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エミーナ城の前で?

僕はスクーターを走らせる、スピードは自転車程度のスピードなのだけど風が気持ちいい、スピードを出そうと思えば出そうなのだけど、今はこれで良いかな?

ドライブ気分で遠くに見える城に行ってみようと思う。


クリスは相変わらず喋らない。

きっと『夢の世界の住人』が引っかかってるんだよね?


クリスの事は信頼してる、洋服以外では.......

別の世界から来た事を話してしまうべきなんだろうか?でも信じて貰える?でも話さないままでクリスに疑惑の目を向けられたままなのは嫌だ。

何時も笑いかけてくれて、引っ張ってくれるクリスが好き、信じてくれなくても、呆れられても、きっと笑顔に戻ってくれると思う。


僕はクリスに全部話す事を心に決める。


以前ミリアの家に行く時に通った道を通り過ぎると、お城がだんだんと大きく見えて来た。大きな邸宅が立ち並ぶ通りを過ぎると木立が立ち並び芝で覆われた公園の様な場所に出た。

少し先には僕の腰ぐらいの低い柵が立っていて白磁の西洋風の城が堂々と治まっていた。

近くで見るとその大きさに息を飲む。


周りにはベンチも有り、お洒落な飲み物の屋台も見える。

ベンチで寛ぐ人や散歩している人、芝生にシートを敷いて話をしている人もいる、一般の人にも解放されているみたい。

変な乗り物に乗って来た僕達を訝しげにチラチラ見ている人もいる。


僕とクリスはスクーターから降り、ヘルメットを脱いで僕がスクーターを押して歩く、城の正面を向いている日陰になったベンチを見つけ「あそこに座ろう?」とクリスに問いかける。

僕がスタンドを出してスクーターを停め、ヘルメットを仕舞っていると、クリスは「ちょっと待ってて」と言って飲み物の屋台に向かい二人分の飲み物を買って戻ってきた。


「ありがとう」と言って片方を受け取り二人でベンチに腰掛ける。

取り敢えず飲み物に口を付ける、アイスコーヒーだった。

調査に出発する前の雨が上がった後から少し気温が高くなった様な気がする。

今日も日差しは割と強い、冷たい飲み物が美味しく感じる。


クリスも同じ物を飲みながら、僕と視線を合わそうとしてくれない。

僕は飲み物を横に置き、スカートの端をキツく握り、意を決してクリスに話し始める。


「クリス!僕、クリスに話したい事があるんだ!」


そう言ってクリスの方を向くと魔術具店から一度も目を合わせてくれなかったクリスが真っ直ぐに僕の瞳を見つめて、コクリと頷いた。


「あのね?クリス、信じて貰えないかも知れないけど僕はこの世界の人間じゃ無いんだ、この世界とは違う別の世界から来たんだ!」


「え?意味がわかんない.......」


「そうだよね.....僕もなんて言えば良いのか.....」


「私は、僕は他の国のお姫様なんだよ!とか言われるのかと思ってた」


「お姫様は無いから.....あのね、神話に出てくる勇者様って別の世界から来たのか、連れてこられたんじゃ無い?」


「そうだね、神さまが別の世界からって.....えっ!そう言う?えっ!エミーナ様と同じ所から来たっていう事?」


「多分そう、僕のいた世界の日本って言う国に僕は住んでたんだけどね、エミーナ様って多分僕と同じ日本って言う国の人だよ、今、僕やクリスが話してる言葉や色々な文化って勇者様が伝えたんじゃ無い?僕のいた世界と文化や言葉があまりにも似通ってるんだよね」


「確かに勇者様が文化を伝えたって聞いてる、言葉も勇者様が現れる前は種族ごとにバラバラだった物を勇者様の言葉に統一したって.......」


「そうなんだ?それにトウコさんから聞いたんだけどね、エミーナ様って本当の名前はエミナって言うのが本当だって言ってる人がいるんだけど.......」


それを言った時、クリスの視線が宙を泳いだ。

ん?もしかしてクリスも知ってる人?

クリスは視線を泳がせながら「そう言ってる人もいるみたいね.....」と流した。

取り敢えず話を続けて。


「エミナって名前は僕のいた世界、国では割とありふれた名前なんだよ」


クリスは視線を戻して少し考え込んだ後口を開いた。


「じゃあね?マコちゃんは別の世界から神様に連れて来られたって事?」


クリスのその問いに少し考える、ゲームをしてたら、でもゲームってわからないよね?

神様に連れてこられた訳でも無いし神にも会ってはいない。


「説明するのが難しいんだけど、僕の世界ではね、夢の世界を見て遊べる道具があるんだよね、その夢の世界で僕が遊んでたらこの指輪を拾ったの」


そう言って左手中指の指輪を見せるとクリスは指輪を見てアッと言う顔をして指輪から僕に視線を戻して「マコファールの指輪だよね?」と訊ね返した。

僕は小さく頷く。


「この指輪を嵌めた途端にクリスと出会った湖の前に立ってたんだ」


「えっ?じゃあ、あの時変な格好してたのも湖に浸かってたのもこの世界に来たから?」


「変な格好.....あれは家の自分の部屋で寛いでたからで、湖に浸かってたのは直前にウルフが襲って来てファイヤーボールで倒したら服に火が燃え移ったから湖に飛び込んだの、それから前の世界では魔法とか無い世界なんだよね」


「じゃあなんでマコちゃんは魔法使えるの?しかも魔力も尋常じゃない無いよね?」


「それなんだけど、その夢の中で遊べる道具の夢の中では魔法が使えたりする、あくまで夢だから、向こうの現実では魔法とか非常識なものなんだよ、それに夢の中の世界は今、クリス達がいるこの世界に凄く似てる、国の名前とか地理なんかが同じだし」


「そうなんだ.......」


「信じてくれる?」


「.......マコちゃんが信じてって言うなら信じる!色々理解出来ない事も有るけど、何となくマコちゃんの非常識なとことか納得出来た気もするし、こんなに可愛いのは異世界から来たからだね?」


「イヤ.....それは関係ないかな?」


「じゃあさ、マコちゃんがこの世界に来た理由、マコファールが怪しくない?」


「そうだよね、この指環が関係してるのは確かな気がする、それにね.....僕、お母さは小さい時に亡くなったって聞いてたんだ.......ても今日貰ったこのスクーター、僕のお母さんの物なんだよね」


「え?それって」


「うん、もしかすると、お母さんもこの世界の何処かにいるんじゃないかって.......」


「ねえ?マコちゃんのお母さんってどんな人?」


「物心つく頃にはいなかったからどんな人か迄はわからないけどね、顔や容姿は僕にソックリだよ」


「マコちゃんにソックリって言う事はとっても可愛いって事だね?」


そう言われると、うん、とは言えない、だって僕が可愛いと言ってるのと同じ事だから、微妙な顔になったのを察したのかクリスは言う。


「マコちゃんは可愛いよ?」


「男の子が可愛いって言われても.....」


会話が途切れ二人とも少し温くなり始めたコーヒーを飲む。

きっとクリスに話した事は間違いじゃなかった、クリスは信じると言った。

何となく肩にかかった重い物を少し下ろせた様な清々しい気持ちだ。

そう思っていたら突然真剣な表情でクリスは尋ねてきた。


「マコちゃんはいつか元の世界に戻っちゃうの?」


「.....わからない、戻る方法もわからないし.....」


「そう.....」クリスは目を伏せて沈んだ表情をする。


クリスにそんな表情をして欲しくない、僕の口から漏れた言葉はきっと僕の本心なんだ。


「でも今の生活、クリスと一緒にいるのは楽しいよ!だから元の世界に戻ろうって、今は全く考えてなかった!でも色々わからない事が多すぎて、それをひとつひとつ解って行きたいんだ!それをクリスが一緒に居て手伝ってくれるのなら僕は嬉しいよ!だから.....」


「うん.....私はマコちゃんと一緒にいるよ」


クリスは今までの不安な表情が消え僕に満面の笑顔を向けて手を握る

僕は小さく頷いてクリスの手を握り返し、クリスに笑顔を向けた。

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