5 ラビとの別れ
ラビと共同でウサギを倒しては食べるという日々。
何故かウサギは俺に対して警戒心なく近づいてくるので、それを殺して食べるという行為に結構胸が痛むんだが、弱肉強食の世界だ。
そんな事は言ってられない。
一応川があるんだから魚を捕まえれないかと思ったんだが、道具もなしに魚を捕まえるってのが俺には無理そうだったので諦めた。
戦闘後は俺とラビのステータスを確認するのが習慣だったのだが、
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堂島雅史:レベル2
HP:248/260
MP:168/172
種族:人間
職業:ビーストテイマー
状態:平常
スキル
魔獣使役:レベル1
魔獣鑑定
キツネの精霊の加護
使役魔獣
ラビ:レベル1
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ラビ:レベル2
HP:46/66
MP:22/22
種族:プチシロウサギ
職業:なし
状態:平常
スキル
なし
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いつのまにか、俺もラビもレベルアップしてレベル2になっていたようだ。
戦闘を繰り返すことで経験値がはいってレベルが上がるってことで間違いなさそうだ。
レベルアップした時くらい、テッテレーって感じで効果音とか欲しいよな。
いつレベルアップしたか気づかないぞ、これじゃ。
ラビの方はHPMPが増えただけのようだが、俺の方はそれ以外にスキルが増えていた。
「魔獣鑑定」ってスキルだ。
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魔獣鑑定
使役できる可能性のある魔獣の状態を鑑定することができる。
対象の魔獣を指定して『鑑定』と念ずることで状態がわかる。
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敵のステータスが見れるのかな? 試しに近くにいたウサギを鑑定してみた。
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プチクロウサギ:レベル1
HP:60/60
状態:平常
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使役魔獣のステータスと比べたら、ほんの少ししか状態がわからないな。
それでも、使役可能かどうかのHPの数値がわかるのも大きいし、戦ってる最中に残りHPがわかるのも大きそうだ。
レベルが高かったり、HPの多い魔獣は強い魔獣が多いだろうから、敵を選ぶのにも役立つだろうな。
でも正直言うと、もっと戦闘に直接役立つようなスキルが欲しかったものだ。
川沿いに下流に進んできたが川は滝となって流れ落ちており、崖は急でとてもこのまま進めそうにない。
ペットボトルを水でマンタンにして俺は川を離れて再び森の中へ入っていった。
森は最初にいたあたりよりも鬱蒼と広がっている。やや生態系も変わっていそうな気がするから要注意だな。
嫌な予感がするが引き返すこともできない。俺は注意深く足を進めた。
悪い予感ほどよく当たるものだ。大きなトラのような動物に出くわした。すぐに「魔獣鑑定」をしてみたところ、
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イービルタイガー:レベル28
HP:829/829
状態:平常
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これはあかんやつだ。かかわりあいになったらどうしようもないやつだ。
俺は一目散に逃げ出した。
イービルタイガーが俺たちを見つけたようで追ってくる。そしてイービルタイガーはラビに目をつけたようだ。
イービルタイガーがラビに襲いかかっている。
「キューイ!」
ラビの断末魔が聞こえる。
俺はラビを見捨ててそのまま逃げた。
ただひたすら逃げ続けた。
どれだけ逃げたのかよく覚えてないが、もう俺を追ってくるものは何もいない。
気づくと先程の川のところまで戻ってきていたようだ。
俺はステータスを確認してみた。
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堂島雅史:レベル2
HP:260/260
MP:172/172
種族:人間
職業:ビーストテイマー
状態:平常
スキル
魔獣使役:レベル1
魔獣鑑定
キツネの精霊の加護
使役魔獣
なし
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使役魔獣は「なし」になっていた。
ラビは死んでしまったようだ……
俺は泣いた、どうしようもなく泣いた。
俺に何ができたと言うんだ、あまりにもの不合理さ。これが弱肉強食というやつだろう。
ラビがやられなければ俺がやられていたはずだ。
これをラッキーだと喜べばいいのか?
生きていたことを天に感謝すればいいのか?
俺が生き残れたのは多分、「キツネの精霊の加護」のおかげなんだろう。
あのイービルタイガーから見れば俺もラビも同じような弱者だろう。
どちらかといえば俺のほうが食いごたえがありそうなくらいだ。
それでも俺には「キツネの精霊の加護」があったから、捕獲対象として俺よりラビを優先させたんだろうな。
これからも同じケースを考えれば、ラビのような小動物と一緒でも俺が生き延びれる可能性がわずかながらに増すかもしれない。
でも、俺にはムリだ。生贄のスケープゴートのためだけに使役するなんて。
短い間でも心が通ってしまったものを見殺しにすれば、今みたいに俺の心がどんどん削られていくに違いない。
俺はもうああいうか弱い動物を仲間にすることはできないだろう。
共に強敵と戦う仲間が必要だ。
俺はどうしたらいいんだ?
あまりにも無力だ……