旅行の支度?
朝のギルド前の広場は露店の準備をしている人達だけが屋台を建てたり商品の準備をしていて、通りに人気は無い。
ギルド跡地は相変わらず更地になって真新しい資材が積み重ねられてる。
ボロい仮設ギルドの前まで来て僕は溜め息を吐く。
「マコちゃん?なんだか扉だけやけに豪華だね?」
「この間、僕が壊しちゃたから.........」
「それじゃコレも褒賞の一部が使われてるんだ......」
僕は無言のまま真新しい扉を押し開き中に入る、ギルドの中は沢山の人がいて、掲示板を見る冒険者や受付を待つ商人らしき人、立ち話をする人など。
それらの人達が入ってきた僕達に一斉に視線を向けて来た。
ヒソヒソ....「あの小さい方の子が倒したって?」「ゴールドカードを授与されたらしいぞ」「あんなに可愛らしいのに」「複数の貴族から求婚されてるらしいぞ」「ギルドの建て替えにポンとお金を出したって?」「メイド服?貴族の令嬢じゃ無いのか?」
なんだか恐ろしい話、事実じゃ無い話が混じってる気もするけれどドラゴンを討伐した事が広がってるのかな?
取り敢えずサーニャさんを探してるけど見当たらない、その時奥の方でどよめきが起こった。
「ギルマス?」「初めて見た!」「ダークエルフか?聞いてはいたが」「珍しい!何があるんだ!」
人々のどよめきと珍獣でも見たかのような好奇の目も気にする事なくギルマスの三郎は入り口近くの僕達に近寄って来た。
「ヤー!マコちゃん!相変わらず可愛ユイねー騒がシーからユーが来たのが直ぐワカッタヨー!」
相変わらず訳の分からない喋り方をするギルマスだ、ちゃんと喋れるの知ってるんだから!
それにしてもギルマスは、何で出て来たの?もしかして待ってた?
「何か用ですかギルマス?それからちゃんと喋って下さい」
「ユーは何言ってるの?ボクは何時も通りサー、それよりクーポンの交換に来たんダヨネー?別室に行くヨー、ロキシー!クーポンの交換を頼むヨー!」
三郎は僕達を別室に促しながら商業系の受付で作業をしていた受付嬢の一人に声をかけた。
受付嬢の一人が立ち上がりパタパタと受付の裏に下がった。
僕とクリスは三郎に連れられ前回も案内された個室に入りソファーに座るように促される。
クリスと並んで腰掛けると三郎は僕達の向かいに腰を下ろした。
程なくして個室のドアがノックされ先程ロキシーと呼ばれた受付嬢が入って来た。
赤毛の髪を三つ編みにし年の頃は僕達より少し上くらいだろうか?ギルド職員の制服も新しい感じがする、何処かオドオドした感じで新人さんなのだろうか?トレーを持ちその上には紙束と紅茶のセットが乗せられている。
ロキシーはカップを僕とクリス、三郎の目の前に置きポットから紅茶を注ぐと三郎の横に腰を下ろした。
三郎に促され紅茶に口をつける、ふんわり薔薇の香りが漂う、ローズティーだね。
僕とクリスがカップを置いたのを見計らってロキシーが口を開いた。
「はっ初めましてマコト様、クリス様、えっと、今回のご旅行を担当させて頂きます!ろっロキシーと申します、ど、どうぞよろしくお願い致します」
どもりながら頭を下げ、挨拶を終えたロキシーはホッと息を吐いた。
「「よろしくお願いします......」」
僕とクリスは同時に返事を返す、チラリと三郎をみると新人を採点してるのだろうか?ロキシーの挙動を見守るようにロキシーから視線を離さずにいた。
そんな三郎に質問してみる。
「ギルマス、今日はサーニャさんを見かけないんですけど、どうかしました?」
「ん?あぁ........出張サー!暫く主張なのサー」
「.........どこに?」
なんだかギルマスの様子がおかしいような気がする。
何か隠してない?疑惑の目でギルマスを見ながら問いかけるとツイっと視線を逸らされた。
話を逸らすようにギルマスは言い募る。
「そっそんな事より!マコちゃんに折り入って頼みがあるのサー!そっそんな大した事じゃあ無いヨー!ゼ、ゼップで末の弟がギルマスをやってるカラこの手紙を持って行って欲しいのさー!ユーには簡単なお仕事ダヨネー?」
「んーギルマスって何人兄弟何ですか?」
「オー!家は五人兄弟ダヨ?それがどうかしたのカイ?」
「と、言う事はゼップのギルマスは五郎さんですよね?」
「!ユーは何で名前が分かるんダイ?占い師カイ?」
「..........いや、分かりますって.....まぁ手紙くらいなら持って行きますよ?」
「恩に着るヨー!ゼップのお土産屋さんで使える商品券をあげるカラ宜しく頼むヨー!」
そう言って三郎は薄っぺらい手紙と商品券を僕に渡して来たのでお礼を言ってポケットに押し込む。
会話が途切れた所で先程から機会を伺っていたロキシーが口を開く。
「そっそれでは説明宜しいでしょうか?マコト様、クーポンをお願いします」
僕は王様から貰ったクーポンを封筒から出してテーブルに置いた、ロキシーがそれを恭しく手に取り確認して懐に、代わりにトレーに乗っていた紙束を僕とクリスの前に広げて説明が始まった。
説明は魔導船の乗船券から始まり、ホテルの宿泊券、オプションツアーの参加券各種アトラクションの利用券等々、かなりの枚数。
「..........お食事は魔導船内は食堂でお好きな時に全て無料で自由に食べられます、ホテルでは朝、夕はホテルの食堂で、都度ホテル側から説明が有ります、昼食は此方のゼップ温泉共通お食事券をご利用下さい、殆どのお店で利用可能です、以上ですが何かご質問はありますか?」
長い......凄く長かった、説明に関してのロキシーは全て淀みなくて、仕事は出来る人なんだろう事は分かった。
それにしても至れり尽くせり!流石王様が用意してくれた旅行だよね?
「マコちゃん?チケット私が預かっとこうか?」
大量のチケットを見てクリスが提案してくれる。
何時も宿のレジの管理をしてるクリスが持ってる方が無難だよね?僕が持ってると無くしそうだし。
「じゃあクリスお願い」
「任せといて!」
クリスにチケットを全て渡してギルマスとロキシーに向き直る。
コレでギルドの用事もおわりかな?
「じゃあ僕達帰りますね?」
「はい、マコト様、クリス様、お気を付けて良い旅を!」
「じゃあマコちゃん、手紙宜しくネー!」
立ち上がり、扉まで見送るギルマスとロキシーにクリスと頭を軽く下げてギルドを後にした。
宿に帰りその日は早めにお仕事も終わったので、旅行の準備を始める、とは言ってもエルリースから貰った新しいバックに貰った品々を詰めるだけなんだけど。
用意を終わらせて翌日の早い出発時間に合わせて今日は早めに就寝する事にした。




