褒美として妻にと望まれました(蒼玉side)
必ずお前を貰い受ける。だからおとなしく待っていろ。
そう言って私を見つめる灰色の瞳は睨まれているのかと思うくらいに鋭くて、いつもの飄々とした態度からは想像できないくらいの熱が籠っていて。
今すぐにでも攫ってほしいと思うくらいで。
でもね、一地方の兵であるあなたが国の守護者である私を貰い受けられるほど世の中は甘くないんだよ。
……そう思っていたのだけれど、西方守護軍でのあなたの活躍を聞くと期待してしまう。
もしかしたらって。
この十年であなたは西方守護軍第三部隊隊長にまで昇りつめた。
そして、今回の鬼の群れの殲滅。
帝が「褒美に望みを一つだけ何でも叶えてやる」と仰せになられたら、あなたは私を妻にと望んでくれた。
うれしい。うれしい。
うれしすぎて、何も言えずにただ彼を見つめてしまう。
二人で見つめ合っていると、皇女様が彼に「この恥知らずがっ、我が国の守護をお前のような奴には渡さんわっ」と怒鳴りつけた。
……今何とおっしゃいました?
お前のような奴ですって?
あの皇女様はこの国を守っている方位軍のことを軽視している傾向があるとは思っていましたが、よりにもよって彼をお前のような奴ですって?
私が静かに怒りを耐えていると帝は皇女様を諫めてくださった。
「華乃、口を慎め。この七房はこの度の鬼討伐の功労者だ。七房が鬼を殲滅しなければ我が国は甚大な被害を被っていたのだぞ。」
「ですが兄上、蒼玉は我が国の守護者ですぞ。渡すなど……」
「黙れ。我は七房に望みを叶えると言った。お前に口を出す権利はない」
「しかし、蒼玉に無理矢理婚姻を強いるのは友人として納得いきません」
無理矢理なんて誰が言いました?
彼と私は相思相愛です。それになぜあなたに納得してもらわねばならないのですか。
あと、誰が誰の友人ですって?
皇女様の言葉に段々と殺意が湧いてきました。
少し動けなくするくらいなら許されるでしょうか。
私がどうやって皇女様を打ち据えてやろうかと考えていたら、同僚の焔玉が帝に進言して話を進めてくれた。
帝の口から正式に褒美として私を彼に与える旨が発言された。
ああっ、本当に?
本当に彼のお嫁さんになれるんだ。
うれしくてフワフワした感覚に包まれて動けない私の手を引いて、焔玉が謁見の間を連れ出してくれた。
とりあえず、すぐにここを出立できるように荷造りしなくては。
この時はまさか皇女様が強硬手段にでたことがきっかけで国を揺るがす大事件に発展し、彼との結婚が遠のくことになるとは思ってもみませんでした。