新人研修?
朝食も終わりコーヒーが出され食後の談笑タイム、話題は必然的に昨日のパーティの話になるわけで.........
「ねえ?くりしゅ、ルー伯爵家のお嬢様のドレスが良かったと思いません?私はああいうのが一番しゅき!」
「うーん、みいあ、センス無い!レセルプ子爵のとこのお嬢様のドレスみたいなのが私は、だーいしゅきよ!」
「.......お願い.......もうやめて.......」
散々昨日の僕の醜態を聞かされた挙句、最後には酔っ払った僕の口真似大会に、赤くなった顔を手で覆い恥ずかしさに打ち震える。
「クリスもミリアちゃんも、その辺にしとかないとマコちゃん泣くわよ、良い頃合いだし、そろそろ行きましょうか?」
そう言ってエルリースは立ち上がる、僕もこのまま辱めを受けたままは真っ平なのでそれに続く、クリスとミリアは「しょうがないわね」とブツブツ言いながらも立ち上がった。
取り敢えず騎士団や魔術師との模擬戦?なんだろうけど帰りたいな。
エルリースに続いて歩く、昨日騎士団長、確か『アレク』だったかな?人の話を聞かない人と戦った中庭に出る。
既に甲冑を着た騎士達と黒いローブを羽織った魔術師らしき人達が50人くらい並んでる、よく見るとみんな若い?僕やクリスと歳が変わらないような人達ばかりだ。
「えっと、新人さん?新人研修?」
心の声が漏れ出した、エルリースはしっかり拾って説明してくれる。
「まあねぇ、この子達まだ学生なんだけど宮廷に内定してるの、士官候補生ね、学園が休みだから訓練に来てるのよ、みんな!ドラゴンバスターのマコトちゃんよ!本気でやらないとマコちゃんは本当に強いよ!じゃあマコちゃん、ちょっと揉んであげてね」
そう言ってエルリースは下がり、クリスとミリアと一緒に用意されたお茶の席に座った。
完全に観戦スタイル。
なんだかミリアが俯いてるのが気になる。
中庭に集まった新人さん達はザワザワしてきた。
「えっ、本当に?この子なの?」「小さく無い?俺らより年下でしょ!」「スゲー可愛くない?」「剣とか持てるの?」「きっとパーティで戦ったんだよ?」「俺らの出番無いかもな?」「彼氏いるのかな?」「パーティの実力を自分の実力と勘違いしてるんじゃないか?」
「俺ら宮廷騎士団に内定してるんだぜ!舐めてるの?」「宮廷魔術師も舐められたもんだ!」
全部聞こえてるって!所々変なの聞こえたけど.....あぁ、これはあれだ!僕たちは宮廷騎士団や魔術師に選ばれたエリートだぞ!って、早目に現実見せてあげてね!って事だよね?嫌な役回り、まぁ折角だから叩き潰してあげなきゃね!
「じゃあ、誰から勝負してくれるのかなぁ?」
「じゃあ、俺からやりますよ!」
黒いローブを着た魔術師だろう小太りの男の子が進み出てくる、なんだか僕を見る顔がニヤついてる、完全に舐めてるね!どんな魔法を使うのかな?宮廷魔術師の実力が分からない、魔道士のトウコさんはそれなりの魔法を使ってた、念のため全身に魔力を纏わせ、オートシールドを無詠唱で発動しとく。
「マコトさん?でしたっけ?君が可愛いからって僕は手加減しないよ?一発で終わらないでね?じゃあ行くよ!ファイヤーボール!!!」
手を突き出し唱えた男の子の手の先に拳大の火の玉が現れ「フゥ!」と短く息を吐くと火の玉は飛んでくる、え?意気込んだ割に何?このレベルの低い攻撃は?唖然としながら目の前に来た火の玉を手ではたき落とす。
「なっ!素手?!」
「んー?素手では無いよ?魔力を纏ってるから、それより、今のは様子見?まさか全力じゃ無いよね?トウコさんはそれなりの魔法使ってたよ?」
「馬鹿にしてるのか!トウコ様は魔道士だぞ!比べられる訳ないだろう!ファイヤーボール一つを落としたぐらいで調子に乗るな!ファイヤーボール!ファイヤーボール!ファイヤーボール!フゥ!」
今度は三つ?また手ではたき落とす、魔術師の男の子は跪き肩で息をしてる、終わり?魔術師でも新人はこんなもん?オートシールド要らなかった?勿体無いので唖然として見てる他の魔術師を挑発してみる。
「宮廷魔術師ってこんなもんなの?良いよ!みんな纏めて好きな攻撃して来て?」
僕は指で招く仕草をすると10人いる魔術師の中には女の子が数人混じってた、女の子達が前に進み出て、中心にいた子が口を開く。
「貴方!ちょっと可愛いからって調子に乗らないでよ!さっきから私、可愛いでしょう?モテモテで困ってるの!みたいな態度が気にくわないのよ!魔術師の恐ろしさ教えてあげるわ!みんなヤルわよ!!」
「えっ?ちょっと待って?可愛いとかモテモテとか何処から出て来たの?脈略無いよね?」
「うるさい!その澄ました態度も気に入らないわ!ほら!男どももデレてないでヤルわよ!」
後ろに控えてた魔術師の男の子達も戸惑いながら前に出てくる、男の子デレてないし!可愛いとかなんでそんな話になってるの?戸惑う僕を他所に魔術師達の魔法攻撃はさっきの女の子の詠唱から始まる。
「アイスランス!」「ファイヤーボール!」「ストーンバレット!」「.....」「.....」「.....」
魔術師全員其々の得意だろう魔法詠唱から火の玉、氷の槍、石飛礫が一度に襲いかかってくる。傍観していると僕の手前でオートシールドが発動して幾つもの薄青の魔法陣が現れ全ての攻撃をかき消していく。
魔術師達は唖然としながらも詠唱を続け攻撃してくるが、シールドが全て端からかき消していく。
しばらく続けていると魔力が枯渇したのか、次々と魔術師達は膝をつきだす、最後に最初に攻撃して来た女の子が崩れ落ちると攻撃は終わった。
女の子は憎々しげな目で僕を睨むと「私にこんな恥をかかせた事、覚えてなさいよ!」と叫びミリアを睨んだ。
ミリアはビクッと肩を震わせ俯く、知り合い?女の子は「チッ」と舌打ちして這い蹲りながら白線の引かれた模擬戦のスペースから出て行く。
他の魔術師達もそれに続いてのそのそと立ち上がりスペース外に出てへたり込んだ。
その魔術師達の様子を呆然とした様子で見ながら棒立ちになってる騎士の人達に声をかける。
「じゃあ次!騎士の皆さん.....あっ!魔法は使わないから安心して!」
そう言って指輪を剣に変える。
だって騎士の人達、すごい顔色悪いもん!魔法を使わない!と聞いて皆んなで顔を見合わせたかと思ったら頷き一斉に「オォー」と叫びながら残りの40人くらいの騎士達は斬りかかって来た!?ちょっと!騎士のプライドとか無いの?
真っ先に走り寄り、上から振り下ろすように斬りかかって来た騎士の剣を下から剣で刎ねあげるそして顔に向けて回し蹴りを食らわせると、蹴りに脳震盪を起こしたのかよろけて倒れる。
「あっ!そう言えばスカートだった!」
慌てて足を揃えてスカートを抑える。
チラリと、向かって来てた騎士達を見ると剣を振り上げたまま固まってる。
スカートを押さえたまま一通り騎士達を見回して。
「見た?」
騎士達は真っ赤になって首を必死で横に振る。
「見てません!」「見えなかったです!」「パニエがあったのでセーフです!」「足しかみてません!」
「.........」
「「「.........ワァー!!!」」」
少しの沈黙の後騎士達は叫びながら襲いかかる、端から剣で弾き飛ばし次々と屍の山が出来上がった。
「良し!最後の一人だね?」
最後に一人残り、剣を構える騎士を見る。
騎士は一度屍の山をチラリと見て、剣を前に放り投げ両手を挙げた。
「騎士の矜持は?!最後まで頑張らないとダメでしょう?」
全て終わったのを見計らってエルリースが前に出て来た。
「ほぉら!貴方達自分の実力は把握できたかしら?分かったら直ぐに鍛錬に行きなさいね?マコちゃんはご苦労様!」
騎士と魔道士達は一様に暗い表情をしながら無言で立ち上がり中庭から出て行く、立ち上がれない人は肩を借りながらフラフラと。
僕は、哀愁漂うその後ろ姿を見送りながらエルリースとお茶の席につくと、メイドさんから紅茶とチーズケーキを出される。
紅茶を一口飲み「ほぅ」と、息を吐くとそこへ後ろから声がかかった。
「すみません!遅くなりました!もう終わっちゃいました?」
振り返ると短めの黒髪に黒目、いかにもスポーツマン的な爽やかでアイドルにでも居そうな少年が立ってる、甲冑を着てるし、背は高いけど歳は変わらないくらいに見える、さっきの騎士達の仲間?なんだろうね?少年は僕と目が合うと微笑んで話しかけてくる。
「貴方がマコトさんですね?僕と歳は変わらないように見えますけど、一人でドラゴン討伐するなんて凄いですね!あっ!俺、マーサって言います!よろしく」
そう言ってマーサは手を差し出す、なんだかさっきの騎士達と違って嫌な感じが無い。
僕も手を差し出して握手を交わす。
「マコトです、貴方も見習いの騎士さん?」
「はい!マコトさんに胸を借りられるって聞いて張り切ってたんですけど、雑用が終わらなくて.......もう終わっちゃたんですよね?残念だな.......」
僕は同年代の男の子は苦手意識がある。
小さい時から容姿のことでからかわれて来たから、でも、このマーサは好感が持てる。
もしクラスにマーサみたいな友達が居たら引き篭もったりしなかったのかな?
「あのマーサさんが良ければ、今から勝負しても良いよ?」
「本当?!良いの?マコトさんは大丈夫なの?さっきまで模擬戦やってたんですよね?」
「僕は大丈夫だよ、じゃあ勝負してくれる?」
カシャン!その時カップが何かに打ち付けられるような音が、見るとクリスがカップを皿の上に取り落としたようだ、幸い空だったみたいで溢れたりしてないけどクリスとミリアが呆然とした様子で僕とマーサを見比べてる。
「クリスとミリアはどうかしたの?」
「なっ!なっ!なんでも無いわ!」
「なんでも無いですわ!」
「そう?」
なんでも無い風では無いけど、何なんだろう?




