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〜閑話〜アリシア?(前半)

私はアリシア、一大観光都市ゼップの街を治める領主、オースロート・ゼップの長女です。

私は一人娘で学園を卒業してからと言う物、次の領主を担うため婿取りを早くと、父から色々な縁談を勧められて来ました。


家の為に婿を取る、貴族の一人娘として、この街の領主の娘として仕方のない事とは思います。

とは言え、私もひとりの女の子ですもの、恋に夢見る事は許されても良いのではないでしょうか?


そう、私には想いを寄せる殿方がおります。

私が学生の頃から想いを寄せていた麗しのマグダル様。


マグダル様は王都で財務大臣を歴代務めるガーフィールド家の一人息子、見目麗しく、一度剣を握れば王宮の騎士とも匹敵する剣技に、財務を司る血筋を紛う事なき学業の成績。


学園の令嬢達は誰しもがマグダル様の虜となっておりました。

例に漏れる事なく私もその内の一人だったのですけれどね。


そうは言っても学園は卒業してしまい、領地に戻りマグダル様のお顔を拝見する事は無くなり、恋に夢見る学生の時とは違って現実を考えれば、一人息子で有るマグダル様と婿取りが必要な私とは到底結ばれる事は叶わ無い、粛々と父の持ってくる縁談を受け入れる他無いのだと自分に言い聞かせていた時でした。


マグダル様がゼップに来る?!


なんでもガーフィールド家では財務の仕事に就く前に修行と称して王都以外でなんらかの職業に就き見識を広げるのだそう。

そして、マグダル様が選ばれたのがゼップギルドとの事でした。


学生の頃に封印した私の恋心は殻を破り溢れ出てきます。

はぁ!麗しのマグダル様、一目だけでも。

すぐさま私はこの街のギルドに向かいました。


「なんですか?これは?!」


父の代理としてギルドに赴く事は度々ありましたが、何時もの閑散としたギルドの光景はそこには有りません。一つしか無いギルドの窓口に向かって一列に並ぶ女の子の列がギルドの建物の外まで。

窓口では困った顔をしているマグダル様と何か贈り物を渡そうとする私の友人、ユーリの姿が見えました。


「ユーリさん!何をなさっているのですか?!」


「アリシア様?!」


名前を呼ばれた事で居並ぶ女の子達の視線は一斉に私の方を向き、明らかに気不味そうな顔をして目を逸らしました。

並んだ女の子達の顔ぶれを見てみると商家の娘や富豪の娘など私の知る顔がほとんどの様で、手には何かしら贈り物の包みが。

気不味そうにオズオズとユーリは口を開きました。


「マグダル様がいらっしゃると聞いて、私、居ても立っても居られなくて.......」


ユーリはこの街で一番の高級ホテル、丘の上のホテルのオーナーの娘です。

私と一緒に学園にも通っていたのでマグダル様のお顔も知っていますし学園でのマグダル様の女生徒の人気も知っていて、私と一緒になってマグダル様の素晴らしさを語り合っていました。

マグダル様を一目見たい、そう思ってギルドに押し掛けた私も人の事を言ってはいられない立場です。

しかしこのままではギルドやその利用者の商人達に迷惑がかかります。

もちろん修行の為に仕事をしているマグダル様にも。


領主の娘としてここはなんとかしなければ。


私は居並ぶ娘達を全員ギルドから連れ出してマグダル様を見守る倶楽部を作り協定を結ぶこととしました。

流石にこの街に住む娘達、領主の娘である、私の言葉を無視する訳にはいきません。


決まり事として、抜け駆けしない、お仕事を邪魔しない、贈り物は私達の倶楽部を通して送る。


それから私達はギルドに行ってもマグダル様のお仕事の邪魔にならない様に遠くからお顔を拝見してお友達同士マグダル様の素晴らしさを語り合い学生の頃に戻った様な気分で楽しく過ごしておりました。


「アリシア様、今、王都から勇者様が領地にいらしてるんですってよ」


「勇者様!?」


何時もの様にギルドでマグダル様の働く姿を遠くから拝見していると後からやって来たユーリに話を振られます。

噂で話は聞いていました。

王都にドラゴンが来襲してたった一人の平民の冒険者がそれを討伐、王から勇者の称号を得てゴールドプレートを賜った、とても見目麗しい冒険者のお話。


「家のホテルのスイートに滞在されてるそうなのですけれど、まだ、ご尊顔を拝見出来ていないのです」


「私が聞いた話では、それはそれは見目麗しい方だと伺ってますよ」


「そうなのですか?それは是非ともお会いしてみたい物ですわ!」


ドラゴンを一人で討伐する麗しい男性、私も是非とも、勇者様にお会いしたい物ですわ。

王からゴールドプレートも賜った方ですし見目も良い、俄然興味が湧いて来ました。

そんな時、とても可愛らしい二人の女の子がギルドにやってきました。


二人とも学園に通っている年頃でしょうか?とても仕立ての良い衣装を着ています。

学園では勿論、王都や他領で行われた夜会などでも拝見した顔では有りません。

あれだけ美しい子達を覚えていない訳は無いですし、他国の貴族か大店の御令嬢の方でしょうか?

それにしても対応しているマグダル様の、いつにも増して笑顔が輝いて見えるのは私の気のせいでしょうか?

ギルドにいる他の娘達もマグダル様と親し気に話す二人を忌々しげに見ています。


このまま二人に出し抜かれる様な事になり、この街の娘達の不満が噴出してマグダル様にご迷惑がかかる様な事になる訳には参りません。

ここは私がこの二人に、この街の協定をお話しせねばと思案しているうちにマグダル様は二人をギルドマスターの部屋へと案内していきました。


暫くして部屋から出てきた二人の内、金髪の子はすぐにギルドを出ていきました。

仕方が無いので残った黒髪の子に釘を刺しておこうと私はギルドを出て行く彼女を追いかけます。

ギルドにいた他の女の子達も思う所があったのでしょう、私について来ました。


「ちょっと貴女!待ちなさい!」


私はギルド前で立ち止まった彼女に声をかけ、振り返り怪訝そうな表情を浮かべる彼女に「ついて来なさい!」と言ってギルド裏に促し、話をする為に他の女の子達と彼女を取り囲みました。

そして近くで改めて黒髪の子を見てみると、あまりの美しさに絶句してしました。


艶々の長い黒髪、整いすぎてる小さな顔、オフショルと短いスカートから覗く白く綺麗な肩と長く細い手足。

上目遣いでチラチラと見廻す姿があざと過ぎて愛らしい。

こんな子に微笑みかけられた殿方は簡単に篭絡されてしまうだろう。

ジリジリとした焦りを感じてしまいましたが。


「グスッ.....お金......持ってないです.........許して.........グスンッ」


突然黒髪の子はホトホトと涙を流しながら鼻を啜り慈悲を懇願するように私を見上げてきます。


「お金?」


何を言っているのか分からず私は周りを見回して頭を抱えました。


「ちっちっ違うのよ!お金を集ろうとかしてるわけじゃ無いのよ!!なんで泣くの!私が虐めてるみたいじゃ無いのよ!!ちょっ!ごめん......ごめんなさい!謝りますから!ちょっ泣かないで!本当にごめんさい!!」


私は慌ててポケットからハンカチを取り出して、黒髪の子の顔を拭い、手を取りハンカチを強引に手渡しました。

ハンカチを受け取った黒髪の子はホッとしたのか目尻を拭うと涙は引っ込み、それでもまだ、不信感があるのでしょう、上目遣いでオズオズと問いかけ来ました。


「あの...........誰ですか?僕に何か用ですか?」


取り敢えず他国の貴族なら不敬な事も出来ないし、少し素性を伺う事にします。


「私の名はアリシアよ、貴女、名前は?何気に仕立ての良さそうな服を着ているけれど........夜会で見た顔では無いわね?もしかして他国の貴族?何処から来たのかしら?」


「え?僕、マコトです、王都から来ましたけど.......貴族とかでは無いですよ」


「マコトねぇ......そう?じゃあ大きな商家の娘さん?」


「えっと.......王都で宿屋さんのお手伝いしてます」


マコトと名乗った目の前の美少女から私が思ってもみない答えが帰ってきた事に少し驚きつつ話を続けます。


「お手伝い?そうなの?その割には、やけに身に付けてる物が高価そうな物ばかりなのだけど?」


「これ、全部貰い物だから........」


?意味が分からない、そんな高価そうな服を簡単にあげるって事はそれなりの地位のある人では無いのでしょうか?貰い物と言っている割にあつらえた様にぴったりですし?まぁ考えても無駄だから当初の予定通り釘を刺しておきましょう。


「そう.........まぁ、貴女の素性は置いといて、忠告しときたかったのよ!他所から来た貴女は知らなくても仕方の無い事だとは思うのだけど、マグダル様の御手を煩わせるような事をしてはダメよ!」


「えぇっと........誰ですか?マグダル様?」


はぁ?マグダル様を知らない?王都から来たのに?惚けているのかしら?


「マグダル様ですよ!貴女、受付で人目も憚らず言い寄っていたでは無いですか!」


「あぁ、受付の!.......ん?!言い寄ってって、何でそうなるの?僕はギルマスに手紙を預かって来ただけなんですけど!」


「それでもです!この街の娘達は協定を結んでいるのですよ、抜け駆けしない、お仕事を邪魔しない、贈り物は私達の倶楽部を通して送る事になっているの!」


「お仕事の邪魔って、受付はお仕事でしょ?どうすれば良かったんですか?」


「そんなものは受付を別の職員が交代するまで待てば良いのですよ、まぁ殿方が話しかける分には構わないのですけど」


「はぁ〜分かりました..........じゃあ!見ません!近づきません!話しません!っで、良いですか!!!」


さっきまで泣いていたからと、少し優しくして接していたのに、なんだかこの太々しい態度に目を剥く様な気分です。

顔に似合わず毒を吐く態度はなんなのでしょうか?もしかして猫を被ってた?


「まぁ!なんです!その不遜な態度は!ちょっと可愛いからって調子に乗ってません事?」


「そんな事言われても、こっちも色々とやらなきゃいけない事が有るんですよ!要は、あの職員さんに近づかなければ良いんでしょ?」


「マグダル様です!折角貴女ならば私達の倶楽部にお誘いしても良いかと思ってましたのに........」


「結構です!もう、良いですか?用事あるんで!」


「あっ!待ちなさい!話はまだ終わって.......」


私が話しているのを無視してマコトは大通りに向かって歩き出しました。

周りを囲んでいた他の娘達は困惑顔で立ち尽くすだけ。

しょうがなく私は他の子達を置いたままマコトを追いかける為駆け出しました。


「なんで付いて来るんですか!」


「だから話は終わって無いって!その態度!貴女、私を誰だと思っているの!」


「知りませんよ、誰って、アリシアさんでしょ!付いて来ないで!!」


そう言ってマコトは駆け出しました、見掛けに見合わずマコトは足が早く一気に引き離され、すぐに姿を見失いました。

領主の娘である私にこんな態度を取るなんて、イライラしながら私はマコトを探して街をうろついていました。


今年も終わりますね。

読んで頂いた皆様ありがとうございました。

進み方が遅くて申し訳有りません、来年は少しは頑張ります。

出来ればブクマ、評価など頂ければ嬉しいです。

感想など一言でも頂くと励みになります。

来年もマコトとクロスワールドの世界を宜しくお願いします。

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