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ディアナの魔道具店?(前半)

ドラゴンを倒した僕は取り敢えずクリスと一緒に宿屋に一旦帰宅する事になった。

後処理はギルドの仕事という事でサーニャさんが引き受けた。

特殊な魔法で戻って来た為に、今から調査に戻る事も出来ない。


トウコさんは血でドロドロの僕に清浄魔法をかけてくれた後に、今回の魔物の集団との遭遇戦とドラゴン討伐などの報告の為に城に向かうそうだ。

現地に残る調査組は、あのまま調査を続け、何も無ければ予定通り三日後に戻って来る。


瓦礫の山となったギルド跡地をチラリと見る。

幸いに朝早かった事と、ドラゴンからの避難誘導の為に職員が出て来ていた為、ギルド内に人は居なかったようだ。


でも、今考えるともっとやりようはあった。

ゲームの中では戦闘で建物が崩壊するなんて事は無い。

それにドラゴンは魔物じゃ無いなんて予測出来ないよ?

そんな事をグルグル考えていたらクリスが手を繋いできた。


「マコちゃん行こうか?あっでもお使い頼まれてるから市場に寄っても良い?疲れてる?」


クリスに手を繋がれると温かくて、帰って来たんだ!と安心する。

この世界に来て、未だそんなに日にちは経って無いのだけれど、何となく帰る場所は此処なのだと言う安心感。

僕は笑顔で「大丈夫だよ!行こう!」と言って歩き出す。


市場は宿屋やギルドのある通りとは並行する一本向こうの通り。

ギルド前の広場を横切って行く。


広場に立ち並ぶ屋台の人達の視線を感じる、ドラゴンとの戦いを間近で見た人達なのだろう。

ギルドの建物を壊してしまった、非難めいた視線なのだろうか?

何となく俯いてしまう。


視線の中、調査の出発前に立ち寄った保存食の屋台のお兄さんが手を振って叫んだ。


「嬢ちゃん!凄かったぞ!街を救ってくれてありがとな!!」


その声を皮切りに沢山の歓声と称賛の声が上がる。


「ありがとう!」「カッコ良かった!」「もうダメだと思った!ありがとう!」「街の英雄だ!」「可愛いのに強いな!」「ドラゴンバスターの誕生だ!」「結婚してくれ!」


なんだかむず痒い気持ちと、誇らしい気持ち。

さっきまでのギルドを壊した事への後悔の気持ちが霧散して行く。

僕は、この街のみんなを守ったんだ!そんな思いが込み上げて来て顔を上げ、繋いだ手に力が篭る。

クリスは僕の手を強く握り返した。

歓喜の声の中、手を振りながら足早に市場に向かった。


市場までたどり着くと、物を売るための威勢のいい掛け声と値引きを迫る客たちの雑多な喧騒に満ち溢れていた。

市場と聞いていたので蚤の市みたいなテントが軒を連ねるような物を想像していたのだが、ちゃんとした店を構える商店街?八百屋さんみたいに店先まで商品が並んで雑多な雰囲気はある。


広場とは違いドラゴンや戦闘があった事さえも知らない人が多いのだろう。

噂程度に話は回っているのかチラチラ見ている人はいるが普通に買い物は出来そうだ。

クリスにお使いの内容を聞く。


「クリスは市場で何を頼まれているの?」


「ランプの魔球が切れたから魔道具屋さんに行くよ?」


魔球?電球みたいな物?それにしても魔道具屋さんと聞いて、一体どんな謎商品があるのか?ちょっとワクワクする。


市場をキョロキョロしながら歩いていると、店先に怪しい壺が置かれ、積み上げられた皮の表紙の本、巻物や家具、紫色の液体の入った瓶等、何に使うのかもわからない道具が店の中まで所狭しと並べられた薄暗い店へクリスは入って行く。


骨董屋さん?怪しすぎ!などと思いながらクリスに付いて薄暗い店内を見回すと意外と広い、商品の積まれた山が何列かあり、奥のカウンターにうつ伏せになっている人がいる?


青味がかった色の髪の毛に猫耳?!「ミミリー?」クリスが呼びかけると猫耳がピクピクと動いてムクリと起き上がった。


「あぁクリスじゃん!」


顔を上げた『ミミリー』と呼ばれた猫耳娘は少し僕たちより年下、12、3才ぐらいに見える。

ショートボブで目がぱっちりとした可愛らしい子だ。

カウンターから出てきたミミリーはオフショルダーのブラウスに膝丈のフレアスカートでスカートの裾から尻尾がピョロんと出て左右に揺れる。

思わず僕は、揺れる尻尾を凝視する。

獣人だ!ニャンコ獣人!ゲームでは見た事有るけど触れても毛並みの感触とか分かる訳では無い、尻尾を触りたい衝動をグッと我慢する。

それにしてもこの街で初めて獣人を見た、ゲームでは良く見かけたけれどこの世界には少ないのだろうか?


僕の視線に気付いたのか、ミミリーは尻尾をスカートの中に隠して僕を警戒するようにクリスに尋ねる。


「こっちの人は誰?貴族の人?」


「貴族じゃないよ?マコちゃんは家に一緒に住んでるのよ」


「あんた、マコって言うの?貴族じゃ無いんだ?その服、お城の臭いがするけど?」


服の臭いで貴族だと思ったのだろうか?流石は獣人!鼻が効くんだね、貴族じゃ無いのが分かった途端に警戒した雰囲気を解いたミミリーは僕に尋ねる。

僕はスカートの裾を摘みながら説明する。


「マコトです、この服トウコさんって言う宮廷魔道士の人から借りた物だから、お城の物なんだと思うよ」


「トウコから借りたの?マコトだっけ?マコトも宮廷魔術師?」


「魔法は使えるけど宮廷魔術師じゃ無いよ、宿屋で働いてる、トウコさん知ってるんだ!」


「トウコとアサギはたまに買い物に来るからね、所で今日は二人で何しに来たの?」


クリスが魔球を買いに来た事を伝えるとミミリーは「ちょっと待ってね」と言って商品かと思っていたカウンター近くにあるアンティークなチェストの引き出しを何箇所か開けながらゴソゴソと探す。

僕とクリスはその間、店の商品を見て回り、ふとカウンターの向こう側に目をやる。

そこには予想もしてない物があった。

レトロチックな丸いライトに水色のがかったグレーの車体、茶色の皮のシート、所々メッキのモールがある。


「スクーターだ!!ミミリー!あれ動くの?売り物なの?」


突然、大声を上げて指差しながら興奮する僕に、ミミリーとクリスは僕の指差す方を見て首を傾げる。


「マコちゃん?あれってスクーター?って言うの?なんの道具?」


「店長は乗り物って言ってたけどマコトは乗り方知ってるの?どう乗るの?乗ったら倒れると思うけどね?」


僕も男の子だ、メカメカしい物には興味があった、16才になったらバイクの免許証が欲しいと、お父さんに言った事がある。

絶対に反対されるだろうなと思っていたのだけれど、アッサリ良いよと言われた。

その時に見せられた写真は、スクーターと若い頃のお母さんとお父さんが一緒に写った写真だった。

スクーターはお母さんが気に入って乗っていた物で、良く二人乗りで、若い頃は出かけていたんだとお父さんは話してくれた。


カウンターの先に、その時見た写真と見た目全く同じ、レトロチックな可愛らしいスクーターが置いてあった。

どうして此処にそれがあるのか?その物自体は大量生産品だから、同じものが有ってもおかしくは無い、でもこの世界になんで?

疑問は尽きないけれどとにかく触ってみたい。


「ミミリー?触ってみても良い?」


「邪魔になるからどうにかしたかった物だから触っても良いよ」


ミミリーに了解を貰ってカウンターの中に入りハンドルに手をかけた。

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