大剣とピンキーリング?(後半)
応接室を出て、僕を中心にクリスとミリアと並んで廊下を歩く。
カロンは、黙ってそれに付いてくる。
歩きながらジッと僕の横顔を見つめるミリアの視線に気付いていたが、それよりも大剣の事が気になっていて、敢えて何も言わなかった。
黙って歩く僕とクリスに、話辛そうにミリアの方から先に問いかけてきた。
「あの.....お二人はお幾つなのですか?」
「私もマコちゃんも15です」
「そうなのですか?私と同い年なのですね」
クリスの答えにミリアは僕とクリスの顔を交互に見てモジモジしながら言った。
「あの.....お二人は、その.....お付き合いされているのですか?」
予想外の問い掛けに思わず立ち止まる、そんな事は無い。
しかしクリスはミリアの様子に何かピンときたようで、突然僕の腕に自分の腕を絡み付けてミリアに言い放った。
「お付き合いと言うか〜同棲してまーす」
ミリアは、呆然とした表情で「えっ同棲」と小声で呟く、僕は慌てて。
「ちっ違います!クリスの家に居候してるだけで、ちが」
「えー毎日一緒のベッドに寝てるのに〜違わないよねぇ!」
言葉を遮るようにクリスが畳み掛ける。
ミリアはこの世が終わったかのような顔になる。
「そんな.....同棲、一緒のベッド.....」
俯いて焦点の合っていない目をして小声で呟いて居たかと思うと、突然ガバっと顔を上げクリスを指差し言い放つ。
「はっ破廉恥です!そんな!女の子同士で!そんな....そんな羨ましい事....ゆっ許しません!」
「え〜でも〜ハダカも見せ合っちゃったし〜下着も同じ物付けてるし〜魔物から私の事〜命賭けで守ってくれたんですよ〜」
「ちっ違いますからねミリア!間違って無いけど違うから!クリス!変な事言わないで!それに女の子同士とか違う!お金が無いだけだから!貧乏だから!」
「お金?!お金ね!カロン!今すぐ家中の現金を集めて来て!」
「そうじゃ無いから!違うから!!!!」
ヤバイ!この子達ヤバイ!ミリアはマトモだと思ってたのに!
僕は慌てて、走り出そうとするカロンさんの服を引っ掴んで止めたがクリスとミリアはお互いを罵り合いだした。
終いには掴み合い、取っ組み合いに、僕もカロンさんの服を掴んだまま、揉みくちゃになって必死で止めに入った。
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「本当に男の子なんですの?」
ミリアはクリスに問いかけると、クリスは無言で頷く。
「信じられませんわ.....ん?それはそれで良いのかも.....」
小声で言ったミリアの言葉にクリスはピクリと反応するものの何かを言う体力はもう無い。
取っ組み合いに疲れ果て、肩で息をしながら四人共床に座り込んでいた。
座り込んだ時にようやく説明が出来た。
盗賊襲われ説、お金が無い事、宿屋にお世話になっている事、男の子である事。
「分かって頂けました?ミリア様?」
「ミリアで宜しくてよ?マコト」
「でも、僕は平民.....だよ?」
「学園では特待生の平民も居りますが、誰も敬称付けて呼びませんわよ?クリスも良いかしら?」
「敬語面倒だから助かるわ、宜しくねミ・リ・ア!」
そう言ってフフフ、ホホホと変な笑みを浮かべてクリスとミリアは握手した。
なんだか二人共、手に力が篭ってるみたいなんだけど。
取り敢えず落ち着いた事に、ほぉっと息を吐き当初の目的を思い出して、玄関ホールに向かうように促した。
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大剣は朝来た時から変わらずに床に突き刺さっていた。
近くに寄って見てみると、やはりゲームの時に持っていた物と全く同じ物だった。
剣身には精細な彫刻が刻まれ、柄の部分には宝石が嵌められている、美しい大剣だった。
ゲームの時より大きく感じる、僕の身長より大きい、そう言えばあの時とは身長が違う事を思い出した。
この大剣はゲーム序盤で手に入れた物だ、たまたま出会ったレアな魔物『ブラックウルフ』の討伐でドロップした。
この魔物が曲者で魔法攻撃を一切受け付けず、ひたすらポーション飲みながらショートソードのみの物理で戦った。
魔物がレアだからか、ドロップがレアだったのか、同じ大剣を持っているプレイヤーに出会うことは無かった。
今思えばトッププレイヤーに登り詰める事が出来たのはこの大剣の
存在が大きかったかもしれない。
大剣を手に入れてからのステータスの伸び激しかった。
「ミリア?触ってみても良い?」
「どうぞ、なんなら抜いてみても良いですわよ?」
ミリアは、笑いながら言った。
無理だと思うよね、誰も抜けなかったんだから。
でも僕には確信があった。
だってゲームで使ってたし、僕は所謂異世界人だ。
此処はやっぱりサクッと抜いて見せるところでしょう?
どんな物語でも刺さってる剣は勇者が抜く、僕は勇者では無いかも知れないけれど。
と、思っていたのに予想外の事が起こった。
大剣の柄に左手で触れた瞬間。
大剣は眩く光り、そのまま粒になって弾け、収束して僕の左手の小指にまとわりついた。
光が収まった後、指には可愛らしいデザインの小さな宝石が付いたピンキーリングが嵌っていた。
「「「「 えっ!!!! 」」」」
思ってもいなかった現象、一同絶句する。
一番最初に口を開いたのはミリアだった。
「指輪に変わった.....と言う事ですか?」
「分からない.....けれど剣が消えて指輪が現れたから、そうなのかなぁ?」
僕は指輪を見ながら答えるが、それよりも中指に嵌っていた指環に目が行って考える。
そう言えば、この世界に迷い込んだ切っ掛けはこの指環だ。
ボーっと考えているとクリスが不安げに聞いてくる。
「マコちゃんどうする?」
聞かれて思い出す。
指輪に変わったが、もともと大剣の所有者はイスドール家だ。
しかも勝手に指輪に変えてしまった。
取り敢えず指輪を返す?と思い指から抜こうとするが。
「ん?抜けない!」
「指輪に変わったんだから剣にも出来るんじゃ無い?」
クリス、ナイス!と思いながら、でも、どうやるの?
念じれば良い?呪文?取り敢えず声に出さずに剣になれ!と思ってみる。
すると指輪に気力?血液では無い何かが吸われる感覚、これがもしかして魔力!?
と思っていると左手に剣が現れた。
「できた!あれ?小さい?」
僕の身長からするとロングだが、元々あった大剣からは程遠いショートソードになっている。
意匠はそのままに小さくなった剣が僕の左手に握られていた。
「えっと、見せて貰っても?」
ミリアが剣に手を伸ばして来たので渡そうと手を離した瞬間。
剣はまた光って指輪に戻った。
何度か剣にしたり指輪にしたりを繰り返し、僕以外に手にする事が出来ない事が分かると、ミリアが。
「取り敢えず、マコトがお持ちになってて下さい、お父様とお母様には、私から言っておきます」
今まで邪魔者扱いしていた物だから、大した話にはならないだろうと言ってミリアは、その場を収める。
すると今度はクリスが窓の方を見て焦り出した。
「マコちゃん!ヤバイ!そろそろお客さん達帰って来るよ?」
色々あって遅くなっていた事に気付く、もうすぐ宿の夕食の手伝いの時間になる。
ミリアに宿の仕事の事を言ってお暇する事を告げる。
「クリス着替えないと!」
「いいよ!このまま帰ろう!時間ないよ?」
なんだかクリスの策略通りな気がしてメイド服は着替えたかったが、本当に時間が無い。
ミリアが宿の制服は後日届けると言ってくれたので、そのまま宿屋に走って帰った。




