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金曜日に  作者: sige
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2

「じゃあ俺んちで宅飲み兼仕事手伝い、でどう?」



いい貰い物のワインあるよ、という高屋の決め手の一言で、知乃はあっさりOKを出した。



20分程度電車に揺られ、知乃のアパートの最寄り駅から一つ手前の駅で、腕を引かれて降りる。



「あれ、高屋くんの最寄り駅ここだったの?うちからも近いかも」



着いた駅は知乃のアパートからもそれほど離れていないところで、たまに運動がてらこの駅から乗り降りすることがある。

ただこんな近くに高屋が住んでいるとは知らなかった。



「ああ、前は別の路線だったんだけど、去年、一緒に住んでた彼女と別れて引っ越したから」


「・・そうだったんだ、知らなかった、なんかごめん」



思いがけない高屋の少しリアルな事情を聞いてしまったことに、なんだか後悔の念が浮き上がってくる。

入社の時の新人懇親会で、プライベートな話で盛り上がっていた時、学生時代からの彼女がいる、と言っていた姿を思い出す。



「なんでチノ謝んの?まあ、でもこの辺り、割と便利でいいよね。駅前でなんでも揃うし」



高屋は気にしてない様子で、前に抱えていたビジネスリュックを背負い直し、ICカード代わりのスマートフォンをジャケットの内ポケットから取り出した。



「うん、会社も近いしね。と言っても先週までみたいなハードワークは勘弁だけど・・・」



知乃も、見慣れた改札が見えてくると、カバンから愛用のスマートフォンを手探りで取り出した。


2人で駅構内のスーパーマーケットで、お酒と惣菜を調達し、住宅街にある高屋のアパートへ向かう。

着いた場所は、駅からでも徒歩10分圏内のなかなかの好立地のアパートメントだった。



「お邪魔します・・・」



築浅のモダンな1LDK。家具はモノトーンで統一されてはいるが、無駄な物が一切なさそうなところが彼らしい。TVは今巷で流行りのプロジェクタータイプになっているのがちょっと羨ましい。



「そこのソファに座ってて。あ、俺のカバンにPC入ってるから出しといてくれると助かる」


「わかった」



高屋が脱いだジャケットと共にソファに置いたビジネスリュックのジップを開けると、小型のノートブックPCが入っていたのでそれを膝に置き、電源を繋ぐ。

このPCは外出が多い営業担当用のために導入したモデルで、パフォーマンスはそれほどでもないが、軽くて使い勝手がいい。IT部で使っている人間はいないが、社内では人気のノートブックだ。知乃も個人的に欲しいなとちょっと思っている。



「チノ、最初ビール?」



キッチンから高屋の声がかかる。



「うん、そうする。ありがと」



実は2人ともそこそこ飲める方である。

同期同士の集まりでも、最後まで比較的正気でいるのが知乃と高屋、あと1人くらいだった。なので、飲み会の度に最後は高屋としゃべっていることが多くなっていたように思う。最近は退職したり仕事が忙しくなったりする人達が増え、同期会もほとんど開かれなくなったが。


高屋がグラスとビール、皿に持った惣菜をテーブルに並べていく。



「あ、注ぐよ、ビール。このクラフトビール飲んでみたかったんだよね」


「チノ、酒を目の前にしてる時が一番生き生きしてる」


「そりゃもう。今日の報酬のワイン飲ませてもらうのも忘れてないからね」



2つのグラスに黄金色の液体が泡を立てて注がれる。

ソファに並んで座り、おつかれさま、とグラスを交わすと、高屋は一気にグラス半分くらいを飲み干す。知乃も少し飲んだところで、少し暑さを感じてジャケットを脱いだ。高屋はシャツの裾を捲って既にリラックスモードだ。



お読みいただきありがとうございます。

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