リサの失踪?
「マコちゃん、観覧車にでも乗ろうか?」
「あー定番だね、観覧車なら怖く無いし良いよ」
と二人で観覧車の乗り場に向かう。
「これ何?」
遠くから見ただけで気付かなかったけれど、僕の知ってる観覧車と違う!
全てが木製で出来てて、ゴンドラはなく、代わりに剥き出しの二人掛けのベンチの様なチャチな椅子が有るだけの観覧車。
高さは結構有るのに、身体を固定するものも何も無い。
足は投げ出したまま乗るのかな?
まぁ、ゆっくりと回ってるし絶叫マシンと比べると全然マシかな?
取り敢えず観覧車を待つ列に並ぶ。
観覧車に乗ってる人達を見ても、平然と乗ってるみたい。
あっと言う間に僕達の順番はやって来て、動くベンチにタイミングを合わせて飛び乗る。
僕の横に乗ったクリスはワクワクした様子で足をぶらぶらさせてる。
徐々に高さは上がり視界が開けて、園を見渡せる様になって来た所で、つい僕は下を見ちゃった。
「ヒッ!たっ高い!」
下から見上げてたら、そうは思わなかったけれど、乗ってみると結構高い。
「えーこのくらい大した事ないじゃん!」
そう言いながらクリスは足をぶらぶらさせると「ミシミシ」と木が軋む音。
「くっクリス、大人しくしてて、揺れるし、こっ壊れる!」
「えー大丈夫だって!」
クリスは足をぶらぶらさせるのを辞めないどころか、更にベンチを揺する。
「!!!本当、本当辞めて!揺すらないで!この足!あし!!!」
恐怖に駆られ、僕はベンチを揺らすクリスの足を必死でペチペチと叩いた。
「痛い!痛い!マコちゃん叩かないで!マジギレ止めて!ご免!ごめんって!」
僕はベンチに必死にしがみついて目を瞑り耐える。
クリスはムスーっとして「つまんない!」と呟く。
恐怖の時間を耐え抜き、ベンチは地上に帰ってきた。
僕は地面に足が付くと崩れる様に膝をついた。
「もう!マコちゃんビビリすぎ!」
「うぅ、なんか気持ち悪くなって来た、クレープ出そう........」
「えっ?もしかしてマコちゃん........赤ちゃん出来た?」
「は?.........できる訳無い!」
「そうかな?まぁ取り敢えずベンチに座ろうか?」
クリスに背を押されて、手近のベンチに腰を下ろす。
クリスも一緒に腰を下ろすけれど、座ってもまだソワソワしてる風。
「クリス?僕、暫く此処で休んでるから、他の乗り物に乗って来ても良いよ?」
「えっ?良いの?でも.......」
戸惑いは見せるものの、行きたいのは丸分かり。
チラチラとコースターの方を見てるし。
「良いよ、どうせ怖いのに乗りたいんでしょ?」
「本当に良いの?行くよ?マコちゃんはちゃんと此処で休んでなよ?後でね!」
喜び勇んでクリスは駆けて行った。
僕は小さく手を振り、白猫のお面を被り直して、ベンチにダラリともたれ掛かり溜息を吐いた。
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「起きて!マコちゃん、起きて!」
突然肩を揺すられて、はっと意識が覚醒して、お面を外して辺りを見廻す。
どうやらいつの間にか眠ってたみたい。
お面を被ってて気付かない間に、日は沈みかけて周りは夕日に赤く染まってる。
クリスはなんだかやり切った感じの満足気な表情、楽しかったんだね。
「クリスお帰り、そろそろ遅くなったし、ホテルに戻ろうか?」
園を出て、スクーターを出して、ゆっくりと走り出した。
赤く染まってドラマにでも出て来そうな海岸道路を眺めながらホテルに向かう。
ホテルに到着する頃には日は完全に沈み、どっぷりと暗くなった。
煌々と灯るホテルの灯りがお帰りと言っている様。
ホテル前のロータリーにスクーターを止めて、シュシュの魔石に片付ける。
扉を潜り、ロビーに入るとフロントでは受付のお姉さんと男の人が揉めてた。
僕とクリスに気付いたお姉さんが言い合いしていた男の人を遮り、僕達に声をかけて来た。
「お帰りなさい、マコト様、クリストファー様!お疲れのところすみません、此方の.......」
お姉さんが話し終え無い所で、言い合いをしていた男の人が僕達に走り寄って来た。
そして必死の形相で言い募る。
「りっ、リサと一緒じゃなかったのか!?」
「「えっ?リサさん??」」
リサって喫茶店に案内してくれた、あのリサ?えっと、それでこの人は誰?
疑問を抱えてオズオズと男性に尋ねてみる。
「あの、失礼ですけど、どちら様?」
「あっあぁすまん、あんた達昨日の昼にリサが家の喫茶店に連れて来てた二人だよな?」
「喫茶店?あぁ昨日、はい!そうですけど、えっとリサさんの.........」
「俺はリサの父で、あの喫茶店のマスターをしてる、今日あんた達のとこにリサ来てないか?」
「えっ?今日、リサさんとは会ってないですけど?リサさんどうかしました?」
「いや、朝出てってから、まだ戻らないんだよ!昨日店で、あんた達と遊ぶ話ししてただろ?来てないかと思ってな?」
リサのお父さんだったんだ!喫茶店ではキッチンにいたのかな?見てないから分かんなかったよ!でも、帰ってないってまだ日が暮れたばっかりなのに心配し過ぎじゃ無い?
女の子のお父さんってこんな感じ?
過保護だな〜なんて思ってると、クリスがこの場面で言っちゃいけない一言を!
「えー彼氏の所にお泊まりじゃ無いの?」
「彼氏.......お泊り........!リサの奴、そんな男が居たのか?俺、聞いてないぞ!」
「ちょ!ちょっと、おじさん落ち着いて!クリス!変な事言っちゃダメだよ!あっ!きっと女の子のお友達の所に居るんじゃ無いんですか!きっとそうた!取り敢えず朝まで待ってみるとか?」
僕はクリスの一言で荒れ狂い始めたおじさんを必死でなだめる。
仮に本当に彼氏の所だったとしても朝には帰るだろうし?
その後は親子のお話し合いをして下さい!とリサに祈りを捧げる。
クリスは、ヤバ!と言う顔をして僕の後ろに逃げ込んだ。
「そうだな、取り敢えず朝まで待つか......帰らなかったらギルドに依頼するか.......」
「ギルド?」
突然おじさんの口から出たギルドの言葉に戸惑う、そうか、警察なんてこの世界には無いし、こう言うのはギルドの仕事なのかな?
でも、一晩帰らなかったらギルドとか、大袈裟すぎる。
取り敢えず、僕達とのやり取りで少し落ち着いた風のおじさんは一言お詫びの言葉を残して帰って行った。
でも、リサは一体何処に行ってるのかな?
そう言えばギルド.......なんか忘れてる気がする。
「!そうだ!手紙!」
「どうしたの、マコちゃん?突然」
「僕もギルドに行かなきゃ!ギルマスの三郎さんから、こっちのギルマスに手紙、預かってたじゃん!」
「あぁ!そう言えばチケット貰う時、預かってたね!じゃあ明日行ってみる?」
すっかり忘れてた!リサの事も気になるし、明日はゼップの街のギルドに行ってみよう。
どうせ手紙を渡すだけだし、終わったらまた遊べるしね!
..........なんて、この時は軽く考えてたんだよね..........




