クーポン?
「ただいまー」
僕はスクーターを片付けて扉を押し開き声をかけた。
「お帰りマコちゃん、早かったね?お買い物出来た?」
「.......してない、取り上げられたよ、残ったのこれだけ.........」
僕はポケットに入れていた300Gをクリスに見せる。
クリスはチラリと僕の手の上のコインを見て、さも当然の如く言い放つ。
「まぁ借金にならなかっただけ良かったんじゃ無い?」
「え?クリス、こうなるって思ってたの?」
「え?思わない方が可笑しいよ?ギルドはあんな事になったのに、昔、家に泊まってたお客さんでギルドの壁壊して借金負って夜逃げした人もいたし、昔からサーニャはお金に厳しいんだよ」
「分かってたなら教えてよ!」
「ウキウキソワソワしてたから言いにくかったんだよ!それより、お昼まだでしょ?用意してくるから座ってて」
そう言ってクリスは厨房に行く、僕は端の方のテーブル席に腰を下ろした。
程なくしてトレーを持ったクリスが席にやってきて腰を下ろした。
今日のランチはパスタセット、辛さ控えめアラビアータとサラダ、ポタージュのセット。
飲み物にアイスカフェ・オ・レ、「いただきます」と言ってフォークを手に取る。
「それで謁見はどうだったの?」
「謁見?あっ!」
そう言えば、王様から貰った封筒を思い出した、ポケットから封筒を取り出す。
「これ王様から貰ったんだよね......なんだと思う?」
「なんだろう?開けてみたら?」
頷きながら僕は封筒を開けようと思ったがペーパーナイフが無い、試しに風魔法のウインドエッジを極小で作り、切ってみると思いの外綺麗に切れた。
「マコちゃん?今のも魔法?器用だね?」
「そう?」
試しにやってみただけだから、失敗してたかも知れない、そんな事は噯気にも見せずに封筒の中身を取り出す、なんだろうチケット?
「何々?何が入ってたの?」
「うん?えっと『王都ギルド特選!魔道船で行く!ゼップ温泉7泊8日!贅沢を詰め込んだ優雅な安らぎの旅!ペアご招待券(クロノア市国クロノア大聖堂オプションツアー付き)』だって.......」
「旅行!マコちゃん!」
クリスはジッと僕の目を見る、ん?なんだろう?あっ!ペアになってる、クリスを連れて行けって事?まぁ他に一緒に行く人なんて居ないんだけど、僕が誘った体にしないとダメだよね?
「クリス?一緒に行ってくれる?」
「やったー!行く行く!旅行嬉しい!私、他の街に行った事無いんだよね!」
「クリスが一緒に行ってくれると僕も安心.......あっ!でもお仕事........」
「お母さんに聞いてくる!お母さん!!」
そう言うなりクリスは厨房に走って行った、程なくおばさんと一緒に厨房から出てくる。
「あぁ、エリスの所からメイドさんが来て聞いてるよ、丁度魔物が落ち着いたとかで、お客さんも少なくなって来たから宿の事は心配しないで二人で行っておいで、それからマコちゃん宛に荷物が届いてクリスの部屋に置いて置いたから食べたら見といてね」
「荷物ですか?はい、見ときます、おばさん、ありがとう!お土産買ってきます」
おばさんは、「お土産とか気にしないで良いから楽しんでおいで」と言って厨房に戻った。
「マコちゃん?お姉ちゃんは何を送ってきたの?」
「んー、そう言えばお城で何か送った風な事を言ってたよ?エルセレクションがどうとか.........多分、僕の予想だと服?かな?クリスは見てないの?」
「市場に行ってる間に来たのかな?見てないよ、旅行用かな?」
「多分ね、僕にとってはあんまり良い物じゃ無いと思うけど........」
「じゃあ、早く食べて見に行こう!」
そうクリスが急かすのでランチを急いで食べてクリスの部屋に急ぐ。
扉を開けると冷蔵庫でも入ってるの?と、言うくらいの箱が寝かされてた。
どうやっておばさん運んだんだろ?
クリスは然程驚いた様子も無いけれどエルリースからこうやってちょくちょく荷物が来るのだろうか?
「マコちゃん!早く開けよう!」
「うん」
クリスに急かされ箱を開ける。
真っ先に目に飛び込んで来た物に僕は目眩を覚えて頭を抱える。
予想の上過ぎる!それは水着、女物のしかも真っ赤なビキニ!おまけに胸部分にパッド入り!
ご丁寧に添えられた手紙には「これでマコちゃんはビーチで視線釘付けだよ!旅行に着て行ってね!」...........着れるかー!
「あー温泉だから水着はいるよね?ビーチも有るし?」
「え?水着着て温泉入るの?」
「え?マコちゃんの世界は違うの?」
「んーそう言う所もない事は無いけど普通はお風呂と同じ感じ?」
「あー私もミリアから聞いただけだから良く分からないけどそうみたいだよ?それにほら!他の水着も入ってるよ?」
そう言われて箱の中身をよく見てみるとビキニだけかと思ったら殆どがタンキニ、パレオも有る!ワンピースでもオフショルの二の腕カバーとかはデニムのショートと合わせれば割と恥ずかしくは無いのかな?
その他にも夏物の洋服が沢山入ってる、全て女物のだけど........
他に着ていく服が無いから諦めないとダメかな?サイズ的に僕のとクリスので半分ずつ入ってるみたい、エルセレクションと言うだけあってどれも生地とか高級そうだ、クリスが着たら良いとこのお嬢様か貴族に見えるね。
どれも可愛い服ばかりだけど、報酬さえちゃんと貰えたらこんなの着なくても良いのに、はぁ.......
「ん?ドレスが入ってる?旅行に?」
「あー魔導船だよね?確か船内でダンスパーティがあるらしいよ?お姉ちゃんが言ってた」
「フーン、ダンス?それに着ていくって事かな?持っていく?」
「うーん、お姉ちゃんが入れてきたって事は持って行った方がいいんじゃない?」
「そう.........」
箱の底の方には前にお城でクリスと着た二着のドレスと他に二着、チュールなAラインの紺と白のドレスが入ってた、どちらも透し彫り刺繍が入った高級そうなドレス、サイズ的にミニ丈の白のドレスが僕用、紺のミモレ丈がクリス用かな?
他にもヒールや可愛いサンダル、日傘に麦わら帽子も数種類、化粧品のトラベルセットなんかも入ってた、至れり尽くせり。
「あっ!マコちゃん!バック入ってた!マジックバックだよ!」
クリスに言われて見てみるとお揃いで、ベージュのシックな感じのバックが入ってた。
サイズも前のバックより少し大きめ、デザイン的にも今回送られてきた服に似合いそう。
「前よりちょっと大きめ?これ全部入りそうだね?」
「お姉ちゃんのやる事だから抜かりは無いと思うけど?所で出発は何時になってるの?」
僕はチケットを取り出し日付を見る。
「.........明後日だよ...........」
「性急だね.........明日ギルドに行こう!」
「何で?」
「マコちゃんが持ってるのて、クーポンだからギルドでそれぞれのチケットに換えなきゃダメなんだよ?それに旅程表も貰わなきゃだし」
「そうなの?じゃあ明日一緒に行こう!」
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その日の夕食時、何時も通り真っ先に食堂に姿を現したのは銀狼の皆様。
僕が注文を受けに行く。
「ダームさん、お帰りなさい、注文は?」
「おう!マコト、お前ゴールドカード貰ったんだって?」
「ゴールド.......あぁ!ギルドで貰った、これですか?」
僕は首から下げた金色のギルドタグを取り出して見せる。
「あぁそれだ、それをチラつかせたら殆どの貴族は黙るしか無いからな!」
「え?コレってそんな凄い物何ですか?」
「おう!エミーナでは此処数十年発行されてないからな、相当昔にアストリアで発行されたらしいけどな」
「そうなんだ.........そう言えば明後日から僕とクリスは旅行で居なくなりますけど.........」
僕がそう言い終わる前に食堂にいた他の冒険者達がガタリと椅子を鳴らして一斉に立ち上がった。
そして一斉に言い募る。
「えー!マコちゃん居ないの!」「クリスちゃんも!」「俺の癒しが!」「付いて行く!護衛で付いて行く!」「マコちゃんとクリスちゃんの居ない雅なんて!」「どこ行くの!?」
「俺の女神がー!」「俺はこの先何を希望にすれば良いんだ!」
「ちょ!何言って.......一週間ぐらいですよ?それにおじさんとおばさんがちゃんと宿屋は......」
「マコト...........少しは察してやれ........トウコから聞いてるぞ、ゼップだって?クロノアにも行くんだろ?ちょっとクロノアで聖水買ってきてくれ、残りは選別だ」
そう言ってダームさんは一万Gを僕に手渡してきた。
ダームさんはそう言うけれど、何を察すれば良いの?
取り敢えず聖水の値段は分からないけれど、お小遣いゲットかな?
「ダームさん、ありがとうございます、お土産買って来ますね」
ダームさんは一言「おう!」と言って周りに集まった冒険者達を手振りで席に戻らせ、ビールとおつまみを注文した。
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翌日、早く起きてメイド服に着替えて朝のお仕事をこなし、クリスと二人でギルドに向かった。




