救援?
マーサは素早くケルベロスの背後に回り込みナイフを構える、僕も指輪を剣に変えて構える。
マーサと目で合図を送り合い同時に斬りかかる、その時、僕だけを見ていた三つ有った頭の内の一つがマーサに振り返りながら身体が分裂していく。
「「!!」」
ケルベロス、基、大きな黒い犬がマーサと相対する様な形になり、マーサは動きを止める。
僕はそのまま頭が二つになったケルベロスに斬りかかるが、振り抜く僕の剣を素早い動きで跳びのき、飛びかかる体制を取る。
挟み撃ちでマーサと交互に剣撃を叩き込める筈が当てが外れた。
「マーサ!そっち任せて良い?」
「任せろ!」
当ては外れたけど一対一なら何とかなるよね?そう思って再度ケルベロスに相対する。
ん?何処見てるの?ケルベロスの二つの内の一つの頭が別の方を見てる気がする。
チラリと視線の先を見る。
!狙いはクリスとミリア!?
出来る限りの魔力を体に送り込み身体能力を高めて地面を蹴った、同時にケルベロスも走り出す。
迫り来る魔物の恐怖にクリスとミリアはへたり込んだまま動けない。
僕は全速力で無理やりにケルベロスを追い越し前に回り込むと、目標を変更して勢いを殺す事なくそのままケルベロスは僕に襲いかかってくる。
迫る牙めがけ剣を押し込む、ケルベロスは避けることなくそのまま剣に噛みつき力は拮抗し双方の動きは止まった!その時。
!?ケルベロスの頭が一つしか無い事に気が付いた、そして背中に強烈な痛みと熱さが走る。
「あっ!あっあぁぁぁぁ!!!」
「マコちゃん!!」「マコト!!」
今まで味わった事の無い痛みに思わず剣を手放し剣は指輪に、振り返った僕に分裂したケルベロスの爪を立てた前足が僕の胸に振り下ろされ、そのまま僕は押し倒された。
「がっ!」
背中から倒れた僕の胸にケルベロスは前足を乗せ体重をかける。
ミシミシと胸にかかる圧力が増す、血が沢山流れたのだろうか手に力が入らない、目も霞んでくる、分裂したもう一頭のケルベロスはクリス達にジリジリと近寄っていく。
マーサも相対したケルベロスに手一杯なのだろう身動きが取れずにいる。
「ごめんクリス、守れない.......」
僕はこのまま死ぬのだろう、クリスさえも守る事が出来ずに、トドメを刺そうとゆっくり近づくケルベロスの牙に最後の瞬間を悟り、ゆっくり目を閉じる。
閉じかけた瞳に大きな影が射した。
「アイスランス!」
魔法の詠唱の声と同時に二頭のケルベロスは僕達から飛び退くとスコン!と僕の顔すれすれに氷の槍が突き刺さった。
突然の事に目を見開き、刺さった槍を見て、たらりと額から汗が浸り落ちる。
同時に僕は圧迫から胸が解放されて無理矢理に流れ込んでくる空気に噎せて咳込む。
「ゴホ!ゴホゴホ!」
「マコちゃん!」「マコト!」
魔物との距離が離れ気持ちに余裕ができたのかクリスとミリアが僕に駆け寄り力の入らない僕を抱き起す。
「酷い.......」
僕を抱き起こしたクリスの手や服には沢山の血が付いている、泣きそうなクリスの顔越しに見上げた上空には大きな魔道船が浮かんでいた。
魔道船の船上にはアサギさんと調査に行った冒険者達の顔が覗く。
アサギさんは更に魔法の詠唱を続け氷の槍を放ちケルベロス達を牽制する。
更に高度を下げた船から『銀狼』を始めとした冒険者達が飛び降りて来て直ぐにケルベロスに相対する。
船はそのまま一番近いポートに降りタラップがかけられる、そこからすごい勢いで走り降りてくる赤い服を纏った人がいた。
「マコちゃーん!!!大丈夫っすかー!!!」
ルミエールだ!そんなに走ったらスカートのスリット大きいのに!見えちゃうよ!
ルミエールは僕の近くに走り寄り跪き僕の背中の怪我の具合を確認する。
「うわ!これは酷いっす!死んでもおかしく無いっすよ?骨、見えてるっす!」
「うぅ.......それは聞きたくなかったよ.......」
自分の骨が見えてるなんて恐ろしい、魔力の関係だろうか?痛覚が遮断さたのか不思議と熱くは感じるが今は痛みはそれ程でも無い。
もし見えてたら昏倒してたかもしれない、見えない背中で良かった。
「待つっす!すぐに治すっす!」
そう言ってルミエールは胸元からロザリオを取り出して両手で握り込み目を瞑る。
「世界を作りたまえし神々よ乙女の祈りを聞き届けたまえ、邪悪に傷つけられし清らかな乙女を救う慈悲を与え給え、リザレクション!」
ルミエールの詠唱と共に僕の体は温かい光に包まれ背中に感じていた熱が引けていく。
力が入らず動かすことの出来なかった腕や全身に力がみなぎってくる。
「ルミさん凄い!プリーストみたい!」
「何言ってるんすかマコちゃん!正真正銘プリーストっす!ウチは聖魔法に関してはそれなりに認められてるんすよ!」
「ありがとうルミさん!」
「うっ!そんな可愛い顔してお礼言われると照れるっす.......」
良し!これで戦える!反撃だ!




