なんで大人しくしててくれなかったんだ!)

“ガースさんがぶつかったショックでしばらく、呆けてまして。まあお二人の会話を聞いてると呆れるというか、ため息がでますねえ。また地獄に来る人が増えるんですかあ。それとも、ついに上の方で囁かれていた『バカのままアホをとがめず上につけたままの責任とらせるニホン国絶滅プロジェクト』が発動したんですかねえ”

(そんな不吉なこというな!ただでさえ、地獄の書記官なんぞ不吉なんだ!し、しかしサンカイさん、なんだってトラベルキャンペーン再開なんぞ。旅館業者だって自分たちの命も危ういかもしれないってのに)

“ワクチン打ったから大丈夫、とか思ってんじゃないですかあ”

(は?私は訪米のために打ったし、サンカイさんはどうだったけ。確か前のはかなり前)

“あ、やっぱ、二度うちですか、ズルいなあ自分たちばっかり”

(う、うるさい!当時私は長官!総理を補佐する大事な役割で、倒れるわけには!)

“やっぱり、ジコウ党幹部は内緒で中国開発のワクチン打ってたんですねえ、だからウイグルだかの制裁にも加われないしい、ミャンマーの制裁にも消極的なんですねえ、ホントは中国に頭が上がらないんですねえ”

(お、表向きはそうでもないんだ!だいたい裏では米中だって、そのお)

“そういうネトキョクウ的妄想陰謀論はさておき、ワクチン二度うちなんてして大丈夫ですかあ”

(いや、十分間隔開けたし、10か月近くたっているはず…)

“それなら効果薄いかもお。前のは従来型でえ、今の変異株には効きますかねえ”

(わ、私は最新…サンカイさんたちのことか!)

“そうですよお。それにガースさんが新しいワクチン打てたってことはあ、前のワクチンでできた抗体があ、もうないかもしれないしい、だいたい前のワクチン自体の効果や安全性もお、十分に検証はあ、されてないしい”

(わあああ、そ、そういえば学者もそんなことを)

“まあmRNAワクチンだってえ、どういう副反応あるかは正確にはわからないらしいですけどねえ。だいたいワクチンうったから、マスクなしい、会食しほうだいってわけではないしい”

(そ、そうなのか。…確かにそういわれた)

“サンカイさんとかはあ、きっとワクチンうてば何しても平気だって思ってるんですよお。旅行業のトップの人達も内緒で打ったのかもしれませんねえ。国民の大多数が接種すればあ、そうなりそうですけどお。打った人は重症化はしないだけでえ、周りにまき散らす可能性大有りですしい、そもそも従来型の初期のワクチンが今の変異株に効果なしなら本人もかかっちゃいますしねえ”

(ワクチンはまだごく一部だし、そもそも現場が混乱)

“ガースさんが高齢者に4月から接種を、なんていっちゃったから、いけないんでしょーが。高齢者と医療従事者両方に打たせるために現場はてんてんこまい、不足気味なのがさらに不足~な状態ですからねえ。支持率回復と思ったのが裏目にでましたねえ、また。毎回、ピント外れな政策でドツボにはまって、どうして学習しないんでしょうねえ。アベノさんのころからそうでしたが。ひょっとしてアベノさんがアレなのは補佐がガースさんだったせいもあるんですかあ”

「うるさい!黙れえええ」

と、思わず叫んでしまったガース総理。

「そ、総理?」

と困惑するシモシモダ総理補佐官。

「シ、シモシモダ君か、な、なんでもない。虫がはいってきて、その、飛び回っていてな」

「虫は黙ることは、そもそも喋りませんが…。そのトラベルキャンペーン再開は…」

「な、なんとしてでも、止めろ、第4波もくる、いやもうきているのに。このままでは国際大運動大会開催は完全に不可能に」

「そ、その件も、予選が開けず、さらに選手を送りたくないと。アメリカの大手放送局から狂気の沙汰、無観客としても選手が危険だと、大批判を受けてます。あそこは国際大運動大会の放映権をもっていて…」

「ううう、ど、どうすればあ」

“キャンペーンも国際大運動大会もやめちゃえばいいんですよお。あ、レッドフラッグサンデー版でもお読みになれば。参考になる政策がてんこ盛り。やったら支持率爆上げですよおお”

(共産ニッポンの真似なんてー絶対に嫌だ!我々ジコウ党がどうしようもない無能だと認めたようなものではないか!)

無能極まりない意味不明矛盾だらけの政策を続けているのを自覚しているのかしていないのか、心の中で叫ぶガース総理。哀れ極まる姿だが、地獄の書記官は忖度0%のようで、ひょうひょうと無慈悲な現実をガース総理につきつける。

“しないとパンデミックが永遠に続きそうですねえ”

国際大運動大会などの利権にしがみつけば、ニホン国は常春の国ならぬ、年がら年中パンデミックの国になりかねない事態に頭をなやますガース総理であった。


どこぞの国ではワクチン接種だけ、ですべて解決のような風潮ですが、そうでもないんですよねえ。しかもワクチンへの過剰期待の割にワクチンも針も医療従事者も不足続き、さらに変異株が広がりだしてどうするんでしょうかねえ。庶民のちんまりしたイベントに目くじら立てるより、県やら世界規模のイベント中止したほうが効果ありそうですけどねえ。

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