邂逅?
マーサは振り返り僕と目を合わせ、一瞬だけ真剣な表情を見せるが直ぐに戯けたように言い募る。
「おー!マコト?人の居ない所って、愛の告白か?校舎裏が定番かな?」
「.........」
「そんな怖い顔すんなって!可愛い顔が台無しだぜ?」
「.........」
「マコトは怒った顔も可愛いぜ」
「.........茶化さないで.......ちゃんと話をしよう?」
「.......はぁ〜分かったよ!そうだな.......じゃあ港が見える公園に行こうか?ロマンチックだろう?」
「はぁ〜まだそんな事言ってるの?そもそも王都に海、無いじゃん!」
「マコト、世の中は変わって行くもんだぜ?」
「?」
「まぁ行けば分かるって!行こうぜ?」
そう言って、マーサは買ったナイフを腰のベルトに差し込み店を出ようとするのを僕は追いかける。
マーサは鼻歌でも歌うように軽やかな足取りで市場の方に歩いて行く、僕は半歩後ろをついて行く。
「ねぇ、マーサ?何処に行くの?」
「付いてくれば分かるって」
そう言ってマーサは市場の通りを通り過ぎる、確かこの先は城壁に突き当たる筈だけど?ゲームの中のマップではそうなってた、ゲームの中では市場さえも無かったけどね。
そう思っていると建物が無くなり視界がいきなり開ける。
先に見えるのは城壁などは無く、まさに港!ただし海は無く水さえも無い陸地に木造船が沢山泊まってる。
「もしかして魔道船?!」
「正解!」
「でも魔道船ってアストリア帝国だけしか持ってない兵器って設定だったよね?」
「だから時代は変わったんだって!第一夫人のアローラ様が嫁いできたときに帝国の技術供与があったんだって、ゲームの時みたいに攻撃してこないから心配すんな!」
そうだ、ゲームの時にこの魔道船には悩まされた、空に浮かぶ船である魔道船は叩き落とすにも魔法のシールドで防御され簡単には落ちてくれない、上から攻撃し放題の空の要塞。
ソロで戦ってた僕は魔道船を見つけたら何時も逃げてた、それにしても軍艦っぽいのは見当たらない、客船?商業船?みたいだ。
「マコト、こっちに公園があるから行こうぜ」
港は今日は休みみたい、人の気配が無い、先に歩き出したマーサの行く先には植栽がされた港を見渡す海浜公園が広がっている、僕は小走りでマーサを追いかけた。
公園の中程でマーサは立ち止まり振り返った。
振り返ったマーサの真剣な目に僕は思わず間合を取り身構えるが、その様子を見てマーサの頬が緩む。
その笑顔に肩の力は抜け、身構えた手を下ろす。
「何が聞きたい?答えられる事は答えるけど?」
「全部!洗いざらい知ってる事全部話して!」
「その前に.......」
そう言ってマーサは、ベルト付近に手を伸ばしたかと思うと、さっき買ったばかりのナイフを素早い動きで放った、予想もしない行動に思考が止まり身体が動かない。
ナイフは僕の顔のすぐ横をかすめて行く。
「出て来いよ!いるんだろう?」
突然のマーサの問いかけに視線を追って振り返る、ナイフは僕の後方の大木に刺さっている、そして大木の陰から真っ黒なスレンダーラインのドレスを着た女の子がゆっくりと進み出てくる。
「!.......ミコト?.......ミコト!」
僕は思ってもいなかった再会に思わず走り出そうとした、その時マーサが僕に走り寄り肩を掴み僕を制止する。
「マコト!待て!アイツはお前の知ってるミコトとは違う!」
「なんで?マーサ?何が違うって言うの!ミコト!何で.......何でミコトがここにいるの?」
ミコトは僕に見せたこともない妖艶な笑みを浮かべ語りかける。
「マコちゃん、久しぶりだねぇ、随分可愛らしい格好をしてるけど、とても似合ってるわよ?それと後ろの二人も出て来たら?間違えて殺しちゃたらマコちゃんが困ってしまうわ?」
その言葉に慌てて振り返ると木立の陰からクリスとミリアがオズオズと出て来る。
「クリス!ミリア!何で?.......もしかして僕達を付けてたの.......」
「ゴメン、マコちゃん.......」
「マコト、ごめんなさい」
この二人、何も言って来ないのが変だと思ってたけど、ずっと付けてたんだ?何処から付けてたんだろう?それよりもミコト!何で此処にいるのか分からないけれど雰囲気が何時ものミコトとは明らかに違う。
動揺する僕を見つめていたミコトは、僕を庇うように一歩前へ出て来たマーサに値踏みするような目を向けて口を開く。
「あなた?マーサ?と言ったかしら?色々と知ってるみたいだけど一体何者なのかしら?」
「俺自身は、はじめましてだな?ミコト、いや、ミコ?ミコルートって呼んだ方がいいかな?」
マーサの『ミコルート』の言葉に明らかに動揺を見せたミコトは直ぐに何でも無かったかのような表情を取り繕うと「ふっ」と一度笑みを見せマーサに返答を返す。
「ミコトで良いわ、マコちゃんとはもう少し出会いを演出したかったのだけど、はぁ、物事は思っていた通りには運ばないものね?」
僕の知っているミコトとの言動の乖離に言葉が出ない。
姿形はミコトのままなのに.......本当にこれはミコトなの?ミコトは僕に視線を移し思い出したように何時もの笑顔を向けて言った。
「マコちゃん?二人きりで話したかったんだけど残念.....今日の所はせっかくのデートを邪魔しちゃ悪いから帰るね?」
僕はハッと我に返ってミコトに言い募る。
「なっ!デートとか違うからね!男の子同士じゃない!何言ってるの!」
僕の言動にミコトはイタズラっぽく微笑み左手を地面に翳し目を瞑る、地面には黒い魔法陣が現れ黒い大きな影が魔法陣から浮き出るように現れる、そして徐々にその実態を表し出した。
「「ケルベロス!!」」僕とマーサの声が被る。
目の前には真っ黒な三つの頭を持つ熊よりも大きな犬が低く唸り声をあげて立っている。
後ろにいるクリスとミリアも突然の魔物の出現にその場にヘタリ込む。
「それじゃマコちゃん、またね!」
そう言うと、ミコトが地面を見るとゆっくりと足元から身体が霧が霧散するように消えて行った。
「ミコト!」
「マコト!無理だ、今は コイツを何とかしないと!」
マーサは駆け出し大木に刺さったナイフに手を掛け引き抜く、ケルベロスはそんなマーサに目もくれることもなく六つの目が僕だけを見つめていた。




