紅茶とエルリースの部屋?
「お話しする事が無いので帰ります」
「ふぅーん?私はこの場で話しても良いんだけどな?」
「!.......」
チラリと三郎とサーニャさんに視線を向けると顔を見合わせ戸惑った表情をしてる。
何の話をされるのか分から無い、分からないだけに、この二人の前で話をされるのは面倒だ。
それにエルリースのお付きのメイドさんも居る。
「エルリース様、我々はギルドに戻ります.......」
不穏な雰囲気を察知したのか、三郎が口を開いた。
やけに真面目に.......て、言うか普通に喋れるじゃん!
「ぼっ僕も一緒に.......」
「じゃあ!私も一緒に〜」
「なっ!何で?エル様はダメ!」
「えー実家に帰るのにマコちゃんの許可がいるのかなぁ〜?」
「じっ、実家?あ!」
そうだった、実感無いけど『雅』はエルリースの実家だ、どう言ったとしても追い詰められる場面しか想像出来ない。
「.....わっ.....分かりました、お話し.......お話しすれば良いんでしょう!」
完全に僕の敗北、女の人には口では絶対に勝てないよ.....
エルリースはニコリと微笑んで、三郎達に「またね」と手を振ると二人は深く礼をする。
立ち去る二人を僕は恨めしく横目で眺めながらエルリースに背を押されて歩き出した。
エルリースは何かに気付いてるような気がする、エミナとも交流が有った訳だから色々知ってそうな気もするし.....
!.......そうだ!これはエミナの事を聞くチャンスかもしれない、向こうも僕から何かを聞き出そうとしてる訳だから、僕も情報を出して貰わなきゃ!
この情報戦?に打ち勝つ戦略を練らないと、と知略を巡らそうと思う間にエルリースの部屋に着き、扉前のメイドさんが扉を開く。
そう言えば、この前は部屋の中にドレスが並んでた事を思い出した、恐る恐る部屋の中を覗き込む。
良かった!今日はドレスは無い!ほっとして息を吐くと目敏く僕の様子を見ていたエルリースは目を輝かせ言い募る。
「マコちゃん!もしかして期待してた!用意してるよ!新作ドレス!マコちゃんの為にオーダーしてたんだよー着る?着る?ねぇ着る?」
「期待して無いし、着ません!絶対に嫌!」
「えー!特急でオーダーしたんだよ?可愛いよ?見るだけでも!ね?」
「お話しは良いんですか?良いなら帰りますよ!」
「もぅーマコちゃんの意地悪!じゃあ次のパーティに取っとく」
ボソ.....「次は無いと思いますけどね.....」
「ん?何か言った?」
「いいえ!」
僕は笑顔で返した、エルリースはコテリと小首を傾げて、僕を応接セットのソファーへ促す。
エルリースは向かいのチェアーに腰掛けるとメイドさんが紅茶を入れ僕とエルリースの前に差し出すと「あなた達は良いわよ」と言ってメイドさん達を下がらせた。
この広い部屋に僕とエルリースの二人きりになった。
エルリースが紅茶に口を付ける、シーンとした雰囲気に飲まれない様に僕も紅茶を一口飲み、気持ちを落ち着ける。
カップを置いたエルリースがジッと僕を見つめる、今から始まるであろう尋問の雰囲気に僕はカップを置き身構える。
そしてエルリースは僕を見つめたまま徐に口を開いた。
「マコちゃん.....」
「.....はい.....」
「マーサ君とはどこまでいったの?」
「.....は?...........何処って.........エミカですけど?」
「そうじゃ無くて!」
「え?その後、武器屋さんに行って港に行きましたけど?」
「違う!そうじゃ無くて!」
思いもよらなかった質問に一瞬パニックに陥るが、身構えた話の内容がそんな事?と、肩の力が抜けてしまう、何でエルリースはそんな事を聞きたいの?質問の意味が分からない。
「そんな事を聞きたかったんですか?」
エルリースはさっきまでの質問が無かったかの様に唐突に真剣な表情に変わった。
「じゃあ聞くけど........マーサ君は何者?」
「!.........なんで?何者って.......」
突然に振られた質問に僕は口を噤む、マーサについては、僕が答えられる事は少ない、僕自身もマーサから何も聞けてはいない。
ただ僕と同じプレイヤーで有り転生者かも知れない、ほぼ確信出来る.....ただそれだけ。
それに僕の知らない何かを知っている。
「一応調べたの.....まぁ騎士団に見習いとは言え在籍する訳だしね.......」
「.....それで.....それで何か分かったんですか?」
「分からなかったわ、幾つか他国にも照会をかけた.......全く分からなかったわ、まるで過去なんて無いみたいに.......マコちゃんと同じね?」
「!.........調べたんですか?僕の事も.......」
「そうよ?だって、大切な妹の近くにいる人が、どんな人なのか気にならない訳はないでしょ?」
「それだけですか?」
「そうだねぇ.......マコちゃんはエミナ様と同じ雰囲気があるのよね.......何となくだけど、マコちゃんはエミナ様と同じ世界から来たのでしょう?」
「!.......だとしたら.......だとしたら、どうしますか?」
「どうもしないわよ?ただ私が知りたいだけ、そして出来るなら、もう一度エミナ様に会いたいだけ.......」
僕はジッとエルリースの瞳を見つめる、きっとエルリースは嘘は言ってはいないのだろう、クリスと同じ真っ直ぐな瞳がそれを確信させる、エルリースがどうやってその答えに辿り着いたのか、僕には分からないけれど、ただ、その答えに確信を持っている事だけはわかる。
「.......その通りです、僕はエミナ様と同じ世界の日本と言う国から、この世界に来ました」
「そうかぁ.......そうだったんだね、クリスはこの事知ってるの?」
「はい.......話しました」
「そうかぁ.......クリスは信頼されてるんだね?」
「僕がこの世界に来てからずっと一緒にいるから.......」
「そうなんだ.......マコちゃんはクリスの事、好き?」
「え?」
そう聞かれて反射的に顔が赤くなる、好き?女の子として?好き?
直ぐに僕を女の子扱いするけれど、最初から僕を助けてくれて、信頼してくれて、信じてくれた、気遣ってくれて、僕を引っ張ってくれる、クリスを好き?クリスが好き.......
僕が初めて気付いた感情、初めて持った感情.......クリスが好き.......
僕は小さく頷いた。




