早朝決戦?
なんとなく暑くて寝苦しく、目を覚ますと隣で寝てたルミが僕を『抱き枕』状態にしてる。
テントの隙間から薄っすら日が射し込む、夜も明け始めてる時間。
「ちょっとルミさん!起きてよ!離して!」
ルミの顔を手で押して引き剥がそうとするが意外と力が強い。
寝ぼけているのか巻きついた腕に更に力がこもってくる。
「ちょっと!」
その時、鈴の音が鳴る。
そして音は大きく次第に増えていく。
その音に慌ててトウコさんアサギさん、ルミが飛び起きる。
「この音何?!」
「魔物!多い!!」
僕の質問にアサギさんが動揺した様子で返す。
魔物!僕は慌ててテントから飛び出す、早朝、日は登り始め朝焼けが眩しい。
鈴の音に飛び起きた冒険者達が武器も持たずに呆然と立ち尽くす。
ふと周りを見渡すと距離はあるものの既にオークとウルフの軍勢に完全に取り囲まれていた。
森の中からは湧きだすように魔物の軍勢は密度を増す。
優に千は超えているだろうか?
数の優位を悟ってかオークはニヤついているようにも見える。
更に、突然飛来した10匹のワイバーンが魔物達の先頭に降り立つ。
冒険者達の表情は悲壮感漂い膝をつく者もいる。
テントから出てきたトウコさんアサギさんも同様の表情を浮かべ、ルミは胸元で杖を両手でキツく抱きしめる。
周りの絶望感漂う中、僕は冷静に考えていた。
範囲魔法を使う?でも冒険者達を巻き込むかも?
ゲーム内ではパーティ登録しておけば範囲魔法を使ったとしてもパーティメンバーには魔法は当たらない。
今、周りにいる冒険者達がパーティとして認識されるのか?そもそもパーティ登録が出来るのかもわからない。
冒険者を巻き込むかもしれないなら致死性の魔法は使えないね。
考えを纏めて叫んだ。
「全員地面に伏せて!!エリアスタン!!!」
冒険者達が伏せたかも確認しないまま魔法を放つ。
もし当たったら運が悪かったと思ってね!死にはしないから?
雷鳴と共に閃光が魔物達の中心に落ちる。
立て続けに轟音と共にいくつもの雷が雨のように魔物達を襲う!目も開けていられない程の光の渦、地響きを感じるほどの轟音!
どこに落ちるかは予測がつかない、ただ自分には当たらない筈だけど。
と、思っていたら目の前に落ちた!怖!
ひとしきり続いた光の雨は終息を迎え、一際大きな雷鳴を轟かせ一番近くにいたワイバーンを襲い、辺りは静まり返る。
立っている魔物はオークが数える程。
魔法が収まったのか確認するように冒険者達は顔だけ上げて辺りを見回す。
再度僕は指示を叫ぶ。
「気絶してるだけだから!トドメを刺して!!ワイバーンへの攻撃優先!急いで!!」
ワイバーンが起き上がって来ると面倒だ。
魔力耐性が強いから直ぐに起き上がる可能性がある。
僕も指輪を剣に変え、運良くまだ立っている魔物への攻撃を始める。
冒険者達が立ち上がりそれぞれの武器を持ち、倒れた魔物へのトドメを刺し始める。
何人かの冒険者は立ち上がらない、巻き込まれたっぽい。
運が悪かったのか、伏せるのが遅かったのか、死んでは無いよね?
チラッと見るとトウコさん達も立ち上がるのが見えた、無事っぽい。
立っている魔物をサクッと倒すと後はひたすら倒れている魔物へのトドメを刺す作業だ。
サクッサクッと魔物に剣を突き立てていく、周りは魔石だらけになっていく。
作業を続けているとトウコさんが震えるような声で僕の後ろを指差しながら叫ぶ。
「まっマコちゃん!.......」
僕の周りに巨大な影が差していた、思わず振り返る。
それはいつからそこに居たのか?音も無く巨体を宙に浮かべ、僕たちを値踏みするように見下ろす。
「ドラゴン?!」
その真っ赤な巨体は何をするでも無くただそこに浮かび僕と視線を合わす。
ふと僕は思い出して『龍を屠る者』を探す、居た!目が合う。
「キースさん!」と声を掛けてドラゴンを指差す。
『龍を屠る者』のメンバー達は必死で首を横に振っている。
なんで?チャンスなのに?
ドラゴンはチラッと目だけ『龍を屠る者』に向けたがまた僕に目を向ける。
怖いから睨まないで!
ドラゴンは思い出したように一方向に目を向け、一度翼をはためかせ目を向けた方角に飛び立つ。
トウコさんがドラゴンが飛び立った方向を見て慌てだす。
「やばい!あの方角!王都に向かってる!マコちゃん!行ける?」
トウコさんの行ける?の意味がわからない、走って追いかける?僕は小首を傾げる。
その様子にトウコさんはバックから巻物のような物を取り出し紐を解きながら言う。
「もしもの時の為に脱出用にエル様から預かってたの!マコちゃんは落ち着いてるって事はアレをなんとかする自信があるんだよね?」
またエル様?何者?今はそれはいいか、自信と言うか倒せる!極大魔法使っても良いし、今の身体能力なら物理でぶつかっても勝てると思う。
僕はトウコさんに静かに頷く。
トウコさんはアサギさんに「後は任せる!」と言いアサギさんとルミは頷く。
そして僕の手を握り「行くよ!」と言うと巻物を広げる。
その途端、巻物から魔法陣が現れ上から下へ、僕とトウコさんを飲み込むように消えていく、視界が光に包まれる。
次に視界が戻った時には王都のギルド前の広場に立っていた。
足元には先程の魔法陣が有って、スーと消えていく。
突然現れた僕たちに周りの人達がどよめく。
朝の開店の準備や仕事に向かう人達で広場は人が多い。
突然後ろから「マコちゃーん!どうしたの?もう帰ってきたの?」と呼びかけられた。
アリス制服姿のクリスが走り寄ってくる。
「クリス何してるの?」
「お使い!市場に行くところ、所でマコちゃん帰るの早くない?どうしたの?」
「それより大変なんだよ!ドラゴンが!避難.......」
言いかけた僕にトウコさんが「マコちゃん!」と、城門の方角を見ながら叫ぶ。
さっきのドラゴンが向かって来るのが見える、早い。
周りの人達も気づいたのか辺りは騒然としてきた。
ギルドの中からも人が出てきて慌てる様子が見える。
その間にもドラゴンはこちらに迫って来る、クリスもドラゴンの姿に息を飲む。
そしてドラゴンは音も無くギルド前の広場上空に来て止まる。
僕を見つけたドラゴンは僕がいる事に驚いたのか僕と目を合わせ大きく息を吸うように口を開ける喉の奥に光が集まるように見えた。
ドラゴンブレス?!気付いた僕は慌てて「シールド」と唱える。
周りにも被害が及ばないようにかなり大きな青く薄透明な魔法陣がドラゴンと僕の間を隔てるように浮かぶ。
同時にドラゴンは口から真っ赤な炎を吐き出すようにブレスを放つ。
魔法陣は光を増しブレスを受け止める、ドラゴンは尚もブレスを吐き続ける。
保たない?直感的にそう感じた僕は「シールド!シールド!」と唱えた、ブレスを受け止める魔法陣に重なるように新たな魔法陣が二つ浮かんだその時、一つ目の魔方陣がガラスが割れるように砕けた!
そして二つ目の魔法陣がブレスを受け止める。
二つ目の魔法陣に阻まれた事でドラゴンはブレスを止める。
そして僕を値踏みするように目を細める。
ドラゴンは威嚇するように吠え、身体を縮こませるような動きをしたかと思うと翼を一度はためかせ一直線に僕に向かって突貫してきた!肉弾戦?距離はどんどん縮まり最後のシールドを簡単に打ち破る。
シールドは魔法攻撃には効くが質量のある攻撃には弱い。
僕はクリスに「離れてて!」と言ってギルドの建物を背にドラゴンに向かって走り出しながら、指輪を剣に変え構え振り抜く、その時トウコさんが「マコちゃん!剣はダメ!」と叫ぶ!
あっ!そのセリフ昨日も聞いた!でも、もう遅い!剣は既に走り始めている。
ドラゴンは突然僕の手に現れた剣に驚愕の表情を浮かべながらも慣性には逆らえず突っ込んでくる。
僕はそのまま剣を上段から振り抜いた!
ドラゴンはかろうじて頭を逸らしたが首から腹にかけて剣は一気に切り裂いていき断末魔をあげながらドラゴンの体は僕の背後へと吹き飛んでいく。
同時に大量の血飛沫を振り撒き、僕はまた血飛沫を頭から浴びる。
背後でドーン!と崩れる音と地響きが起こる。
恐る恐る振り返るとギルドの入り口付近に大穴が開いている、そこからドラゴンの長い尻尾だけがダラリと出ているのだけが見えている。
背後に殺気を感じる、振り向くとギルド職員のサーニャさんが立っていた。
怒ってる?!
「ご!ごめんなさいいい!!すぐにどかします!!!」
僕は慌てて動かないドラゴンに駆け寄り、建物から引き摺り出そうとドラゴンの尻尾を掴んだその時。
ピシ!ピキ!ミシミシ!壁に亀裂が入っていく!そして.......
ドドーン!!ガラガラガラ.......あの大きなギルドの建物は大穴を中心にして崩れていった。
完全崩壊.......ギルドがあったその場所はドラゴンの死体と瓦礫の山だけが残った。
周りの人達やトウコさん、クリスも唖然とした表情で元ギルドだった場所を見つめる。
僕は殺気を感じてゆっくりと振り返る。
額に青筋を浮かべたサーニャさんが腕を組み僕をひと睨みして口を開く。
「マコトさん.......詳しい話は後日.....」
「.......はい.......」
ドラゴンの返り血でドロドロのまま項垂れた僕にクリスが哀れみの表情でポンと肩を叩いた。




