大剣とピンキーリング?(前半)
一話にまとめ切れなかったので、前半、後半に別れました。
広々とした応接室、中央に豪華でゆったりとした応接セットの長椅子に、僕とクリスは座っている。
向かい側のチェアーに銀髪美少女、その後ろには肩を落として立っているカロン。
応接セットの横では、ルイが床に額を擦り付けて土下座している。
銀髪美少女は蔑むような目でルイを見下ろしていたが、沈痛な面持ちをして此方を向いて頭を下げる。
「この度はお二人に不快な思いをさせて仕舞い大変申し訳なく思います」
なんと言っていいのか分からずクリスと顔を見合す。
この美少女から謝られても困る、悪いのはルイだ、土下座しても許さないけどね。
言葉が出ない僕とクリスを察して、銀髪美少女はお詫びから話を切り替える。
「私、ルミリアスと申します、イスドール家の長女でルイフォルドの妹です、どうぞミリアとお呼び下さいませ、マコト様とクリストファー様でよろしかったでしょうか?」
ミリアは、ニコリと微笑むと此処に至るまでの経緯を話し出した。
何でもイスドール家の当主であるミリアの父母は、重要な会議で城に泊り込で家を空けていて、ミリア自身は以前から貴族や富豪の子息子女が通う全寮制の学園の寮で生活している為、家には居無いそうだ。
ルイは、両親の隙を見て今回の凶行に及んだみたい。
ミリアは今日、たまたま父母に用事を託けられ帰宅途中、ギルドのサーニャに偶然会った。
サーニャから「今回の依頼は、とても可愛らしい子を紹介出来た」と告げられた。
ミリアはサーニャが言っている意味が分からなかったが嫌な予感がし、全速力で走って帰宅。
カロンに何の依頼を出したのか問い詰め今に至る。
と、言う事だった。
ミリアは、はぁーっと息を吐いてルイに目をやると、今度は土下座して聞き耳を立てていたルイがバッと顔を上げて言い訳を始める。
「疚しい気持ちは無かったんだ!可愛い子が来たからちょっと調子に乗って.....そうだ!何もしてない本当だ!ちょっと給仕して貰っただけ!だからなん」
バン!!!!
「「「「ヒッ!」」」」
突然、ミリアはテーブルを両手で思い切り叩いて立ち上がりルイの前に腕を組み仁王立ちになる、鬼の形相、美少女が怒ると怖い。
僕とクリスは思わず抱き合ってブルブル震える。
カロンは両手を胸の前で握りしめ涙目で震えている。
ルイは飛び上がって後ずさる、ミリアはルイを睨みつけ口を開く。
「お兄様には貴族としての誇りはないのですか?.......報告します.....今回の件!お父様とお母様に報告します!!!」
「まっ待って!言うのだけは待ってくれ!!」
ルイは慌ててミリアの脚に縋り付き懇願を始める。
ミリアはそんなルイを蔑むような目で見下ろし、あっ!蹴った。
ルイは慌てて土下座し直す。
親に知られるのが嫌なんて、何処の小学生ですか?やらなきゃ良いのに.....
ルイが大人しくなったのでミリアはまたチェアーに腰掛けると一度咳払いする。
僕とクリスも座り直して背筋を伸ばす。
「大変お見苦しい所を、お見せしました、所で今回のことに対し、お二人には、お詫びをしたいのですが、何かご要望は御座いますでしょうか?」
僕はクリスと顔を見合わせる。
要望と言われても、取り敢えず今日のお給料が出るのならそれで良いのだけど。
クリスはどうだろう?主に迷惑を受けたのは僕だけど.....
「あの、お給料さえ頂ければ.....」
「私、このメイド服が欲しいです!二人分!」
「え?僕要らないよ!」
「要るよー!家の新しい制服ってどう?」
「.....要らない.....」
僕とクリスの、やり取りにミリアは少し困惑気味に「メイド服は正規の物では無いので差し上げます」と言う、お給料もギルドに依頼していた通り支払う事を約束してくれた。
話もひとまず終わったので帰ろうかな、と思ってふと玄関の大剣の事を思い出した。
「所でミリア様?玄関にあった大剣って何なんですか?」」
クリスも大剣を思い出して興味があるようでミリアに目を向けた。
ミリアは、思ってもいなかった突然の問いかけに一度小首を傾げて、ハッと思い出した様に
口を開く。
「大剣に興味がおありですの?まあ、あんな邪魔な所に邪魔な物が有れば気にもなりますわよね?」
ミリアは、「亡くなった祖父から聞いた話なのですけれど」と言って事のあらましを話出した。
何でもミリアのおじいさんが若くして当主を継いだ頃、屋敷の門の前にとても美しい女性が行倒れて居た。
あまりの美しさにおじいさんは一目惚れしてしまった。
名前を聞くと「マコファール」と女性は名乗った。
マコファールは、お腹が空いたと言うので屋敷に入れ、食事を振る舞ったのだが。
見た目や所作は貴族の令嬢か?と言うくらい美しいにもかかわらず、細い体の何処に入っていくのか、とにかく食べに食べた。
マコファールは食べるだけ食べたら帰る、と言ったので。
一目惚れしたおじいさんは引き留めた。
困ったマコファールは、お礼にと言って何処からとも無く出してきた大剣を床に突き刺し、おじいさんが呆気に取られている隙に逃げるように去っていった。
と、言う事らしい。
ミリアはそこまで話して一度ため息を吐いて。
「その後が困ったのです」と宙をあおいで話を続けた。
おじいさんが取り敢えず大剣を抜こうとしてみたがビクともしない。
刺さっているのが玄関のど真ん中、邪魔で邪魔でしょうがない。
そこで国の力自慢を集めて抜こうとしてみたが誰がやっても結果は同じ。
そのまま放置する事になった。
と、おじいさんから聞かされていたそう。
その後父母の代になりギルドに依頼したが誰も抜けない、鍛冶屋に頼んで解体しようにも
全く歯が立たない。
宮廷魔導師を呼んでも魔力にすら反応無し、そのまま今に至る。
との事だった。
なんなの?マコファール?
しかし、近くで見た訳では無いが確かにあの大剣はゲーム内で使っていた物とそっくりだった。
「ミリア様?大剣を近くで見てみたいのですけど良いですか?」
「それは構いませんが.....どうかしまして?」
「.....知り合いの大剣に似てたので.....」
ゲームで使ってた!とは言えないので取り敢えず目を逸らし、それっぽい事を言ってみる。
ミリアは、少し訝しんだ表情をしながらも、「では玄関にまいりましょう」と言って立ち上がる。
ミリアは土下座しているルイに目もくれる事無く部屋を出て行くが土下座中のルイはピクリとも動く事はない。
その様子に、僕とクリスとカロンの三人はルイに哀れんだ目を向けながら部屋を出た。




