その8の3 アルベキスガタ。
第一章『兵器少女』これにて完結!
なんとか体育館から抜け出す事に成功した啓太。
次に出てきた強制的選択肢を軽く無視し、帰ることにした。
Turn "KEITA"
「ひ、ひどい目にあった…」
しかも次の選択肢がなんだよこれ。
『教室に戻るために一番距離の短い女子更衣室の前を通ろう』
何かあった時の展開が見え見えなんだよ。俺を犯罪者にするつもりか?
「せぇ〜んぱいっ」
「むぉっ…とと」
背中に何かが衝突。
後ろを見ると背中に手をまわして、いわゆる休めの態勢をとっている陽美がいた。
「先輩っ一緒に帰るッス」
「強制なんだな」
「もちろんッス♪」
「はぁ…」
まったくこいつは…
仕方ないか。
「大体帰るつったって、お前研究所が家なんだろ?すぐそこじゃないか」
「そ〜いう時は内容の濃さが重要ッス!距離の短い分内容を濃くするッス!」
なんだその理論は。
「だから距離で計算するに…家の前に着いた頃に私とイヤンな関係になるのがノルマッス。もちろん、それ以上行って結婚までぶっ飛んで結構ッス」
「いや、待て。一日の帰宅でそこまで行った例が無い。お前の脳内で俺達はどこへ帰宅した」
「とりあえずここから北海道を徒歩で移動した感じッス」
「ひどいぞ。そりゃなんかドラマチックな状況はあるだろうさ。違う、もっと距離を縮めて考えるんだ」
「う〜、文句ばっかりッス。でもやっぱ魅力的ッス」
「馬鹿なことを言うな。鞄を取ってくるから待っていろ」
鞄を持って下駄箱まで行った時にはもうすでに靴を履いた陽美が待っていた。
「すまん、待ったか?」
「今来たところッス」
「…嘘をつけ」
「てへっ♪」
自分の頭を軽く叩く。
その動作を不覚にも可愛いと感じてしまったとは口が裂けても言えない。
「まったくお前は…ほら行くぞ」
「うぃッス」
そこからは非常に他愛の無い会話が続いた。
先生がどうとか、友達がどうとか。
こいつの明るさを見るたびに、俺はいつも笑ってしまう。
なぜだろうな。
「ふふ…あ、先輩」
「あ、もうか」
「そうッスね。先輩、また明日ッス♪」
「ああ」
あいつは今、とても楽しそうだ。あいつが俺をデパートに連れていった時みたいに。
やっぱりこれで、よかったんだ。
「…優華、姉さん。出てきなさい」
あちゃ〜と言いながら頭を掻く姉さんと、物凄い睨んでる優華。
ずっと尾行してたな…?
「…優華、殺気垂れ流しじゃあ尾行できないぞ」
「…」
「…姉さん、なんとかなら」
「無理☆」
…。
「はぁ…わかったよ。ごめんな優華」
「ひゃっ!に、兄さ…」
「お?頭撫でるのはタブーか?」
「…むぅ〜…」
「ふふ、優華ちゃん。なんか殺気の代わりに幸せオーラが流れてるわよ?」
「ね、姉さん…」
「よくわからないがやめたほうがいいのか?」
「あ、その…やめたら…怒ります…」
「承知した」
「…ふぁ…」
「あらあら、優華ちゃんすごい幸せそうね」
「…たまにはこうやって撫でるのはいいな」
「じ、じゃあ…その」
「啓太、寝る前に優華ちゃんを撫でてやるのは?」
「日常的にやるのか?」
「決定!」
「強制か!?」
「嬉しい…です…」
「む…?あ、いや…なら、俺は別にかまわないのだが…」
「それじゃあ私も撫でてもらおうかな?」
「背的に無理だ」
「じゃあ代わりに私が撫でようか?」
「却下だ」
「ひど〜い。私も撫でるか撫でられるかしたい〜」
「…ぷっ…」
「ふふ…」
「ちょ、ちょっとぉ、二人ともなに笑ってるのよぉ」
「だ…だって…」
「す、すまない…しかし…ガキすぎるだろ…」
「またもやひど〜い!もう怒ったぞ〜!」
「優華!ガキの姉さんが怒ったぞ」
「わ、逃げましょう兄さん」
「待て〜!」
…こんな日がいつまでも続けばいいなって思う。
第一章 兵器少女 完