初デート
なろコン一次を奇跡的に通過したので、追加で記念SSアップ。
「だっさ!」
嬉し恥ずかし初デート、私は早めに待ち合わせ場所へと到着して待っていた。後から来て、そんな私を見た真央ちゃんの第一声がこれだった。
こう、胸の奥にぐさっ! と言葉が胸に突き刺さったのは言うまでもないだろう。
つらい。ひたすらにつらい。
私は、もともとファッション関係には疎い方だった。それを、妹の助言でかろうじて見えるレベルにまで持っていっていたのだ……女だった時には。
「パパに聞いてがんばったんだけど……これだと、ダメだったのね……」
しょぼん、と肩を落とす。
ただでさえ彼女――市原真央は、10人中10人が認めるだろう美少女だ。そんな彼女の横に並ぶだなんて、女だった時ですら恐れ多いというものだった。
「ぱぱ……パパ!? キモイ」
「う、もうちょっと優しくは、」
「しなーい。予定変更。映画は次の機会にして、行こう」
と、真央ちゃんが歩き出す。
次の機会……そう言われて嬉しかったのは、内緒だ。
「えっと、どこへ?」
「瑞樹さんは、黙って私に着いて来れば良いのよ」
「はい……」
てことで、プンスカしている真央ちゃんの後ろを付いて行くことになったらしい。
真央ちゃんに連れて行かれたのは、セレクトショップだった。
女だった時にすら敷居が高すぎて訪れたことのないジャンルの店だ。ハイセンス過ぎるのもあれだけど、何より根本的に値段が高級路線過ぎるのだ。
プチプラ大好き! な私にはきつい。
「ま、真央ちゃん? まさか、ここに入るだなんて言わないよね?」
「あははは。もちろん入るよ?」
「え゛え゛……」
「怖くないから」
そう言って真央ちゃんは、こともなげに私と手を繋ぐ。
硬直する私……。
「瑞樹さん? 立ち止まってないで……うわ、顔が真っ赤! かわいい~」
うっとりとした真央ちゃんの顔が近付いてきて、私はとっさに顔を逸らせて避けてしまった。
「瑞樹さん……?」
「あ、いや、その。ここは! 公道だし!」
恥ずかしいじゃないですか!
なし崩しだった初対面の時みたいにはいかないよ!
「まあ良いわ、覚悟してね?」
そう言って機嫌を損ねる真央ちゃんは、それでも天使みたいに可愛すぎて。
吸い寄せられるようにして、顔を近づけてしまった。
唇が離れてから、ようやく自分が何をしたのかを把握して慌てる。
「あの、えっと、」
「ふうん……」
濡れた唇を舐める真央ちゃんが怖い。
「気が変わったわ。今日は私の奢りね」
そう言った真央ちゃんは、やっぱりセレクトショップに入る様子で。
その後、店でお互いに着せ替えごっこをして楽しゅうございました。女の感性が残っていると、こういう時は良いのかも? なんて思ったのは内緒です。
しかも、比較的安めなお勧めをいくつか真央ちゃんのカードで買ってもらっちゃいました。万単位の金額をカード決済でさらっと支払えてしまう真央ちゃんの素性を知るのが怖いです……。
うん、私は決めたぞ。
がんばってバイトして、次は真央ちゃんの服を買ってあげるのだ!