神=運営?
「大っ変っ申し訳ありませんでした!!」
クリスは食堂のテーブルに突っ伏して頭を下げている。
僕は向かいに座って腕を組んで横目でクリスを睨んでいた。
二人ともネグリジェ姿だ。
「言ったよね!言ってたよね?男の子だって!!」
そう、僕はお風呂の件で怒ってる。言ってたにも関わらず女物の服を着せた事にもだ。
おかしいとは思ってた。
この世界でも男性がスカートを履く文化は無かった。
思い出すだけで顔が赤くなる。
お風呂上がりにネグリジェを渡されたのには抗議もしたが、これ以外に寝巻きになる物が無いと無理矢理渡された。
ダボティーと短パンは.....乾いてない。
無いものはしょうがない。
これに関しては寝るだけだし我慢する。
クリスはなんだか身体がプルプルしたかと思ったら、ガバ、と顔を上げて早口で捲したてる。
「だってこんな可愛い子が男の子の訳無いじゃん!服も似合ってたじゃん!!お客さんみんな可愛いとか付き合いたいとか言ってたよ!!!みんなから名前聞かれてたし」
その言い分に僕も反論する、逆ギレだもん。
「でも湖で胸、見せたよね!無かったよね?」
「それは残念な子も中にはいるじゃん?!内心、これからだよ!って思ったもん!」
これからって、なんだ。
これまでもこれからも、胸が大きくなる予定は無い。
これからは、筋肉がつくんだよ。
それに女の子に見せれないものもあるよね。
「でも、無いものは見せられるけど、有るものは見せられないでしょ?!」
「ん?..........」
「ん?..........」
「もういいや.....取り敢えず寝よう、僕、何処で寝るの?」
「私と一緒.....部屋他に空いてないもん」
「えっ?おかしいでしょ?」
「なんで?」
「僕、男の子だよ?」
「そうだね?」
「襲うかもよ?」
僕は、平然としているクリスの言葉に唖然としつつ、目一杯怖い顔を作って言ってみた。
それにも関わらず、クリスはニヤっと笑って。
「襲えるの?」
「無理です.....」
僕は、ツイっとクリスから目を逸らし小声で言った。
クリスは明日、登録をする為にギルドに連れて行ってくれるそうだ、登録すれば身分証が貰えるとかで、村などの田舎の人は子供が生まれると王都に作りに来るそうだ。
無くしたりしても再度登録すれば発行されるそうで。
それだけ説明された後は、クリスの部屋に連れていかる。
クリスは平然とベッドに横になっておやすみと言い、直ぐに寝息が聞こえてきた。
僕は、おずおずとクリスの横にそっと潜り込み、クリスに背を向けて目を瞑る。
女の子と一緒に寝るなんてドキドキして眠れないと思っていたが、始めて働いた疲れか、直ぐに眠りに落ちてしまった。
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「マコちゃん !起きて!」
翌朝、クリスの声で目を覚ました。半分寝ぼけていた僕は、目の前の美少女に思わず。
「朝チュン?」
と呟いて昨日までの事を思い出した。クリスは、小首を傾げながら昨日の制服を差し出し。
「着替えて!」
「またコレ着るの?」
僕は嫌がるが、クリスのコレしか無い、の返事に項垂れながら着替えて二人で食堂に行く。おじさん、おばさんは、もう起きて朝食の支度をしていた。
僕はクリスと二人、急いで朝食を食べ、起きて来たお客さん達の配膳を始める。朝食メニューは、喫茶店のモーニングセットみたいなものだった。
食べ終わったお客さん達を次々捌いていき、最後のお客さんを送り出した。
お客さんの居なくなった食堂でクリスとコーヒーを飲みながら一息つく。
「そろそろギルドに行こうか?」
「この格好で?」
「うん!」
このままの格好で行くみたいだ、他に服が無いし、しょうがない。
宿屋を出て目の前の大通りをまっすぐ歩いていると、さほど歩く事もなく、他の建物より一際大きな建物が見えてきた。
歩く途中チラチラ見られてる気がしたが、きっと金髪美少女のクリスを見てるのかと思い辺り、スルーする事にした。
建物の中に入ると沢山の人と沢山の窓口が有る。
クリスは、その内の一つの窓口に僕を連れて行く。
窓口には色白で緑色の髪、細身でとても綺麗なお姉さんが座っている。
よく見ると耳が長い、ゲームでも見た事ある。
「エルフ?!」
受付のお姉さんは、キョトンとしながら僕の目を見て口を開く。
「エルフ、ご覧になった事ないのですか?」
「田舎から出て来たので!」
僕は、慌てて答えると、横からクリスが登録お願いします、と言う。
お姉さんはクリスにチラっと目をやり、紙を一枚取り出して僕の目の前に置き、紙の上に手を差し出しながら。
「此方にお名前をお願いします」
言われるままに、マコトと書いた、普通にカタカナで。
昨日から思っていたが、普通に全て日本語だった。
宿屋のメニュー表も日本語だった。異世界に居るのかどうか怪しくなる。
エルフのお姉さんは紙を持って席を離れると、しばらくして今度は鎖の付いた銀色の金属の小さなプレートを持ってきた。
プレートには僕の名前が刻印してあった。
「此方が身分証になります」
お姉さんはそう言ってプレートを僕に渡すと説明を始めた。
プレートには個人毎に見えない番号があって個人情報が逐一書き込まれていくらしい。
無くしたりしても、ちゃんと同じ番号のプレートが発行されるみたい。
住基ネットみたいなもので魔物を倒したり、商売で税金を納めたり国や世界に貢献するとポイントが貯まる仕組みになってるみたいだ、プレートもポイントも世界共通で、勿論犯罪歴はマイナスポイントが付くらしい。出身によって最初からポイントが加算されている人も居るみたい、貴族とか、王族とか。
異世界人の僕はポイントどうなってるのかな、と思いつつ疑問を聞いてみた。
「ポイント貯まるとどうなるんですか?」
「魂の位が上がります!」
「はい??」
「魂の位が上がります!」
「...................偽名とか使って新しくカード作ったら?」
「偽名は使えません!」
「はい??」
「神が許しません!」
「....................」
運営の都合のいいようにできてるのかな、この世界は。
「お仕事の斡旋などは彼方のボードに掲示されております素材などの買い取り等は、彼方の商業コーナーの窓口でご相談下さいそれと、申し遅れましたが私、受付担当のサーニャと申します今後とも宜しくお願い致します」
そう言ってエルフのお姉さんは、頭を下げた。
事務的だ。
取り敢えずプレートも出来たし、お金が無いとどうしようもない。
仕事探しにボードを見に行こうとしたらクリスに。
「仕事するの?家でご飯とか食べて眠れるし良いじゃん」
と言われたが、お給料が有るわけじゃない。
「服、買いたいから!!」
当面の目標を述べてみるが、なんだかクリスは不服そう。
何かを閃いたのか、ハッとして一枚の紙をボードから剥がして僕の目の前に掲げる。
「薬草採集に行こう!ポーションの材料!私もハーブ摘みに行かなきゃいけないし!」
ポーション、ファンタジーな言葉出た。
昨日湖でクリスに会ったのは、ハーブ摘みに来てたのかと、納得した。
取り敢えず初めてのクエストは薬草採集にしておこう。
少しでもお金になるといいな、男物の洋服買いたいし。




