〜閑話〜龍を屠る者?
俺はキース、王都では結構、名の知れた『龍を屠る者』と言うパーティのリーダーをやっている。
トップランカーの『銀狼』の次には強い筈だ。
パーティメンバーの他の三人とは、元々、王宮の騎士団に所属していたのだが、あまりの戒律の厳しさに耐えられなくなり、辞めて冒険者になった。
だから全員が前衛の剣士と言う異例のパーティ構成になっている。
『龍を屠る者』と言うパーティ名は、いつかドラゴンを倒すのを目標に掲げて付けた名前だ。
まあ、滅多に出会う事ないドラゴンだが、出会ったら俺がサクッと討伐してみせよう。
あくまでも出逢えれば、だが。
今は、国からの魔物の調査依頼で集合場所の城門前にいる。
一週間程の期間、拘束されるが、流石国からの依頼とあって報酬が良い。
冒険者も集まりだし、ギルド職員の説明が始まった。
俺たちも含めて30人程が今回の調査に参加するようだ、全体の指揮を執るのは『銀狼』のダームさん。
騎士団にいた時に騎士団長が何度も勧誘に行っていた程の実力者だ、当の本人は「ガラじゃねえんだよ!」と言って毎回断っていた。
ダームさんが指揮を執るなら今回の依頼は失敗はない、よく見れば周りの冒険者達も実力者揃い、良く耳にする有名パーティばかりのようだ。
まだ来ていないようだが宮廷魔道士の二人と魔術師が一人参加するとの事。
それに教会からも応援でクレリックが来ているらしい、周りを見回すと後ろの方に赤いクレリックの装束を纏った金髪の若い女性がいるのが見える。
どうやらプリーストのルミエールさんと言うらしい。
調査に若い女性が同行するとは思っていなかった、教会の女性クレリックは美人揃いだ!と冒険者仲間から聞いたことが有った、噂通り美しい女性だ。
この調査の間になんとかお近づきになりたい。
騎士団もそうなのだが、冒険者は女性と知り合う機会が少ない。
特に冒険者は危険を伴う仕事だから女性から敬遠されがちだ、トップランカーともなれば、そうでも無いのだろうか?やはり龍を倒して名実共にこの国の冒険者のトップに立たないといけない。
ん?でも『銀狼』のメンバーもみんな独身だった。
しかし龍を倒せばドラゴンバスターとしてモテモテになる筈だ。
そうこうしているうちに宮廷魔道士の二人が遅れてやって来るのが見える。
プリーストのルミエールが駆け寄っていく。
ん?トウコとアサギの他に見慣れない女の子が二人付いて来ている、二人とも凄い美少女だ、特に黒髪の子は彫刻のように恐ろしく整った顔立ちをしていた。
色白で手足は細く長い、少し背は低く胸が寂しい気もするがまだまだ成長していくだろう。
それにしてもあまりの可愛らしさに思わず見惚れてしまう。
ピンクのフリフリした衣装も彼女の為に有るのでは?と思わずにはいられないくらいに似合い過ぎてて愛らしい。
聞こえる話声から黒髪の子の方が調査に同行するようだ。
説明にあった魔術師と言う事か?こんな小さな子が?トウコとアサギと一緒に来たと言う事は、きっと見習いとして付いて来たのだろう。
此処は俺が魔物から彼女を守らなければ!
ギルド職員の説明も終わり、ダームさんの掛け声で調査に出発する。
歩き出した時、黒髪の子と一緒に来ていた金髪でメイド服を着ている子が突然、黒髪の子の頬にキスをした。
この位の年頃の女の子同士のじゃれ合いなのだろうか?美少女がこんな事をすると絵になるな、と思って見ていたら他の冒険者達も足を止めて魅入っていた。
俺達の視線に気付いた彼女達は顔を赤くして照れている。
その仕草がまたとても愛らしい。
最初に目指す場所は、王都から一番近い農村に向かい、そこで依頼をこなし一泊となるようだ。
道すがら他の冒険者達から黒髪の子の情報を集める。
黒髪の子の名前はマコトさん、宿屋『雅』で働いていて、宿屋では『マコちゃん』と呼ばれているそうだ。
一緒にいた金髪の子は『雅』の娘、クリストファーさん『クリス』と呼ばれていて、二人とも冒険者の中では『雅の看板娘』として割と有名なのだとか。
マコちゃんは魔術師でウルフの討伐をした事があるらしい。
ウルフを倒す程の魔術師がなんで宿屋で働いているのか?普通はそのくらいの実力があれば宮廷で働く。
給料も良く安定しているからだ。
そんな疑問を口にすると『雅』に宿泊している冒険者が教えてくれた。
マコちゃんは割と常識が欠落している所があるらしく、噂では他国の貴族か王族かも知れない?と囁かれているそうだ。
貴族か王族?マコちゃんがヒラヒラのドレスを着てお茶を飲んでいる姿を想像してしまう、あまりにもハマり過ぎていて、その噂は強ち間違いでは無いような気がする。
そうこうしているうちに村に着いた。
食事が用意されているとの事なので案内人について移動しようとしていたらダームさんから呼び止められる。
なんでも村に魔獣が出没していて家畜が襲われているらしく討伐依頼が出ているらしい、安全確保の為に先に村の周りを見廻りして来て欲しいそうだ。
こんな事を俺達だけに頼むなんて、どうやらダームさんに信頼されているようだ。
実力を認められた気がしてなんだかむず痒い気持ちだ。
二つ返事で見廻りに行く。
一通り見回ったが魔物の姿は確認出来なかった。
若い女性も同行している、安全確認は大事だ、それにマコちゃんを危険な目に合わせる訳にはいかない、実に有意義な仕事だ。
食事を頂きに集会所へ行くと彼女達の姿はもうなく、女性達は村長宅に泊まるそうだ。
食事をしながら話が出来れば良かったのだが仕方ない、マコちゃんを守るためだ。
食事を終えて見張りの交代まで少し休憩していると少しウトウトしていたようだ。
外は既に日が落ちて真っ暗だ、今日は月も出ていない。
松明を持って見張りを代わりに行く、牧草地の方へ歩いていると慌てた様子で駆けてくる冒険者がいた。
今まで見張りをしていた者らしい。
「おい!どうかしたのか?」
「魔物が現れた!暗過ぎて数が把握できないがウルフのようだ!俺は応援を呼んでくる!牧草地へ急いでくれ!」
そう言って彼は集会所の方へ走っていく。
急がなければ!俺は牧草地に向かって駆け出した。
牧草地へ着くとかなり暗い、腰に挿した剣を抜き、構える。
松明の明かりだけが頼りだ、ポツポツと見える松明の明かりと他の冒険者の怒声が聞こえ、俺も存在を示すように叫ぶ。
「応援に来たぞ!魔物の位置は?!」
叫んだ時、村長宅の方から、空に光の玉が上がっていくのが見えた、そしてパァーと光は増して辺りを照らした。
魔道士の魔法か?有難い、サッと周りを確認するとウルフが10程確認できた。
集会所にいた冒険者達も駆けつけてくる、これなら戦える。
突然の明かりと増えた冒険者達に戸惑ったのかウルフは距離を取り始める。
その時、突然黒くて大きな影が森の方から駆けて来るのが見えた。
黒いウルフ!普通のウルフより格段にデカイ!
奴はヒラリヒラリと冒険者達を交わしながら村の中心に向かっていく。
不味い!冒険者達は全て牧草地に集まっている、そう思いながら黒いウルフを追うように駆け出した。
黒いウルフは村長宅の方へ走っていく、その先には村人達が集まっているのが見える。
間に合わない!そう思った時、ウルフに向かって氷の槍が飛ぶ!
槍が飛んで来た方を見ると、なんとマコちゃんが下着姿で走ってくる。
そして氷の槍に怯んだウルフと村人の間に割って入りウルフと睨み合う。
不味い!流石に見習いの魔術師、普通のウルフは倒せてもこの黒いのは厳しいだろう。
そう思いながらさらに走る速度を上げるがウルフは彼女に向かって牙を剥いた!
間に合わない!そう思った時、何処から出てきたのか彼女の左手には剣が握られ、流れるようにウルフの牙をを交わしながら一閃する。
俺は足を止めた。
美しい!下着姿が!と言う意味ではない。
まあ、露出した透き通る様な白い肌も、下ろしていてサラリと長い黒髪も美しいが、ウルフを一閃した剣技!恐らく騎士団でもこれ程の剣技を持った者は少ない。
思わず見惚れてしまった。
視線に気付いたのか彼女と目が合う、下着姿なのだ、疚しい気持ちもあり思わず視線を逸らす。
視線を逸らした事で彼女もチラッと下を向き自分の状態に気付いた!
「にゃあーーーーーーー!!!見ないで!恥ずかしいから!!あっち向いてて!!!」
彼女は叫びながらしゃがみ込む。
「マコちゃん!何やってんすか!痴女っすか!」
そう言って走り寄ってきたルミエールからタオルケットを被せられ必死で身体を隠していた。
そうしてる内にダームさんがこちらにやって来た、向こうのウルフも片付いたようだ。
ダームさんは集まった俺達や、うずくまる彼女を見て何か察したみたいだ、一度ため息を吐いて「終わりだ終わり!散れ散れ!」と言って解散させられた。
翌朝、集会所では昨日、マコちゃんがブラックウルフを倒した事が噂になっていた。
光の魔法も彼女の魔法だったそうだ、魔法使いとしても一級、剣士としても一級!しかも女神の様に美しい、一体何者なのだろうか?
そう思っていると、遅れて来たダームさんが昨日の下着姿の事を持ち出す、マコちゃんは目を釣り上げて怒っていたが怒る姿も可愛らしい。
しかしダームさんは女性に対してデリカシーが無い、だからトップランカーなのに独身なんだな、と納得した。
村を出て森の中の道を歩きながら考える。
マコちゃんの実力は目を見張る物が有る、今回の調査の間に親しく、と思っていたが昨日の剣技や魔法を知ったパーティからの誘いが有るのでは無いだろうか?それなら先に手を打っておく必要があるな。
早速、探ってみよう!そう決めたら行動は速い。
後ろの方を歩く女性陣に近寄り話が途切れたのを待ってマコちゃんに声をかける。
「あの俺、キースって言うんだけど、マコトさん?マコちゃんで良いのかな?」
「はい.......そうですけど、呼び方はどちらでも、何か用ですか?」
彼女は上目遣いで俺を見ながら遠慮がちに話す、少し頬が赤いような気もする。
男に声をかけられて緊張してるのか?近くで見ると大きな瞳に長い睫毛、肌も抜けるように白く美しい。
「用って言うか、マコちゃんは宿屋で働いてるって聞いたんだけど、これからは冒険者をやるつもりなの?」
「まだわからないですけど.......出来ればそうしようかなって思ってます」
これはチャンスなのでは無いのか?こんな子がパーティに居てくれたらどれだけ毎日が充実した物になるか!ここで誘わない手は無い!
「俺たち『龍を屠る者』って言う王都ではちょっと名の知れたパーティなんだけど、聞いた事無いかな?」
「知らないです、ドラゴンを倒したんですか?」
「イヤ、これから倒す予定なんだ!」
心成しか尊敬の眼差しを向けられてるような気がする!そうだろう、ドラゴンを倒してトップランカーになる冒険者だ、しかも元、騎士!見る目が変わるのも仕方がない。
「是非マコちゃんにウチのパーティに入って貰いたいんだ!」
「考えときます!」
「良い返事を待ってるよ!」
俺たちの後に2組のパーティが勧誘していたがその場でお断りされていた。
これは脈アリだな、きっとうちのパーティを選んでくれるはずだ。
良い返事を貰ったら「貴方の騎士が貴方を守ります」とか言ってみるか?
そうだ今回の報酬で指輪を買おう!指輪を渡しながら言えばカッコいいじゃないか!
「人生の伴侶としても貴方を一生守ります!」とか最高に良いじゃないか?
指輪を受け取り、ウットリとしたマコちゃんの顔が頭に浮かぶ。




