特別客室?
魔導船に乗り込み、まず目に飛び込んで来たのは高級ホテルのような豪華なロビー、フロントのカウンターにはチェクインの為の客が並んでいる。
取り敢えず客の列に並んで順番を待っていると直ぐに自分達の番は回って来る。
クリスがチケットを出すと受付嬢はそれを確認して客室係だろう女性を呼び案内を始める。
「マコト様とクリストファー様ですね?本日は当客船をご利用頂き誠に有難う御座います、
本日のお部屋は特別客室となっております、此方の客室係よりお部屋へご案内させて頂きます、どうぞごゆっくりお過ごし下さいませ」
そう言って受付と客室係はペコリと頭を下げる、客室係は僕達の手元を見て訝しそうに問いかけて来る。
「あの?失礼ですがお荷物はどちらに?」
「えっとこれだけですけど?」
そう言ってクリスが肩から下げたバックを見せると客室係はハッとした表情になりオズオズと聞いてきた。
「もしかしてそちらはマジックバックですか?」
「そうですけど?何か?」
「いえ、初めて見たものですから、流石特別客室のお客様は凄い物をお持ちなんだなと、そうそうお目に掛かれる物では御座いませんので、では、お部屋へご案内致します」
そう言って案内を始めた客室係に付いて歩こうとすると背後から声がかかった。
声をかけてきたのは別の受付でチェクインを済ませたリーベルーラだった。
「クリスちゃん達、後でお部屋に行っても良いかしら?せっかくなので色々お話ししたいし、どう?」
「私は構いませんけど、どうするマコちゃん?」
「僕も別に構わないですよ?」
「そう?ありがとう、それじゃあ後で伺うわね?ウフフ」
そう言ってリーベルーラは自分の部屋へと去って行く。
僕達は客室係に案内されてエレベーターへ、此方の世界でもエレベーター有るんだね?初めて見た!魔力で動いてるのかな?
エレベーターで降りたフロアーには扉が一つだけ、その扉を客室係が開き中に入る。
「「わー!!広ーい!!」」
思わずクリスと二人同じ感想が声に出る、エルリースの部屋ぐらいの広い部屋の前方は全面ガラス張りで、バルコニーと景色が一面に広がる。
既に船は出港していたみたいでそれなりの高度に達していた、全く揺れもないので動いていたのに全く気づかなかった。
「それでは何か御用が御座いましたらそちらのベルでお呼び下さいませ、ごゆっくりお過ごし下さい」
客室係は深々と例をして退室して行った。
僕とクリスは部屋の中央に置かれた二人でゴロゴロ寝そべれるくらいの大きく広いソファーセットに腰掛ける。
「マコちゃん?取り敢えずどうする?」
「んー部屋の設備でも見て回る?」
部屋には他にも扉がいくつか有り、何があるのか見ときたい。
立ち上がり直ぐに目に付いたキッチンカウンターに向かい冷蔵庫らしき扉を開く。
中には飲み物が各種取り揃えられ綺麗に並べられてる、氷も出来てる。
「マコちゃん!こっち寝室だよ!」
呼ばれて寝室に向かうと広い寝室にはダブルサイズのベッドが二つ並べられている。
中に入り、カーテンを開くとリビングからバルコニーが続いてる。
リビングに戻りもう一つの扉を開くと洗面脱衣室に二人並んで使っても充分広い洗面化粧台が有りトイレはウォシュレット付き、浴室も広くて大きな窓が、空の上だから誰も覗かないしね。
ひとしきり部屋中を見て周りリビングのソファーに戻り腰掛ける。
クリスは冷蔵庫から瓶入りのアイスティーを二本持ってきて一つを手渡してくれる。
「マコちゃん、凄いお部屋だね.......」
「王様が用意してくれただけは有るよね?なんだかこんな贅沢して良いのかな?」
「んードラゴンを倒した褒賞と思って良いんじゃない?結局報奨金は無かった訳だしさ」
「それもそうかな?そう思う事にしとく!」
伸びをして寛ぎモードに入ろうかと言う時、扉がノックされた。
「はぁい!」と言って扉を開くとそこにはリーベルーラが紙袋を持って笑顔で立っていた。
「リーベルーラさん!いらっしゃい、中にどうぞ」
「お邪魔するわね、あらー凄いお部屋ねーこれが特別客室なのね?あっ私の事『ベル』で良いわよ、マコちゃんって呼んでも良いかしら、ルミエールがマコちゃん、マコちゃん言ってたからそっちの方が呼びやすそうだわ」
「はい!良いですよベルさん」
リーベルーラはニコリと微笑み、僕はソファーに座る様に促す。
クリスは冷蔵庫からアイスティーをもう一本持ってくる。
「ベルさん、アイスティーで良いですか?瓶入りですけど」
「あらクリスちゃん、どうもありがとう、丁度喉も乾いていたから嬉しいわ、そうだ、良かったらこれ食べてね!」
そう言って持っていた紙袋から中の物を広げる、お菓子?紙袋からは十五センチ程の長さの長方形の小袋が、小袋にはコンポタ、チーズ、たこ焼き、めんたい等書いてる、ん?これってもしかして?
「じゃあ!僕このコンポタ貰います」
そう言って袋を開けて見るとやっぱりアレっぽい10円の美味しい棒!齧ってみるとまさにアレのコンポタ!
「じゃあ私はチーズ!」
クリスはチーズを選んだ、何処の世界でも同じ様な物を考える人っているんだね?ん?もしかしてこれもエミナが持ち込んだ訳じゃないよね?
「所でマコちゃん達は夜のダンスパーティは出るのかしら?」
「私は出ようかと思ってるんですけど、マコちゃんは踊れる?」
「うーん..........一応大丈夫、出てみようか?」
クリスの意外な「出ようと思う」と言う言葉に少し考えて返事をする、エルリースがドレスも送って来てたし、多分ダンスって社交ダンス的な物だよね?
一応僕は意外にも踊れる、何故なら小学生の時にお年寄りの社交ダンスのサークルにボランティアで暫く通ってた時が有るから、そこで無難に踊れるくらいには教えて貰ってた、人生何が役に立つか分からない。
「そう?二人とも行くのなら私も覗きに行ってみようかしら?」
「ベルさんもダンス踊れるんですか?」
「そうね、職業柄貴族の方とのお付き合いもあるのよね、だから一応は嗜む程度にはね、それよりマコちゃん?家のルミエールは調査の時に迷惑かけたりして無かったかしら?」
「迷惑なんて事は全然無かったですよ、あれこれ気遣ってくれるし、それに港では命も助けられたし」
ルミエールには悪い印象は無い、強いて言うなら世話焼きのお姉さん、と言う感じかな?
「あぁ、港に出た魔物ね?大変だったみたいね?あの子聖魔法に関しては天才なのよね、次の昇級試験では推したいの、だけど......良い子なのは分かってるのだけれど言動がアレなのよね.......」
聖魔法か、確かあの時ルミエールが使ったリザレクションはビショップレベルの高等魔法の筈、ん?リーベルーラの言うアレってアレかな?確か調査に無理矢理同行する為に上司を柱に縛りつけて来たって......縛り付けられたのはリーベルーラ?
「あの.......もしかしてベルさんが柱に?.......」
「!そうなのよー!酷いのよあの子ったら!あの後誰も見つけてくれなくて半日くらい放置されてたのよ!トイレには行きたくなるし、お腹は空くし、散々だったわ!」
「そっそれはご愁傷様でした.......」
暫くは調査の時や教会でのルミエールの話や、小さい時のエルリースの話を聞いたりして盛り上がった。
不意にリーベルーラは穏やかな顔から一転して真剣な顔になる。
「所でマコちゃんの魔法は誰かに習ったの?エリスみたいに勇者様とか?」
「えっと誰かに習った訳では無いと思います?」
「ん?何故疑問形なの?」
ゲームで覚えました!なんて言える訳が無い、習った、っと言われればチュートリアルで習いましたと言えなくも無いかな?自ずと答えが疑問形になってしまった。
「んーと色んな人のを見て覚えたと言うか.........自然と身に付いた?みたいな?」
その答えにリーベルーラの目が探る様な、異質な物を見る様な目になる、そしてボソリと小声で呟く。
「マコファール........」
「!..........」
僕はその呟きを聞き逃さなかった、同じくクリスも。
クリスが横からリーベルーラに見えない様に僕の太腿を突っつく、クリスの膝元を見ると指で小さくバツを作っているのに気付く。
僕はそこから視線を外してリーベルーラの目を見る、あのバツは喋るな!って意味だと思う、クリスの真意は分からないけれど.......
リーベルーラは視線を合わせてジッと僕の瞳を見つめる、僕はさっきの呟きを聞いていなかったかの様に平静を保つ。
不意に訪れた静けさが時間を何倍にも長く感じさせる、思うほど長くは無かったのだろう見つめ合いに終止符を打つのはリーベルーラ。
瞳を閉じ顔を伏せ、次に顔を上げた時には既に元の和かな顔に戻っていた。
「そろそろ戻ろうかしらね、報告書とかの仕事も有るし、紅茶ご馳走さま、後はパーティで会いましょう」
そう言ってリーベルーラは立ち上がり和かに手を軽く振って部屋を出て行った。
リーベルーラが部屋を出て少し間を置いてクリスに尋ねる。
「クリス?さっきのはどう言う事?」
「.........私、ベルさんが小さい時から苦手なんだよね........」
「苦手?それだけ?でもエル様の友達なんだよね?小さい時からの?」
「.......うん、まあそうなんだけど、怖かったんだよね、昔から.......お姉ちゃんを見つめる時のあの人の瞳が........」
「瞳が.......」
確かに、あの僕の瞳の奥まで見通そうとする探る様な瞳は、冷たく冷酷ささえ感じた、それに「マコファール」の呟き、一体僕の何を知って何を探ろうとしているの?
「とにかくあの人には気をつけた方がいいと思う、下手な事は喋らずに.......」
「そうだね、クリスの言う通りかも......」
「所でマコちゃん?お腹空かない?」
「うん、空いたかも?朝食べてないし、美味しい棒一本じゃあ足りないよね?」
「じゃあマコちゃん!食堂に行ってみようか?」
「うん!行く!」
そうして二人で食堂へと繰り出す事とした。




