魔力の要らない魔法?
周り全てからの歓声と拍手に照れながら、小走りでマーサの居る場所まで走り寄る。
羨望の視線の中、不意にとても異質な、それは悪意?憎悪を感じる冷たい視線に気付き目を向ける。
ベルさん?
その視線の元はいつの間にかホールに訪れていたリーベルーラのものだった。
そしてその悪意ある視線の先は僕の隣にいるクリスに向けられたものだと気付く。
リーベルーラは僕の視線に気付いて元の柔和な笑顔を浮かべる。
気のせい?変に気を回しすぎかな?
「マコト、クリスさん、お疲れ!」
マーサが拍手を続けながら声をかけて来た。
リーベルーラから視線を外してマーサに向き直る。
「みんな見てるって思って無かったから恥ずかしいよ」
「そうか?なかなか感動物だったぞ」
「そう?」
「「「「「 マコト(さん)!!!!! 」」」」」
突然背後から呼び止められ振り向くと、ニコニコ顔の騎士団長と男の人達が!しかもさっきより人数増えてる!
「さあ!次は俺と踊る番だ!」「いや!私と!」「私と踊りましょう!」「次は私です!」「何を!私の番!」「いやいや私ですよね?」「是非私と!」
何でそうなるの?なんで男同士で踊らなきゃなんないの?
この人達、普通に断ってもしつこそうだ、簡単には諦めてくれそうには無い。
しょうがない、あれを使おう!使いたくは無かった......使いたくは無いけれど。
胸の前で両手をキュッと!上目遣い!甘ったるい声で!
「アレク様ぁ?」きゃるるーん!
「ブフォ!」
背後でマーサが飲みかけのドリンクを噴き出した!
振り返り、射殺す様な視線を向けるとマーサはサッと視線を逸らす。
視線を戻して続ける。
「僕ぅ......もう疲れちゃったのぉ......お部屋に帰ってお休みしたいなぁ?」コテりんこ!
ズキューン!
騎士団長をはじめ、そこにいた男達は胸を押さえて身悶える。
決まった!魔力の要らないチャーム(魅了魔法)!
「きょ、今日の所は、しっ仕方がないなあ、ゆっくり休むと良いと思うぞ」
「「「「 どっどうぞ、お休み下さい!マコトさん! 」」」」」
「みんな、どうもありがとう!またねぇー!」
僕は手を振りながらクリスの腕を引っ掴み、リーベルーラの元へ!
「ベルさん!ごめんなさい、こんな事になったのでまた今度!」
リーベルーラはチラリと騎士団長達の方に視線を向けて溜息を吐く。
「まあ、しょうがないわよね、勿論クロノアの観光もするのでしょう?その時にでもまた会いましょう?」
「はい!クロノアで!それじゃ!」
クリスの腕を引っ掴んだまま、小走りでエレベーターへ!
エレベーターに乗り込み扉が閉まると同時に僕は壁の鏡に手を付き項垂れる。
「マコちゃん!チョー可愛い!頂きました!」
そう言ってクリスは親指を突き出す。
「お粗末様でした.......」
僕は瀕死になる程のHPと大切な何かを失った。
部屋に戻り失ったHPを取り戻すべく、今日は早めに就寝!
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翌朝、フワフワの高級ベットの上でカーテンの隙間から溢れる光に気持ちよく目を覚ます。
クリスも丁度起き出して来た。
朝の支度をして着替えて朝食を食べに食堂へ。
モーニングセットは、トースト、ハムエッグ、サラダにカフェオレ。
「ねぇクリスは昨日ダンスの時、身体強化魔法.....使った?」
「魔法?あぁ!あの時はビックリしたよ!何か急に身体が軽くなった感じ?あれが身体強化魔法なんだねえ、今まで感じた事のない身体に漲る魔力を感じたよ」
「そうなんだ?今は?」
「んーどうだろう?分かんないなぁ?お姉ちゃんから聞いた事はあるんだよね、魔力補助?だっけ?他人から魔力を補助して貰って魔力を強化する話し、昨日のはそんなのなのかな?」
「多分そうなんだと思う、だからクリスの魔力も強化されたのかもしれないね」
「そぉかぁー何かちょっと嬉しいかも!」
朝食を終えて、丁度お部屋に戻った時に船内アナウンスが入った。
『この度は、当魔導客船をご利用頂き誠にありがとうございます。間も無く当船はゼップに到着致します。ゼップにて下船のお客様はフロントにてチェックアウトを早めに済ませて頂きますよう、お願い致します。この度のご利用誠にありがとうございました。お忘れ物の無いよう、お気を付けくださいませ」
僕とクリスはバルコニーに出てみる。
「わー!海ー!」
眼下に広がる海、そして、なだらかな丘に立ち昇る湯気とゼップの街が広がる。
ゲームで見た温泉の街、ゼップ!ゲームの中では体感出来ない、本物の温泉がある!
暫くバルコニーからの景色を堪能して、部屋に入り荷物を纏めていると、扉をノックされ、部屋付きのメイドさんが入ってきた。
「荷物はもう纏められたのですか?あぁ!そう言えばマジックバックでしたね!チェックアウトの手続きは完了しておりますのでフロントまでお見送り致します」
メイドさんに案内されフロントへ、丁度フロントへ降りたと同時に搭乗口が開くのが見える。
そのままメイドさんに連れられ搭乗口へ。
「それではマコト様、クリストファー様、行ってらっしゃいませ!」
「「お世話になりました!!」」
メイドさんに見送られ、手を振りながらタラップに踏み出す。
「来たー!ゼップの街!」
「来ちゃったねぇー!楽しみぃー!」




