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ポーション屋さん?

城壁に沿って考えながら歩く。

湖でウルフを倒した時は、まだゲーム感覚だった。

今回は血が流れ、頬にリアルに痛みを感じた事で本当の命のやり取りをしてたんだと実感した。

危機から逃れられた安心感なのかポーションの影響なのか、なんだか脱力感がある。

もし、此処で死んだらどうなるのかな、元の世界に戻るんだろうか。

何となく、戻る事は無いような気もする。


クリスは、魔石、魔石、と呟きながら、何か考えてるみたい。


城門に着くと何時もの衛兵が駆け寄って来た。


「お前らどうしたんだ!?そんなに汚れて?」


ウルフを避けてクリスを押し倒した時に、二人とも泥だらけになってた。


「ウルフが出たの!花畑に!しかも二頭!マコちゃんが倒したの魔法で!氷がバァーてなって!凄かったのよ!」


クリスは、ウルフに襲われたのを思い出したのか、少し興奮気味に捲し立て、僕の両肩を押して衛兵の目の前まで押し出す。

僕は、衛兵との距離が近づいて初めて、かなり身長差がある事に気づき、チラッと上目遣いで顔を見ながら、ポケットから小さな魔石を二つ取り出す。


両手で魔石を胸の辺りまで持ち上げると、衛兵は顔を近づけて魔石をジッと見てそのまま顔を僕に向けた。


「近い」


思わず、僕が小声で発した言葉に、衛兵はハッとして顔を逸らす。耳が赤くなってる。

飲んでるのかな、お酒臭くは無いけど。


「本当に倒したのか.....花畑か、不味いな.....ギルドに報告がいるな?」


顔を逸らしながら衛兵は呟く。

呟きを聞いたクリスが少しムッとした様子で、


「今からジェシーの店に行くつもり何だけど?」


「.....ジェシーのとこか?」


それを聞いて衛兵は微妙な顔でクリスの方をみたが、溜息をついて。


「報告は俺がしとく!行っていいぞ」


そう言うと衛兵は、手で犬を払う様な仕草をして離れていく。


それを見てクリスは、また僕と手を繋いで街の中に歩き出した。

ポーション屋さんは、ジェシーさんの店みたい。

名前を聞くと女性のようだけど、衛兵の態度からあまり良い店ではないのかな。

ニコニコ顔のクリスが何かを企んでいるみたいで怖い。


ギルドや宿屋のある大通りから、狭い路地に入る。

狭い路地にも関わらず、雑貨屋さんや洋服屋、カフェ等、ちょっと古びてるけど味があってオシャレなお店が立ち並んでいる、その一角に看板も無いお店が有った。

これがポーション屋さんみたい。


ジェシー、と言いながらクリスは扉を押し開け入って行く。

カウンターしかない狭いお店、カウンターには短髪マッチョなおじさんが立ってる。

ジェシーさんは何処。


「ジェシー!薬草売りにきたよ!」


マッチョは口を開きかけ、僕の方を見て固まった。

しばらく僕の顔をマジマジ見てふと思い出した様に叫んだ。


「あらぁぁぁん!!可愛いぃー!!きゃー!!お人形さんみたいぃ!!なにぃー!!この子!!誰?だれぇー?!!」


「オネェ?!!」


思わず僕も口に出してしまった。

クリスは、その様子にニコニコしながら腕を組んで踏ん反り返ってる。

何、この状況。


「なぁに貴方達!泥だらけ!レディーがそんなんじゃダメ!ダメ!エアシャワー」


「魔法?」


突然、僕とクリスの周りに竜巻が起こったかと思えば直ぐに収まり、服や体の汚れは無くなる。

おまけに髪もリンスした様な艶ツヤサラサラになっていた。


「凄い!魔法使えるんですか?ジェシー.....さん?」


「ジェシーは昔、冒険者だったのよ!買い取りお願いね!後、マコちゃん!魔石出して!服欲しいんでしょ?」


クリスがバックから薬草を取り出しカウンターに並べながら言う。

僕もカウンターに魔石を出した。


「お願いなんだけど、ジェシー、この子の服作ってくれない?全然足りないかもだけど、薬草代と魔石二個で」


「えっ!ジェシーさん、服作れるんですか?」


「趣味程度にねー、クリスの頼みならお代はそれで良いわ」


「カッコイイのお願いします!!!」


「分かってるわ!マ・カ・セ・テ!スッゴイ似合うの作っちゃう!すぐ取り掛かって、頑張って徹夜しなきゃ!明日取りに来て良いわよ!」


クリスに感謝しなきゃ。

企んでるとか思っててゴメン、クリスが神さまに見えるよ。

その後、宿屋でニコニコ、ウキウキしながら働いた。

魔法使いのトウコお姉さんにどうしたのか聞かれた。


「聞いて下さいよー、ジェシーさんに服を作ってもらうんですーどんなのできるかなぁ?」


「ジェシー?ああ!期待しといて良いと思うよ、趣味とか言いつつプロ並みだから」


「マコトには似合う」


アサギさんはウンウン頷きながら言う。


「そうなんですか?嬉しい!」


「「大丈夫!!」」


そう言って僕の制服のスカートの裾をつまんで。


「だってこの制服、デザインして作ったのジェシーだから」


「え?」


それを聞いてクリスの方を振り向くと、バッと顔を逸らされた。

嫌な予感がする。


翌日、朝の仕事が終わって走ってジェシーさんの店に向かう。

店の扉を勢いよく押し開くと.....


マネキンがゴスロリを着ていた。



クリスは、満面の笑みを浮かべ、僕は、膝から崩れ堕ちた。

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