呼び出されました
具体的にどうやって皇女を潰すかその場にいた全員で話し合っていると、焔玉が来たとの知らせがあった。
何で焔玉?
とりあえず部屋に通すように部下に伝える。
「忙しいところ失礼する。どこかの誰かが中央守護軍をこちらにへ派遣したようなのでな。その回収と詫びに来た」
詫びる気配ゼロの様子でこちらに頭を下げる焔玉を見て、慌てて頭を上げさせる。
「ここにいるヤツらで対処したから別にどうってことねぇよ。それより何でアンタここに来たんだ」
中央守護軍が許可なく派遣されたとの報告を聞いて、回収ついでに俺を呼んでほしいと帝に頼まれたって、来るの早くないか?
襲撃されたのってさっきだぞ。
「元々、帝は中央守護軍のアホさ、んんっ、弱体ぶりに懸念を抱いており、何かあってはいけないと監視するようにしていたんだよ。あそこの将軍からしてアホだからな」
勝手に中央守護軍が派遣されたから回収の来たのは分かった。けど、何で帝が一地方軍人を呼び出すのか分からない。蒼玉関係か?
「お前に話を聞きたいんだそうだ。私からも蒼玉からもお前の話はしているのだが、中々納得してくれなくてな」
それはそうだろう。何でも叶えるといって、国の守護者を望むような奴は信用ができないだろうよ。
「ところで、なぜ各方位守護軍の次期将軍候補がここに集まっている?謀反の相談でもしているのか」
国の守護者に謀反を疑われた三人は固まる。皇女を潰す計画を立てていたからな。あながち謀反とも言えない。
三人が答える前に、焔玉が固まるな冗談だと言った。
アンタ表情筋が死んでるから、冗談かどうかが分からないんだよ。
「特に何もなければ、コイツを借りていくぞ。あと、皇女を潰すならもう少し待て」
焔玉の最後の発言に、部屋にいた全員がギョッとした顔をしたが、焔玉がそれ以上何も言わないので、黙って俺たちを見送った。
「皇女を潰すとかアンタが言っていいのか?」
帝の元へ向かう道すがら聞いてみたが、焔玉はこちらをチラッと見ただけで何も言わなかった。
無表情が常の焔玉だから何を考えているのか分からないが、蒼玉が焔玉は大体何も考えていないから気にするなと言っていたので、黙ってついていく。
西方守護軍の駐屯地を出て城へ向かう。どんどん奥へと向かう焔玉。一介の軍人が帝の居住区に足を踏み入れていいもんかと思ったが、とりあえず何があってもいいように道を覚えていく。
「ここだ。一応伝えておくが、帝に失礼のないようにしろ。あとは、ここで見聞きしたことは誰にも言うな」
失礼します、と言って扉を開ける焔玉。いくら守護者である焔玉であっても、取次もなしに帝の部屋に入っていいのかと思わんでもなかったが、杞憂だったようだ。
部屋の中には東西南北各守護軍の将軍が帝の周りに立っていた。歴代でも最強と謳われている北方将軍が帝の後ろに立って俺を見据えている。
「呼び立ててすまなかったな、七房。こちらへ座ってくれ」
帝の声に従って正面の椅子に座る。そしてなぜか俺の隣に座った焔玉。
「単刀直入に言うぞ。蒼玉を与えるとは言ったが、そなたの元へ嫁がせるわけには」
「今は、でしょう。言葉を間違えないでください、帝」
帝が話しているのを焔玉が遮った。
いくら守護者だからって、帝の言葉を遮るのは不敬罪なのでは……。
いや、でも帝の周りの各将軍たちは特に何も言わないから大丈夫なのか?
俺が心の中で冷や汗を流していると、帝がこちらを見てすまないと笑いかけてくれた。
「確かに言葉が悪かった。七房、私は別に蒼玉をそなたの妻にすることに反対ではないのだよ。だが、今はダメだ。今しばらく宝玉の力が必要なのだ。だから宝玉の契約者を解放しないでほしい」
それはできない。蒼玉を妻にするのは宝玉からの解放も目的だから。