調査2日目?(中間)
森の中を道沿いに進んでいく、前の方は冒険者達が警戒しながら歩いているのでただ付いて行くだけの様になってしまっている。
ルミが手持ち無沙汰なのか杖をバトンのように片手でクルクルさせながら僕に聞いてくる。
「所でマコちゃん、そう言えば昨日の剣ってどっから出したんすか?持ってなかったすよね?」
「ああ、アレね?この指輪が剣になるの」
そう言って指輪を剣にしてみせると、トウコさんが「イスドールの剣よ」と補足する。
ルミは、驚いた様子でトウコさんを一度見て、僕にまくし立てる。
「マジっすか!誰も抜けなかった剣って!マコちゃん抜いたんすか!パネエ!しかもあの剣技って.......城の騎士より強エーんじゃねえっすか?魔法使いって聞いてたから、てっきりウチは魔法で戦うもんって思ってたんすけど、剣出した時には度肝抜かれたっす!」
一通り言い終わるのを待ってトウコさんとアサギさんが口を挟む。
「マコちゃんは剣って誰に習ったの?」
「見た事無い魔法、師匠知りたい」
「ゲームで覚えましたー!」とかは言えないよね?体が勝手に動くって言うか覚えてる?って言う感覚、此処は独学で.......かな?と思っていたら助け船?がルミから入る。
「もしかしてエミーナ様に教えてもらったんすか?」
「誰?エミーナ様?国と同じ名前?だよね?王族関係?」
「国と同じって言うか、この国が勇者様の名前を頂いて国名をエミーナにしたって言うのが正解なんだけど、ルミが言ってるのは冒険者の方でね.......」
そう言ってトウコさんが説明してくれる。
なんでもトウコさんの知り合いに、子供の頃『エミナ』と言う冒険者に魔法や剣を指導して貰って、国の中で誰も勝てない位の実力を付けた人がいるそうだ。
その冒険者『エミナ』は自分がその勇者本人で、エミーナの名前も「一緒に魔王と戦ったエルフが間違ってエミーナと呼ぶので皆んなエミーナと呼ぶ様になった、本当はエミナが正解なんだ」と言っていたらしい。
神話の中の勇者様が生きてるとかあり得ない!と誰もその話を信用しなかったそうなのだが、指導して貰ったと言う本人は「あの方は勇者様だった」と頑なに信じているらしい。
勇者かどうかは抜きにして、実力に関しては間違いないとの事だ。
勇者が日本人なら『エミーナ』より『エミナ』の方が確かに日本人らしい名前だ!名前に関しては本当の事を言ってるんじゃないかなと僕は思う。
そうすると『エミナ』が勇者の名前なら勇者は女性?
なんとなく勇者は男性のイメージがある。
「あの、トウコさん?勇者様って女性なんですか?」
「えっ?そうだけどマコちゃん知らなかったの?」
「まあ、神話を習って無いので.......」
「そうなんだ?」
目を逸らし、習って無いと言う僕をトウコさんとアサギさんが訝しそうに見つめていた。
神話を知らないのは、この世界では常識的に不味いのかな?不味いよね?
無言になって気まずく思っていると、前の方からルミよりちょっと年上くらい?20歳前後ぐらいの四人の冒険者が僕の方に近寄って来た。
宿では見た事の無い顔だけれど、なんだか見覚えが.......っ昨日パンツ見られた冒険者だ!
なんかやだなぁと俯き気味になるとその中の一人が代表者として声をかけてきた。
「あの俺、キースって言うんだけど、マコトさん?マコちゃんで良いのかな?」
「はい.......そうですけど、呼び方はどちらでも、何か用ですか?」
「用って言うか、マコちゃんは宿屋で働いてるって聞いたんだけど、これからは冒険者をやるつもりなの?」
「まだわからないですけど.......出来ればそうしようかなって思ってます」
僕がそう言うとキースは他の三人と顔を見合わせて頷き合って言った。
「俺たち『龍を屠る者』って言う王都ではちょっと名の知れたパーティなんだけど、聞いた事無いかな?」
「知らないです、ドラゴンを倒したんですか?」
「イヤ、これから倒す予定なんだ!」
えっ?!『龍を屠る者』なんてパーティ名だから、てっきり何匹かドラゴン倒してるものだとばかり思ってたのに.......パーティ名は自由だと思うよ、でも......僕は微妙な顔になる。
ゲームの中では何回かボスキャラとして出現したのでドラゴンとは戦った事は有るのだけど、この世界にもドラゴンはいるんだね、アイテムもドロップするのかな?そんな事をボンヤリ考えてたらお願い来た!
「是非マコちゃんにウチのパーティに入って貰いたいんだ!」
すっごい爽やかな笑顔で言われたけど、冒険者をやって行くにはパーティが必要なのかな?でもゲームではソロが多かったんだよね、それにドラゴン倒した事が無い『龍を屠る者』はちょっと........
「考えときます!」
日本人的、お断り!日本文化が有るこの国なら意味は通じているでしょう?
「良い返事を待ってるよ!」と言いながらキース達は離れて行った。
ちゃんと意味通じてる?そう不安に思っている所でルミがニヤニヤしながら言ってきた。
「マコちゃんこれから大変っすよ」
「何が?」
「パーティのお誘いっすよ!昨日の実力を見て、皆んな戦力として欲しがるっす!それと、これが一番重要なんすけど.......」
「なに?パーティ入るのに戦力以外に何か必要なの?お金とか?僕、貧乏だよ?」
「あっ心配しなくてもマコちゃんは持ってるっす!マスコットとしての可愛さっすよ!」
「.......必要無いと思う」
「マコちゃんは分かって無いっすね?」
「わからなくていい.......」
「そんなツンデレしたって可愛いだけっす」
「デレは無いから」
この後2組のパーティからお誘いがあったが「考えときます」では不安なのではっきりと「お断り」して置いた。
そんなやり取りをしながら冒険者達と更に森の奥に進む。
途中、3から5匹のウルフの群れと数回遭遇するが前衛の冒険者達で全て対処してしまう。
森の中とはいえ日は高くなり、だんだんと暑くなってきた、喉が渇いたなと思っていると、木々に遮られていた視界が急に開けた。
森と森の間を隔てるように小川が流れている、大小の岩も転がってる。
そこにダームさんが「ここで一旦休憩を取るぞ」と言い、冒険者達は座り込んだり、小川の水を飲んだり、顔を洗ったりする。
どうしようかな?皆んな普通に川の水飲んでるけど、お腹壊しそうだし、悩んでいた所で買い物中、水の玉を冷やして飲んだ事を思い出した。
早速手頃な岩に腰掛け水の玉を作り凍れ凍れ!と念じる。
直ぐに中心が凍り出したので念じるのをやめて水の玉に吸い付く。
「冷たくて美味しい!」
ほっと息を吐くとその様子を目敏く見つけたルミが「マコちゃんなに飲んでるんすか!」と近寄ってくる。
「お水だよ?」
そう言うとルミは水の玉と僕を見比べ水の玉に吸い付く。
「なっ!冷たいす!.....マコちゃんちょっと待つっす」
そう言ってルミは僕を立たせて、腰に下げたバックから何やら小さい袋のような物と細い棒を取り出し袋の中に入ってた黄色い粉を水の玉に振りかけ棒でかき混ぜる。
「マコちゃん、飲んでみるっす」
水の玉は黄色に染まってる。
「なにコレ?変な薬じゃ無いの?」
「大丈夫っすよ!ウチのビショップがくれたっす」
ビショップね.....怪しく思いながら、恐る恐る飲んでみる。
「!.....パイナップルの味がする!」
「なに飲んでるの?」
トウコさんとアサギさんもそう言いながら水の玉に横から吸い付く。
「「!.....」」
「コレあれだ!駄菓子屋で10Gで売ってたアレ!」
「子供の頃作って飲んだ、色々味があった」
そう言って喉が渇いていたのか二人共また、水の玉に吸い付いた。
ルミも慌てて吸い付いてきたので僕も飲まれてしまう前に慌てて吸い付く。
側から見ると四人で水の玉にキスしてる様な変な光景、あっと言う間に水の玉は無くなった。
「ルミさん、美味しかった!でも鬼とか言ってたけどビショップ優しいんじゃない?」
「イヤ、マコちゃんは知らないからそう言えるっす!アイツは鬼っす」
そう言いながらルミはポケットから取り出したハンカチで僕の口を拭いてくれた。
周りを見ると冒険者達はそれぞれ腰掛けて携帯食や瓶入りの保存食を食べている。
お昼か、持ってきたビスケットもどきでも食べようかな?と思っていると、トウコさんがバックをゴソゴソしながら「そう言えばおばあちゃんから預かってたんだけど。
そう言って出してきたのは筍の皮で包まれた物と竹筒が四つづつ。
僕はトウコさんから受け取り、大きい木の日陰になっている岩に腰掛け筍の皮を開いてみる、大きい白オニギリ二つと沢庵が入ってた、竹筒は緑茶みたい。
「お弁当だ!おばあさん頂きます!」
早速大きいオニギリを頬張る。
塩気が効いてて美味しい!中にはオカカが入れられてた、沢庵がいいアクセント。
あっと言う間に大きいオニギリ二個を一気に食べてしまって、緑茶を飲む。
結構お腹が空いてたのかな?でも自然の中で食べると余計に美味しい。
ひとしきり休憩した後、ダームさんの掛け声で午後からの移動が始まる。




