礼拝室?
クロノア市国、クロノア大聖堂、特別礼拝室。
マコトとクリスがゼップの街に降り立った数時間後、リーベルーラは祭壇の前に立つ大司教エリオスの前に跪いていた。
エリオスは黒に金の縁取りをされた法衣を纏い、大司教の役を務めるには年若く、まだ30歳前半、一見、優男風に見えるがその眼光には野心を覗かせる。
側には黒のスレンダーラインのドレスを着たミコトの姿があった。
エリオスは跪き報告を述べるリーベルーラを見下ろしたまま口を開く。
「魔物の群れを壊滅させたのはエルリースでは無い、と言うのは本当の事なのだな?」
「はい、事実です。マコトと言う冒険者が殲滅したと部下から聞いております」
「ドラゴンもか?」
「はい」
「信じられん、勇者が現れたのかとも思っていたが違うのか?何者だ?そのマコトと言う者は?」
「分かりません、王都に現れる前の情報が全く掴めませんでした」
リーベルーラは顔を上げチラリとミコトに視線を送った後、話を続ける。
「エミナ様で無い事は確かです。エミナ様で有ればエルリースが何らかのアクションを起こす筈ですし、私自身が本人と会い確認しております。それから今後の戦力はどう致しますか?」
「取り敢えず今は良い、元々王都とエルリースの実力を測る為の戦力だ、暫くはそのマコトと言う冒険者の動向も注視するように」
リーベルーラは頭を垂れるとエリオスは何事か考えを巡らすように俯き礼拝室を出て行く。
ミコトはエリオスの背を見送り、完全に扉が閉まるのを待って口を開く。
「喋らなかったのね?」
「私はミコルート様に忠誠を誓っているのであって、あの男の僕ではありませんので」
「私はミコトよ」
「失礼しました、ミコト様。あの、お聞きしても宜しいでしょうか?」
「言いたい事は分かるわ」
「はい、マコト様もミコト様と同じようなマコファール様の.......」
「違うわね.......あの子は私のようなカケラでは無いわ。血筋の転生者になるのかしらね?」
「血筋......まさかマコファール様の.......あちらの世界の.......」
「あまり詮索するのは良く無いわ。知りすぎるのは身を滅ぼすわよ?」
「失礼しました」
慌ててリーベルーラは頭を垂れる。
ミコトは「マコは厄介なものを残したわね」と祭壇の後ろにそびえ立つクリスタルの柱を見つめて呟き溜息を吐く。
そして何かを思い出した様にハッとして、見た目の年齢相応な悪戯っ子のような笑顔を浮かべて跪くリーベルーラに目を向けて口を開く。
「そう言えばね、ベル?あちらの世界には貴方が見た事もないような駄菓子が売っていたわよ?」
リーベルーラはパッと顔を上げ悲壮感漂うような顔になりながら言い募る。
「ミコト様!なんで!何で買ってきて下さらないのですか?!次は!次は何時!何時行かれますか?買ってきて下さいませ!お願いします!」
「んー?覚えていたらね?」
「そんなぁ.....」




