魔導船?
朝目覚めるとクリスは既に起きていて、もう支度を始めてる。
「クリスおはよう.......はっ早いね?」
「楽しみ過ぎて早く起きちゃった!マコちゃんも早く顔洗っておいでよ」
半分寝ぼけた頭で旅行の事を思い出す。
急がないと!慌てて洗面室に向かい朝の支度を整える。
戻って来るなりクリスに「今日の服!」と言って洋服一式渡される。
「え?ヤダよ!コレ........」
渡されたのはミニ丈で裾には凝ったレースを施した薄いピンクのワンピ、肩口広めのティアードスリーブの袖、腰にリボンで清楚系お嬢様スタイル。
「我儘言わないの!」
「我儘じゃ無いよ!デニムのショーパンあったじゃん!あれが良い!」
「あれ水着だよ?」
「そんなの側から見たら分かんないって!」
「ダメ!魔導船だよ?ちゃんとした格好じゃ無いと!ほら!もう時間無いって!」
もう、本当に時間無い!文句は言い足りないけどしょうがない、ムスムスしながら慌てて着替える、失敗した!水着を全部クリスのバックに入れてた!後悔先に立たず。
着替え終えて、髪もシュシュでサイドに纏める。
「クリス?ペチコートもいる?」
「いるよ!後これサンダル!」
そう言ってクリスが渡して来たのは白のちょっとヒール高めのアンクルストラップサンダル。
全て用意を済ませてバックを肩に掛け食堂に、ご飯食べてる暇無いね。
厨房のおじさん、おばさんに「行ってきます!」と声をかける。
ヒョイと厨房から顔だけ出したおばさんが微笑んで手を振る、僕達も手を振って宿を出る。
「クリス、間に合いそうに無いからスクーターで行こう!」
そう言ってスクーターを出して半キャプをクリスに渡す。
スクーターに跨って気付いた!今日パニエ履いてない!スカートを太腿の間に挟み込みめくれないように、クリスが乗った所でスクーターのアクセルを捻った。
心持ち何時もよりスピード早め!歩くよりは良いよね?
「もう!マコちゃんが我儘言うからバタバタになっちゃったじゃん!」
「だってこんな格好、ショーパン履くつもりだったのに!」
「だからあれは水着だって!それにあっちの方がめっちゃ足出るのに?それは良いの?」
朝早く、人通りの少ないギルド広場、市場通りを駆け抜けて港が見えてきた。
「わぁ!魔導船大きい!」
港には前回停まっていなかった一際大きくて豪華客船!っと言った感じの魔導船が停泊している。
既に乗船が始まってるみたいで船の近くは貴族風の人や裕福そうな人達が集まっていた。
船の近くまで来てスクーターを止める。
僕は半キャップやスクーターを片付け、クリスはバックからチケットを取り出す。
そこに不意に聞いた事のある声で呼び止められた。
「マコちゃん!」
「ルミさん?!」
振り返るとそこにはルミエールと青い髪でショートボブのほんわりした感じの女性が、エルリースと同年代ぐらいだろうか、ルミエールに似た意匠の白地に銀色の法衣を纏っている。
女性は僕の顔を見るなり驚愕の表情を浮かべ固まる。
ん?何をそんなに驚いてるの?それより誰だろうこの人?
「マコちゃん今日から例の旅行っすか?」
「そうだけど、えっ!ルミさん知ってたの?」
「教会の情報網を舐めて貰っちゃ困るっす!」
「ルミさん?所でそちらは?」
「あぁ!紹介するっす!ウチの上司でエミーナ王都教会の統括ビショップのリーベルーラっす、姉さん!話してたマコちゃんっす!」
そう言って僕とリーベルーラにそれぞれルミエールが紹介してくれた。
リーベルーラは先程の驚愕の顔からほんわりした優しい笑顔に戻る。
「あぁ!ルミさんが調査の時お..ムグゥ!」
言いかけるのをルミエールは慌てて僕の口を塞ぐ。
「お?」
訝しげに呟くリーベルーラにルミエールは言い募る。
「おっおっお姉さまの様に慕ってる綺麗な上司って言ってたっすんよ!ねっ!ねっ!マコちゃん!」
僕はルミエールに羽交い締めにされ、口を塞がれたまま、リーベルーラをチラリと見ると、顔は笑顔、でも目が笑ってない!慌てて首を縦に何度も振る、こっ怖い!
「貴方がマコトさん?んー変ね?私、男の子だって聞いていたのだけれど?」
「え?僕、男の子ですけど.......」
「え?本当に?.......じゃあ何でそんな格好なの?まぁとてもお似合ですけども..........」
「うっ.......お金が無いから......貧乏だから......」
「......そっそうなのですか........」
「所でルミさん達も旅行ですか?」
「ウチは姉さんの見送りっす!」
「私はクロノア市国に定期報告に行く所なの、船、ご一緒させて頂く事になるみたい、クリスちゃんもお久しぶりね」
確かクロノア市国はゼップの先の方にある島だった、魔導船はゼップからクロノアに行くルートになってるんだろうね、クロノアは小さい島だけれど、中立を保つ教会の総本山がある独立国だ。
リーベルーラはクリスにも声をかけたのでクリスもかしこまって返事を返す。
「ベルさん、ご無沙汰してます」
「ん?クリスは知り合いなの?」
「うん、ベルさんはお姉ちゃんの子供の時からのお友達だよ?」
「へーそうなんだ?」
「三人ともそろそろ乗船しないとまずいっすよ!」
ルミエールに言われて、ふと船の周りを見ると殆どの客が既に乗船してしまっていた、慌ててリーベルーラを含めた三人で乗船口に進む。
ルミエールが手を振りながら僕達を見送る。
「三人とも気を付けて!お土産宜しくっす!」
振り返り手を振って僕とクリス、リーベルーラは豪華魔導客船に乗り込んだ。




