ミコト?
マコトの自宅前。
セーラー服、ショートカットの少女が玄関のチャイムを押した。
彼女はミコト、マコトの家の隣に住む幼馴染だった。
ミコトは血の繋がりも無いのにマコトに容姿が良く似ていた。
歳も同じな為、周囲からよく双子と間違われたものだ。
マコトが引き篭もってからも、時々学校帰りに家に寄って行く事があった。
何時もなら、すぐインターフォン越しに返事が有るのに、今日は返事がなかなか無い。
だらしない生活を送っている事も知っている為、少しムッとした顔をしている。
「寝てるの?」
ミコトは呟くとカバンから合鍵を取り出す。
マコトの父、マサトから預かっていた物だ。
「マコちゃん!開けますよー」
そう言いながら扉を開く、そしてすぐさまマコトの部屋のある二階に上がっていく。
マコトの部屋の前に立つと溜息を吐いて扉をノックする。
「引き篭もりさーん!起きてますかー?」
返事が無い事に溜息を吐きつつ扉を開く。
何時もならこうして合鍵で入った時は、ベットで熟睡している事が多い。
なのに今日はベットにもいない。
ベットの下には電源が入ったままのゲームが落ちていた。
最近マコトがハマってやっていたゲームだった。
マコトの父の会社から発売された物だとマコトが言っていた。
ミコトは不振に思いながら、部屋を出て家の中を見て回る。
人の気配がしない。
一通り見て回り、マコトの部屋に戻るとおもむろにポケットからスマホを出し電話帳を開く。
「マコトパパ」の表示をタップする。
三回程コール音が鳴り繋がる。
「もしもし?」
「おじさん?ミコトです!」
「ミコトちゃん?どうかしたの?」
「今、マコちゃんの部屋に来てるんですけど、マコちゃん居ないの!何かありました?」
「居ない?部屋には何かある?」
「部屋.....ゲームが付けっ放しです」
「ゲーム.....っ!ミコトちゃん!そこに居て!すぐ帰る!!」
通話は切れた。
「ゲーム.....」
ミコトはジッと床に落ちているゲームを拾い上げ、ハッとした後、能面のような表情に変わる。
さっき迄のミコトとは別人の様な冷たい声で呟く。
「マコ....こんな所に隠してたのね?何処までも私の邪魔をするマコトはまだ全てを手に入れていないマコにはもう邪魔できないものね?ふふふっ」
ミコトが嘲笑気味に微笑むと足元を見つめる。
ゆっくりと足元からミコトの体は霧が霧散するように消えて行った。
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マサトはミコトからの電話を切った後、会社を早退し急いで帰宅した。
家の玄関までたどり着き、ふと隣の家の方を見ると丁度ミコトの母が家から出て来る所だった。
マサトは慌てて呼び止める。
「すいませんお母さん、ミコトちゃんは?」
ミコトの母は、怪訝そうな顔をする。
「ミコト?誰の事を言ってます?」
「えっ?貴方の娘以外いないでしょう?ミコトちゃんですよ?」
「家に娘どころか、子供もいませんが?何方かとお間違えではありません?.....それでは失礼します」
マサトは、呆然とするがハッとして、急いで家の中に入りマコトの部屋に。
人の気配もない部屋を見て脱力しヘタリ込む。
「マコト....ミコトちゃん.....なんで.....」
そしてマサトは目を瞑り顔の前に指組み祈る様に呟く。
「マコ.....マコトをどうか、どうか頼む」
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広い神殿の講堂の様な場所、中央にはクリスタルの大きな柱が立っていた。
柱の中には同じ面差しをして其々白と黒の服を纏った二人の女性が眠る様に閉じ込められている。
突然柱の前に黒い霧が集まって来て、人型を形作り足元から霧散していくとそこからミコトが姿を現した。
ミコトは白い方の女性の前に立つとそっと左手を柱に触れ口を開く。
「マコは意地悪ね、困らせないでね」
ミコトの背後にはいつのまにか音もなく男が立っていた。
「帰って来たのか?」
「えぇ、物事は思った様には進まないものね」
「もう、此方のやり方でやらせて貰ってもいいか?」
「私に準備期間は無いのかしら?」
「準備には時間がかかり過ぎてると思うが?」
「あら?女は準備に時間がかかるものよ?急かす男は嫌われるわよ?」
「だが従って貰う、此方には契約があるのでな」
「しょうがないわね、マコがいけないのよ」
そう言って微笑むミコトの左手中指にはマコトと同じ指環が嵌められていた。




